アモルの明窓浄几

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耐震診断と耐震補強について-16

2009年03月22日 | すまいのこと

● 片山善博 元鳥取県知事の発言

 2001年1月14日の東大本郷における当時の片山善博鳥取県知事の発言(抜粋)を掲載します。
→ http://www.jca.apc.org/peacenet/miyake/katayama.html からの抜粋です。

片山善博氏はこの講演において、「私は今回の地震があった時に、何が必要かと言ったら中央官庁がきめたルールだとか、仕組みだとかではなく、現場で何が必要とされていて、どうやれば地域が守れるかっていうものをより優先させるべきだろうと思いました。」と述べています。
そして、本当に自助努力で自主再建をしようとする人には、ちょっと後押しするような仕組みが必要なのだと。
更に、「住宅再建支援に大きな法的な壁があるというのは、一つの幻というか実は大きな嘘だったのです。」したがって、「法律に違反したり憲法に違反したりということはありませんので問題ないと思います。」と言い切っています。


 居住福祉学会設立総会記念シンポジウムにおける片山善博鳥取県知事の発言

昨年10月6日の午後1時半に私は県庁の知事室にいたのですが、本当に大きな揺れがありまして県庁舎が倒れてしまうんではないかと心配したほどでした。
しかし、いろんな偶然が重なって亡くなった方が一人も出ませんでした。これは私たちが災害復興に取り組むにあたってありがたいことでした。

既成のルールより優先した現場のニーズ
 もう一つは住宅問題については、さっき言いましたように公的な部分もかなりあるんです。仮設住宅は国が支援してくれます。仮設住宅をつくるのに一世帯あたり大体300万円かかります。その他に土地のリース代だとか解体費用を合わせる大体全部で400万円くらいかかるんです。
壊すものについては、こういう手厚い制度があるんです。仮設住宅は壊さなければならないし、災害にあった人の敷地に建ててはいけないんです。よそに建てなければいけないんです。
しかし本当に自助努力で自主再建をしようとする人には、ちょっと後押しするような仕組みはないんですね。それは個人の資産形成に対して公的資金、税金を投じてはいけないという、財政上のルールがあるからです。
確かに私も財政やっていましたからルールはわかるんです。でも現場でルールを適用した場合に、ルールは守れても地域は一切守れない。これまた皮肉な結果になってしまう。
私は今回の地震があった時に、何が必要かと言ったら中央官庁がきめたルールだとか、仕組みだとかではなく、現場で何が必要とされていて、どうやれば地域が守れるかっていうものをより優先させるべきだろうと思いました。
そこでその地域で住宅を再建しようという人に、300万円の支給をしました。300万円というのはほんとにわずかでありますけれど、その結果ほとんど人口は流失しない見通しです。一部近くの都市に身寄りを頼って出て行かれる方は当然出ましたが、大半の方はそこで再建をするということになりました。
300万円で家が建つのかと言いますと、田舎のことですから土地代はいりませんし、高齢者の独居とか二人暮らしとかですから、豪華な家でなければ1000万円未満で家はできるはずです。300万を行政が出してくれるので、それを元手にして息子にそれになんぼか追加してくれないかって言うのは言いやすいようです。おそらくこれから再建が急ピッチで進むだろうと私は思っております。
実は被害は中山間地だけではなく、米子市の中の非常にいい住宅地でも液状化が起こりまして、壊滅的になりました。そこは9割以上の家が傾いてしまいました。
島根県との境に中海という海がありますが、そこに面したところで夕日のきれいなウォーターフロントの住宅地だったんですが、傾いているんですね。このままだと住めない、ほとんどゴーストタウンになってしまう。そういうものですから住宅再建のための修繕の公的補助を出すということにしました。
それだけでは足りないので、液状化対策という別枠の公的補助を出すことにしました。そうしましたらみんなで協力をして自治会が再建をしようということでまとまりまして、ついに合同で一括して業者と契約をして直していくことになりました。
1戸あたり大体500万円くらいかかるんです。それで自治会の団結も強まり、今までは疎遠でしたがこれからは年1、2回は必ず防災訓練しようと、その時から炊き出しの訓練なんかやっていました。災い転じて福にしようということですね。
そこの公的補助は全部で4億円位かかりました。その団地はその4億円で全部直るんです。安いもんだと思いました。貧乏県ですから財政は大変です。兵庫や神戸に比べたら鳥取県は本当に台所事情はもう悲惨なもんであります。
だけれども財政というのは乏しいなら乏しいなりに優先順をつけて、どっかをやめてこっちにまわすということはできるんですね。災害があったらそのことは特に考えなければならないし、復興のために多少財政が疲弊するのはしょうがないと思います。
地域を守るために多少財政が疲弊しても、それは財政の役割の一つだと思うんです。幸い私は去年の4月にダム計画を一つやめたんです。あんまり大きな声で言わなかったんですけれど240億円ほどのダムをやめました。そのダム計画は捏造された需要に基づいて作られたものだったんです。
全部それを逐一点検していったら、そのダムが必要ないとわかりました。治水の問題ももっと安く対応できることがわかったもんですから、計画を中止しました。建設費は240億円で、それは半分くらい国費を想定していて県の持ち出しの金は約100億円でした。その100億円くらいは確保ができているということが、私の中には一つの安心材料としてあったもんですから、ある程度のことを今回の地震対策で従来にないことをやっても許されるんではないかと、罰はあたらないんじゃないかというのがありました。

住宅再建支援に法的な壁はなかった
 
そうは言いましても国の方にやはり事前に言いに行きました。私も国から白い目で見られて、総スカン食ったらやってられませんから行きました。自治省とか建設省とか回りましたら拍手をもらいました。大臣クラスの人はみんな同情的でした。
私がさっき申しあげたようなことを説明して背に腹は代えられないから、国は反対かもしれないけれどやらざるをえませんよという話をしたら、当時の自治大臣はうーんと目をつぶって聞いておられて、最後には「まあおやりなさい。それはもう後押ししますから」と言ってくれました。
逆に役所の役人は絶対ダメでした。「そんなことやることはない」とかですね、「越権行為だ」とか、「憲法違反だ」とか言う人もいました。憲法何条に違反しているんですかと聞いたら、何の返答もなかった。具体的に突き詰めていって、「じゃあ財政上のルールって何ですか?」「誰かそれを破った時に何か罰則ありますか?」と言うと、あるわけじゃないんです。一つのものの考え方を整理しただけなんですね。それを現場に適用してあたらなかったら、私は整理し直せばいいと思うわけです。
我が国は法治国家ですから、法律に違反したら何もできません。けれども住宅再建を支援したら、何法の何条に違反するのか、憲法第何条に違反するんですかということを実定法上突き詰めていったら、実は何にも違反しないということがわかりました。住宅再建支援に大きな法的な壁があるというのは、一つの幻というか実は大きな嘘だったのです。したがって住宅再建支援をして文句を言われたり、はた迷惑だと言われたりしましたけれど、法律に違反したり憲法に違反したりということはありませんので問題ないと思います。



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