夜歩き

いれものに水が溜まるように、あたまに悲しいことがたまってきたので、仲良しに愚痴り過ぎる前に、それを振り払おうと、夜歩きに出かけました。
前はそういう気分の時、ジョギングをしていたのですが、アスファルトを走り続けると膝をいためる、とジムフェチの美容師さんに言われ、
そういえば自分が一番長くやってきたスポーツも「滑る」フィギュアスケートやスキーなのだから、「地面を蹴って、走る」なんて慣れないことはやめた方がいいと結論しました。
で、歩きです。
そう危険でもないギリギリの時間帯のご近所夜歩きは、イヌ散歩夫婦や、ジョギング人やらで、ほどよくひと気があります。
でも夜なので、ひと気が途切れた小道や坂に差しかかったときに、歩きながらちょっと涙したりしても、誰にも見つからないから、便利。

思い詰めたら、外に出てからだを動かして、外の空気に重い気分を吹き飛ばしてもらうのが、けっこう効きます。
もちろん、悲しいという気持ちの澱は、それですっきり飛んでったりするものでもないのだけど、量を少なくはしてくれる。
見も知らぬ他人の姿を目にすると、自分の外の世界とのバランスが回復される気がします。
たまには、興味深いものを見たりもして・・・。

例えば。
さっき、小道を歩いていたら、前方の、ひっそりと住宅街の中にあるお店から、食事を終えた男女二人連れが出てきました。
そして、私に背を向けた方向へ歩き出そうとし・・・
たところへ、
しんと静かな道に勇気づけられたか、道端でいきなり、連れの女性の肩をがばと抱きかかえる男。
「なぁ！」
って、掛け声？が気合を感じさせるも、女性、びっくりして
「やっ！」
と身をすくめてよじらせる。
うわお。
と思い、ちょっと迷ったけど、構わず彼らをさっさと追い抜くと、後ろで慌てふためく気配。
――おじさんが、狙ってた若い女子の部下を連れて、ちょっと素敵なお店に来た。で、酔っ払った勢いを借りて・・・！
って感じかしら。
・・・なんともいいようがないけど、こんなシーンもなまで見るのは新鮮だわ・・・。
人生って、ドラマ。
つらいのは、常に、自分だけじゃない。
おじさんも、断られて悲しいだろうし！
なんて考えながら、夜歩き続行。

そんなふうに、気晴らし(?)になることもちょっとはあって、プラス歩き疲れで、今夜はよく眠れそうです。。