アモルの明窓浄几

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住まいと健康「化学物質過敏症について」

2010年09月21日 | すまいのこと
前回お話した、日本では一般的に「シックハウス症候群」と呼ばれていますが、「シックビルディング症候群」と同じ事です。しかし、「化学物質過敏症」は、「シックハウス症候群」とは少し概念が異なります。

「化学物質過敏症」については、有名なカレン(エール大学内科教授)の定義があります。
→「かなり大量の化学物質に接触した後、又は微量な化学物質に長期に接触した後で、非常に微量な化学物質に再接触した場合に出てくる不愉快な症状」

図式化すると
健康→化学物質に大量(又は微量ではあるが長期)に接触→過敏性の獲得→化学物質(非常に微量)に再接触→過敏反応(発症)
これに対し「シックハウス症候群」は、
健康→建物の中で化学物質に接触→過敏反応(発症)→建物から離れる→健康(過敏反応が消える)

日本における化学物質過敏症の原因の59%は、シックハウス症候群によるという調査結果もあります。この様に症状と原因が同じ事から混同されやすいのです。

決定的な違いは、「シックハウス症候群」は汚染されている建物の中に居る時にだけ発症しますが、「化学物質過敏症」は屋内外問わず、空気が汚染されている所では、決まって症状が出る事です。それも、過敏症の獲得の原因になった化学物資以外の化学物質であっても、又ほんの微量の接触であっても発症するのです。
この様に「化学物質過敏症」は、通常安全閾値(いきち)(ここまでなら安全とする最小量)の1/100以下と云う微量でも反応しますから、厚生省の室内濃度指針値以下なら安全等とは云えないのです。

又、個々人の化学物質に対する適応は、大変大きな個人差があると云われています。同じ汚染された環境にいても発症する人としない人がいるのです。同じ家族であるのに、子供は発症し、親は発症しないと云う様に。
従来型の中毒は、化学物質が増えるとほぼ100%の人が発症するのとは異なります。

更に「化学物質過敏症」は、ダニ、カビ等の生物学的負荷や電磁波、低周波音等の物理的負荷及び精神的な負荷等の総負荷量がその人の耐える限界を超えると発症すると云われています。
特に、電磁波は社会問題化してきています。電磁波は細胞内のカルシウムを流出させ細胞の働きを乱すと云われています。「シックハウス症候群」の時のように法的整備が後手にならない事が大切です。この電磁波については、今後話題に取り上げる予定でいます。

追伸:一冊の書籍を紹介します。
   「化学物質過敏症」-ここまできた診断・治療・予防法- (かもがわ出版)
    著者:石川 哲(当時 北里研究所病院臨床環境医学センター長)
宮田 幹夫(当時 北里研究所病院臨床環境医学センター部長)

シックハウスが建築基準法で規制されたのが2003年ですが、それ以前に既に社会問題化していました。私達建築士も法制定以前から関心を持ち、勉強会などに参加していましたが、「シックハウス症候群」や「化学物質過敏症」等と云った医学系の言葉に戸惑いを感じていた頃に薦められたのがこの書籍「化学物質過敏症」です。
当時、北里大学は日本における診断、治療の最先端を行っていると云われていました。内容は、一般人を対象に書かれており、症例も掲載されていて平易でわかりやすい構成になっています。
今回このブログを書くに当たり、この書籍からも引用させて頂いています。
尚、私が購入したのは2000年ですが、裏表紙を見ると初版(1999/11)とあるので、略11年前になります。改訂版が出ているかどうかは不明ですが、お勧めの一冊です。


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