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耐震診断と耐震補強について-14

2009年03月20日 | すまいのこと
第14回「5. リフォームと耐震補強の関連法 5-2.建築基準法との関連」

今回は、建築基準法ではどのように既存不適格建築物の耐震改修化を取り扱っているのかを見てみます。
下記の「図表-21」をご覧下さい。


                ↑ 「図表-21」:建築基準法との関連

阪神淡路大震災の1995年に施行された耐震改修促進法と同じく、建築基準法においても「一定の基準」(註1)を満たせば、現行法に全て適合させる必要がなくなりました。
これは、2000年の法改正(第11回目の耐震補強のポイント参照)と同等の耐力を木造の既存不適格建築物にも適合させる事によって、引き続き既存不適格建築物として使用可能としたわけです。

註1:「一定の基準」とは、耐震改修促進法の一定の基準とは異なり、建築基準法施行令第137条の2(註2及び「図表-22」)及び国土交通省告示第566号(註3)によります。

次に、下記の「図表-22」をご覧下さい。
「木造(4号建築物)の既存不適格建築物に対する増改築に関する取扱い」の図表です。


            ↑ 「図表-22」:新潟市建築部建築行政課の資料より

同上の「図表-22」を簡単に説明しますと、増改築部分の面積によって、三つに区分されています。
(イ) は、増改築する部分の面積(B)が既存建築物の基準時(※)の面積(A)の50%を超える(B>A/2)場合は、既存部分と増改築部分共に現行法が適用されます。
(ロ) は、B≦A/2の場合で、既存建築物部分を②、③、④の何れかの構造規定に適合させる事により、増改築部分のみ現行法を適用されます。
(ハ) は、B≦A/20且つB≦50㎡(約15坪)の場合で、既存建築物部分の構造耐力が現状以上に危険にならない事を確認できれば、増改築部分のみ現行法を適用します。

※尚、基準時とは、建築物が法改正により不適格となった時期を云います。

例えば、延べ床面積100㎡(基準時)の住宅に納戸部屋6帖(約9.9㎡)を増築し、既存部分を耐震改修する場合は、「図表-22」の(ロ)の③に該当します。既存建物部分と増築部分とは構造体をエキスパンションジョイント等で分離すれば、増築部分のみ現行法を適用させればよいのです。

前回と今回の2回で、増改築の伴うリフォームと耐震補強との関連法の概略を説明しましたが、おわかり頂けたでしょうか。
文末の註2と註3に関連条文を掲載しますが、このあたりは専門家にとっても解り図らい部分なのです。
リフォームを計画する際に、これらの法律に抵触しないか注意が必要です。

先の例のように、増築部分が10㎡以下の場合は、建築確認申請(※)が不要な場合があるので、つい見逃しがちになります。又、壁や柱及び梁等の主要構造部を過半以上改造すると、大規模の修繕若しくは模様替えに該当し、現行法に抵触します。
大規模な改造を伴うリフォームを計画する場合は、専門家と充分相談される事をお勧めします。

※下記「図表-23」に「建築確認申請が必要な建築物」を掲示します。


              ↑ 「図表-23」:建築確認申請が必要な建築物

通常、住宅地内にある木造2階戸建て住宅の場合は、上記「図表-23」の④に該当します。
従って、新築・増築・改築・移転以外の大規模の修繕や模様替えは、確認申請の対象にはなっていません。又、下段の注意書きにあるように、防火・準防火地域外においては、延べ床面積が10㎡以下のものは確認申請が不要なのです。
この様な事から、リフォーム工事は、確認申請が不要なケースが殆どなのです。
しかし、確認申請の要否に関わらず、現行法に抵触する場合は、此れまでに述べてきたような処置が必要なのです。

次回は、第6章「写真(?)でみる事例」に移る予定でいましたが、写真による事例は、別の機会にしたいと思います。
このシリーズが予想以上に永くなった事と、画像の保存容量が増え過ぎる事が主な理由です。
従って、次回は最終章になります。

【注意事項】
註2:「建築基準法施行令第137条の2」とは。
→第8章 既存の建築物に対する制限の緩和等
(構造耐力関係)
第137条の2 法第3条第2項の規定により法第20条の規定の適用を受けない建築物(同条第1号に掲げる建築物及び法第86条の7第2項の規定により法第20条の規定の適用を受けない部分を除く。第137条の12第1項において同じ。)について法第86条の7第1項の規定により政令で定める範囲は、増築及び改築については、次の各号のいずれかに該当することとする。
1.増築又は改築に係る部分の床面積の合計が基準時における延べ面積の2分の1を超えず、かつ、増築又は改築後の建築物の構造方法が次のいずれかに該当するものであること。
イ 耐久性等関係規定に適合し、かつ、自重、積載荷重、積雪荷重、風圧、土圧及び水圧並びに地震その他の震動及び衝撃による当該建築物の倒壊及び崩落並びに屋根ふき材、外装材及び屋外に面する帳壁の脱落のおそれがないものとして国土交通大臣が定める基準に適合する構造方法
ロ 第3章第1節から第7節の2まで(第36条及び第38条第2項から第4項までを除く。)の規定に適合し、かつ、その基礎の補強について国土交通大臣が定める基準に適合する構造方法(法第20条第4号に掲げる建築物である場合に限る。)
2.増築又は改築に係る部分の床面積の合計が基準時における延べ面積の20分の1(50平方メートルを超える場合にあっては、50平方メートル)を超えず、かつ、増築又は改築後の建築物の構造方法が次のいずれにも適合するものであること。
イ 増築又は改築に係る部分が第3章の規定及び法第40条の規定に基づく条例の構造耐力に関する制限を定めた規定に適合すること。
ロ 増築又は改築に係る部分以外の部分の構造耐力上の危険性が増大しないこと。
以上

註3:「国土交通省告示第566号」(平成17年6月1日施行) とは。
建築物の倒壊及び崩落並びに屋根ふき材、外装材及び屋外に面する帳壁の脱落のおそれがない建築物の構造方法に関する基準並びに建築物の基礎の補強に関する基準を定める件

建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第137条の2第一号イの規定に基づき、建築物の倒壊及び崩落並びに屋根ふき材、外装材及び屋外に面する帳壁の脱落のおそれがない建築物の構造方法に関する基準を第1に、並びに同号ロの規定に基づき、建築物の基礎の補強に関する基準を第2に定める。ただし、国土交通大臣がこの基準の一部又は全部と同等以上の効力を有すると認める基準によって建築物の増築又は改築を行う場合においては、当該基準によることができる。

第1 建築物の倒壊及び崩落並びに屋根ふき材、外装材及び屋外に面する帳壁(以下「屋根ふき材等」という。)の脱落のおそれがない建築物の構造方法に関する基準は、次の各号に定めるところによる。

一 建築物の構造耐力上主要な部分については、次のイからハまでに定めるところによる。
イ 増築又は改築に係る部分が建築基準法施行令(以下「令」という。)第3章(第8節を除く。)の規定及び建築基準法(昭和25年法律第201号。以下「法」という。)第40条の規定に基づく条例の構造耐力に関する制限を定めた規定に適合すること。
ロ 地震に対して、建築物全体(令第137条の14第一号に規定する部分(以下この号において「独立部分」という。)であって、増築又は改築をする部分以外の独立部分を除く。ハにおいて同じ。)が令第3章第8節第1款の2に規定する許容応力度等計算(地震に係る部分に限る。)によって構造耐力上安全であることを確かめること。ただし、新たにエキスパンションジョイントその他の相互に応力を伝えない構造方法を設けることにより建築物を2以上の独立部分に分ける場合にあっては、増築又は改築をする独立部分以外の独立部分について平成7年建設省告示第2090号に定める基準によって地震に対して安全な構造であることを確かめることができるものとする。
ハ 地震時を除き、令第82条第一号から第三号まで(地震に係る部分を除く。)に定めるところによる構造計算によって建築物全体が構造耐力上安全であることを確かめること。ただし、木造の建築物のうち法第6条第1項第二号に掲げる建築物以外の建築物であって、令第46条第4項(表二に係る部分を除く。)の規定に適合するものについては、この限りでない。

二 建築設備については、次のイからハまでに定めるところによる。
イ 屋上から突出する水槽、煙突その他これらに類するものは、令第129条の2の4各項の規定に適合すること。
ロ 建築物に設ける給水、排水その他の配管設備は、令第129条の2の5第1項第二号及び第三号の規定に適合すること。
ハ 建築物に設ける昇降機は、令第129条の4(令第129条の12第2項において準用する場合を含む。)、令第129条の6第一号、令第129条の7第四号及び令第129条の8第1項の規定に適合すること。

三 屋根ふき材等については、昭和46年建設省告示第109号に定める基準に適合すること。

第2 建築物の基礎の補強に関する基準は、次の各号に定めるところによる。

一 既存の基礎がべた基礎又は布基礎であること。

二 地盤の長期に生ずる力に対する許容応力度(改良された地盤にあっては、改良後の許容応力度とする。)が、既存の基礎がべた基礎である場合にあっては1平方メートルにつき20キロニュートン以上であり、既存の基礎が布基礎である場合にあっては1平方メートルにつき30キロニュートン以上であること。

三 建築物の基礎の補強の方法は、次のイからニまでのいずれにも適合するものとする。
イ 次に掲げる基準に適合する鉄筋コンクリートを打設することにより補強すること。
(1) 打設する鉄筋コンクリート(以下この号において「打設部分」という。)の立上り部分の高さは、地上部分で30センチメートル以上とすること。
(2) 打設部分の立上り部分の厚さは、12センチメートル以上とすること。
(3) 打設部分の底盤の厚さは、べた基礎の補強の場合にあっては12センチメートル以上とし、布基礎の補強の場合にあっては15センチメートル以上とすること。
ロ 打設部分は、立上り部分の主筋として径12ミリメートル以上の異形鉄筋を、立上り部分の上端及び立上り部分の下部の底盤にそれぞれ1本以上配置し、かつ、補強筋と緊結したものとすること。
ハ 打設部分は、立上り部分の補強筋として径9ミリメートル以上の鉄筋を30センチメートル以下の間隔で縦に配置したものとすること。
ニ 打設部分は、その立上り部分の上部及び下部にそれぞれ60センチメートル以下の間隔でアンカーを設け、かつ、当該アンカーの打設部分及び既存の基礎に対する定着長さをそれぞれ6センチメートル以上としたもの又はこれと同等以上の効力を有する措置を講じたものとすること。

四 構造耐力上主要な部分である柱で最下階の部分に使用するものの下部、土台及び基礎を地盤の沈下又は変形に対して構造耐力上安全なものとすること。

2 前項に規定する打設する鉄筋コンクリートについては、令第72条から令第76条までの規定を準用する。
以上


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