アモルの明窓浄几

芦屋・仕舞屋・三輪宝…生噛りの話題を机上で整理します。

あれからの一年を迎えて

2012年03月12日 | 万帳報
東日本大震災から一年が経ちました。
マスコミは、こぞって「1.17」同様にこの「特集」で埋め尽くされています。

七日の朝日新聞によると、震災関連死者が1,365人に上り、その内60歳以上が95%を占めたと云います。「震災を生き延びても、その後の状況が高齢者には厳しかったことがうかがえる」と記事は結んでいます。阪神淡路大震災の時と同じですが、弱い立場の者が、最もしわ寄せを受けるのです。

九日の朝日新聞のインタビュー『震災後の私たち』で、劇作家山崎正和氏は、次のように答えています。
「…外国人に対しては、排外どころか自発的に助けようという運動が神戸で起きました。市民がラジオ局を立ち上げ、被災した外国人のため外国語で放送したのも一例です」、「そして今度の東日本大震災です。外国人については、神戸どころではない。被災した会社の経営者たちが研修に来ていた中国人労働者たちを助けようと奔走した…こういう話がたくさんあります」と云う。
この手の話は、マスコミを通じて私達も記憶に新しい事実です。

山崎正和氏は、さらに「国内がすでに国際化し、人々が偏狭なナショナリズムを脱したことがはっきりしました」と断言する。
しかし、それは事の一面のみを見ているのではないでしょうか。震災は、私達の社会や考え方を如何変えたのか。私達は大震災を経験し、本当にマイノリティに共感できたのでしょうか。

実業家であり評論家の辛淑玉さんは、「強い者しか生きていけない社会は、災害時にはそれがよりあからさまに現れる」と云っています。「週刊金曜日」(3/2)
現地を取材した彼女によると、被災地では外国人に対する差別も拡大しているそうです。
「震災直後には流言蜚語が飛びかい、『中国人が自衛隊員を殺している』、『朝鮮人が警察官を殺している』などのデマが、避難所にいる外国籍住民の耳にも届いた」と云います。彼らは、関東大震災(1923年)時における朝鮮人大量虐殺事件を想像したに違いありません。更に、「ソフトバンクの孫正義氏が個人資産100億円を寄付したというニュースを聞いて、在日二世の先輩たちは『孫正義は保険をかけてくれた』と口にした。在日コリアンの命の保険だ」と云うのです。

在日の立場から見ると、同じ震災であってもこれだけの視点のずれがあるのです。
いや、在日だからではなく、彼女らだからこそマイノリティの現実を直視し、弱者に寄り添えるのでしょう。
私は、関東大震災から一世紀に近い過去の亡霊が、交通や通信の発展した今日においても甦る現象に、条件さえ整えば簡単に暴走する人間の弱さを感じます。
又、企業人としての孫正義氏は好きではありませんが、一個人としての孫正義氏に対しては、破格の個人献金は売名行為と片づけられるものではなく、出生の差別に対し、通名ではなく本名で会社を興した気概に通じるものだと感じました。

最後に、「未曾有の災害が起こると、マスコミは、マジョリティのための美談を探す」、「真の復興とは、殺さない、殺されない社会を作ることだ。……数の力がそのまま民主主義だと錯覚している人々に未来を預けることなどできない」と辛淑玉さんは云う。

少数者の立場を保障してこそ、真の民主主義社会と云えるのではないでしょうか。
阪神淡路大震災当時、避難所生活を余儀なくされた私にとっては「3.11」を迎えて、改めて17年を経過した「1.17」もまだ終わっていない事を申し上げたい。

追伸:長い間、私の勝手な事情で休眠状態が続いていましたが、今日を機会に再開します。
   但し、間引き運転をご承知の上、今後共宜しくお付き合いください。



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