アモルの明窓浄几

芦屋・仕舞屋・三輪宝…生噛りの話題を机上で整理します。

がれき広域処理の「論点整理」02

2012年09月04日 | まちのこと
前回の続きです。六つの「論点整理」を補足します。
補足については、「民医連新聞」の記事からの引用部分と、他の新聞や雑誌書籍などからの引用部分があることをお断りしておきます。

(1) そもそもがれきの広域処理がなぜ、持ち出されてきたのか
>そもそも広域処理の話が出てきたのは、現地で全てのがれきを処理しきれないという予測からです。当初、宮城、岩手両県のがれきの総量は2,050万トン、今年5月の見直しで1,680万トンに減少(-370万トン減)。当初は400万トンを広域処理する予定でしたから、広域処理分はすでに無くなっているわけです。

(2) がれきに含まれる放射能は安全なレベルなのか。政治判断による許容レベルの引き上げは許されるのか。放射能に汚染したがれきを移動してよいのか
>原子炉等規制法のクリアランスレベルは、もともと100ベクレル/㎏(セシウム137)だったのが、政府は広域処理に際し、この規制値を8,000ベクレル/㎏まで引き上げました。環境省のhpでは、さらに10万ベクレルの焼却灰の処理方法まで書いています。
小中学校の屋外活動を制限する放射線量においても年間1ミリシーベルトから20ミリシーベルトに引き上げました。既存の基準で不都合が生じれば、都合の良い基準に書き直し、「安全」とする国の姿勢はこの間、一貫しています。
核戦争防止国際医師会議(IPPNW)は、8月29日に子供や妊婦の被曝線量を年間1ミリシーベルト以下に抑えることなどを日本政府に勧告しました。更に、子供や妊婦の被曝が年間1ミリシーベルト超と予想される場合は、移住を希望する人の住居や雇用、教育などを支援するよう求めています。
※IPPNW:核戦争防止を求める医師や学者らの国際的なノーベル平和賞団体

(3) バグフィルターの放射能除去能力や処分場からの水漏れ対策など、低線量被曝を極力避けるための最善策が、議論されていないのではないか
>バグフィルターの性能については当ブログ「再度がれき処理を考える」(4/23、30日)を参照して下さい。
芦屋市の焼却施設の施工(維持管理共)は、JFEエンジニアリング(株)です。バクフィルターで放射性物質の除去は可能であるかどうかを問うた雑誌のアンケートに対し、JFEエンジニアリング(株)は「無回答」でした。「放射性物質除去について実績や実証データがなく、明確な回答ができない。放射性物質についての知見を持っていない」ということのようです。

(4) どうして広域処理を急ぐのか。先進の東京都では新たな利権が原子力村によってつくられた。これこそが、安全性が検証されていない段階で広域処理を進める理由ではないのか
>がれきの現地処理の場合、1トン当たりの必要経費は2(~3)万円ですが、東京に持ち込めば6万円、九州なら10(~15)万円もかかるといわれています。数倍の費用がかかるのに、なぜ遠方まで運ぼうとするのか。東京都でがれき処理を受け入れる元請企業は、「東京臨海リサイクルパワー」(東電が株式の95.5%保有)であることがわかりました。又、国は広域処理の予算1兆円分をすでに大手ゼネコンに発注しています。広域処理とゼネコンについては当ブログ「紙の爆弾から」(8/6日)でも取り上げています。参照して下さい。

(5) そもそもがれきはどのように処理されるべきか。放射能汚染を全国に拡散させてはならないし、低線量被曝は極力避けなければならないのではないか。放射能に汚染されたがれきは国と東京電力が責任を持って現地処理を貫くことが必要ではないか。加えて、現地処理は被災地の雇用確保につながるのではないか
>放射能管理の原則は「集中して管理し集中して処理する」ということです。
 低線量被曝を避けるために、福島原発から出た放射能はできる限り回収すべきではないでしょうか。全国に拡散したら、二度と回収できません。
小出裕章京都大学原子炉実験所助教は、「放射能というのは、閉じこめることが原則です」とし、但し全国で引き受けるのが仕方ないのであれば、「出てきた焼却灰をそれぞれの自治体で埋めるなどということは、とうていやってはいけない。私の提案は福島第一原子力発電所に返すということ」といわれています。
当ブログ「被災地のがれき処理を考える」(3/19・6/11日)も参照ください。

(6) がれきには放射能に止まらず、アスベストやヒ素、ダイオキシンなど多数の有害物質が含まれているのではないか
>今回のがれきは阪神淡路大震災と違い複雑な事です。倒壊した家屋のがれきだけでなく、津波によるがれき、放射能に汚染されたがれきがあります。
当ブログ「被災地のがれき処理を考える」(3/19日)で紹介しましたが、樫田秀樹氏のルポは、「大気汚染防止法や廃棄物処理法などでアスベストの分別が義務付けられているが、現在、被災地でそれを実施している解体業者は皆無といっていい。…アスベスト建材は粉々に破砕されているので十分な分別はできない」、「アスベストに関しては、場所に関係なく万遍なく瓦礫を汚染している。…『アスベストがない』との前提で焼却しては、焼却施設の能力いかんでは周辺地域を汚染する」と報告しています。
以上

がれきの広域処理について、兵庫県下の自治体はこの度の災害廃棄物処理実行計画(第二次案)の結果、受け入れ先に該当していませんが、それはあくまで「可燃物」に限っての話です。「不燃物」がれきについては不確定です。

従って、この件の「不燃物」がれきついて稲村和美尼崎市長は、わざわざ記者会見を開いています。
朝日新聞(8/21日付)によると、「…稲村和美市長は20日の記者会見で、東日本大震災で出た『不燃物』の被災廃棄物(震災がれき)の受け入れについて、市独自の処分地がないことなどを理由に否定的な姿勢を示した」とあります。

関西広域連合も「8月23日、鳥取市内で首長らが集まって委員会を開き、焼却灰の最終処分先として想定していた大阪湾広域臨海環境整備センター(フェニックス)での受け入れが不要になったことを正式に確認した」というニュースは、皆さまもご存じだと思いますが、「不燃物」がれきの扱いについてはよくわかりません。
従って、がれきの広域処理についてもう一度、考えてみましょう。

そして、大阪市は受け入れる方向で動いています。
大阪市内で開かれた「説明会」の様子は、新聞紙上で報告されています。
次回その一部を紹介します。大阪市の同行も関心を寄せておくことが必要です。


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