アモルの明窓浄几

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住まいと健康「改めてシックハウス症候群とは」

2010年09月20日 | すまいのこと

先月、新築された議員会館で、「シックハウス症候群」の被害を複数の議員が訴えたと云うニュースが流れました。
これほどの建物なので、化学物質含有濃度を測定チェックしていないとは思われません。
この件に対し政府は、厚生省の室内濃度指針値以下の濃度であると述べています。
では、どこに原因があったのでしょうか。今後の調査を待つしかないのですが、「シックハウス症候群」とは何か、改めて整理してみます。

「シックハウス症候群」を現象面から捉えると、建築物(室内)へ入ると、気分が悪くなり、頭痛やのどが痛くなったり、咳が出るなどの体調の変調が直ぐにでるのですが、その建物(室内)から外へ出る(離れる)と、入った時の変調(症状)が完全に消えて、元の体調に戻る状態を云います。
これを別の視点(原因)から定義すると、
① 化学物質(有機化合物)の室内汚染によって起こる全ての健康への影響
② ダニ、カビなどのアレルゲンとなるものによるアレルギーへの影響
と、まとめる事ができるでしょう。

今回の議員会館は、新築なのでダニ、カビの影響は考えにくいと思われます。
すると、「シックハウス症候群」による被害が事実とすると、化学物質による室内環境汚染と云う事になります。化学物質含有濃度が室内濃度指針値以下であっても人によって(この点は大切)は発症すると云うことになります。

では、私達が新しく家を建てたり、今の住まいをリフォームする場合に気をつけなければいけない事は何でしょうか。
新築やリフォームをする場合には、設計士や工務店又は、リフォーム業者へ依頼されると思いますが、「シックハウスについては、建築基準法で基準が定められており、ご心配いりません」との返事が想定されます。本当に(安全性の)心配はないのでしょうか。
実は、概ね四つの問題点があります。

1. 建築基準法で規制されている化学物質は、次の二物質のみである事。
(1)クロルピリホス:クロルピリホスを添加した建材等の原則使用禁止。
(2)ホルムアルデヒド:ホルムアルデヒドを発散する建材を発散速度に応じて四つに
  区分し、第1種は使用禁止。第2、3種は使用面積に制限があります。
  四つ目は規制対象外で発散速度が0.005mg/㎡h以下の建材や材料が該当します。
  建材などにF☆☆☆☆(フォースター)マークのあるのがこれに該当します。
  又、石材や木材のムク板などの自然材料も規制対象外です。
厚生省が室内濃度指針値を指定しているのは、揮発性有機化合物(VOC)13種類の物質と総揮発性有機化合物量(TVOC)ですが、建築基準法で規制されているのは上記の2種類の物質のみである事が問題と云えるでしょう。

2. 化学物質の含有量がゼロ「0」でない事。
上記でお解かりのように、F☆☆☆☆であっても化学物質は含まれています。いまだに「F☆☆☆☆=安全」と思っている建築業者がいるようですので、注意したいところです。私は健常者にとって影響が少ないといった程度に理解しています。

3. 建築基準法の規制は、室内のみに限っている事。
「居室を有する建築物にあっては、…石綿等以外の物質でその居室内において衛生上の支障を生ずる恐れがあるものとして政令で定める物質の区分に応じ…」(建築基準法第28条の2第1項3号)とあります。
石綿等以外の物質は、室内(屋内)のみが規制の対象部分であると云う事です。しかし、門塀や屋根、外壁材等に含まれる物質も風向き等により、窓や通気口を通じて屋内へ入ってきます。仕様を決める際に配慮しておく必要があります。
又、内装材においては、床、壁及び天井の面的な部分が対象であり、巾木、廻縁、窓枠、建具枠等の造作部分及び部分的に用いる塗料、接着剤等は対象外になっています。

4. シックハウス対策には、室内換気が大切。
建築基準法では、内装材等の規制をクリアしていても、家具類等からの化学物質の発散が考えられるため、24時間換気設備の設置を義務付けしています。
問題なのは、建築確認申請の必要でないリフォーム工事において、しばしば、この換気設備を取り付けない場合があるようです。建築確認申請の有無に関わらず、同法に適合するよう工事を行う必要がある事を忘れないで下さい。
以上

最後に、室内の床、壁及び天井において、同じ量の汚染質発生がある場合、どの部位の汚染質を人は吸収しているかを数値シミュレーション解析したデーターがあります。
それによると、立っている立位状態の場合の人が吸収する汚染質の53%が床面からであり、寝ている臥位状態では、73%が床面からです。この事から、ハイハイする幼児や布団に寝ている病人等への影響が大きい事がわかります。
従って、床材や床下(シロアリ駆除剤等)からの化学物質放散を無くす事が大切です。


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