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耐震診断と耐震補強について-6

2009年02月25日 | すまいのこと
第6回「2.住宅の耐震診断の流れ 2-2.RC造マンション等の耐震診断フロー」

何度も云っていますが、このシリーズは特に断りがない限り、在来木造戸建て住宅について説明していますが、マンションにお住まいの方も多いと思いますので、今回はRC造マンション(鉄筋コンクリート造共同住宅)の診断について、少し説明しておきます。

基本的な診断、改修工事の流れは前回の「図表-5」(住宅の耐震診断・耐震改修事業の流れ)と同じです。耐震診断が必要だと思われる建物は先ず「簡易耐震診断」を行い、本格的な診断が必要と判定されると次の「高次診断」へと進みます。下方の「図表-9」が、その診断フローです。後で簡単な説明をします。

その前に、今お住まいのマンションについて、耐震診断の必要性の有無を簡単に見分ける方法があります。下記の「図表-8」をご覧下さい。
この「RC造 誰にでもできる予備診断」は、藤木良明 工学博士の著書『マンションの地震対策』(岩波新書)に掲載されている診断フローです。
余談ですが、マンションの地震対策について一般ユーザー向けに書かれた書物としては、私の一番のお勧めです。

藤木氏によると、(社)日本建築学会編リーフレット「わが家の耐震―RC造編」に掲載されている「簡易な耐震診断」のフローを参考にして、マンション用に作り直したものだそうです。この予備診断フローの特徴は、ラーメン構造の建設年度が1970年(S45)以前の建物は、「診断が望ましい」としているものの、他の諸条件をクリアしておれば、建物の階数に囚われず「ほぼ安全と思われる」としている点です。藤木氏によると「この図の流れに沿って見てみると、自分のマンションのおおよその耐震性能がわかる。」との事です。尚、このフローの「安全」は、現行の建築基準法の考え方が基準になっている事も付け加えて居られます。


               ↑ 「図表-8」:RC造 誰にでもできる予備診断

上記の「図表-8」について、簡単に説明をします。
[START]から始まり、真っ直ぐ進むと[ほぼ安全と思われる]に到達します。その左隣が[診断が望ましい](緑色の囲い部分)、右隣が[診断が必要](赤色の囲い部分)です。

・[START]の次が[地形]ですが、建物が崖の上に建っていたり、崖地に面している場合、その土地が盛土や埋立地の場合などは、第3回目の地質の項で説明した通り地質調査が必要と思われるので、[診断が必要]となります。

・[地形]に問題がなければ、建物そのものの診断に進みます。
先ず、[建設年度]が1981年以降の「新耐震設計法」で設計されている建物は、安全側と判断できますが、1980年以前の建物は、建物の[構造形式]へ進みます。

・[構造形式]は、RC造の場合は一般に「ラーメン構造」と「壁式構造」に分かれます。
どちらの構造形式かは、設計図書の特記仕様書、構造仕様書又は、構造計算書等に記載されているのが一般的ですが、平面図や構造床梁伏図において、柱型があればラーメン構造で、コンクリートの壁(通常より厚みのある壁)のみで構成されており、RC柱らしきものがなければ壁式構造と考えられます。マンションの棟数では、ラーメン構造形式の方が多く、1階が大型店舗であったり、駐車場等のピロティ型の場合は、ラーメン構造です。

・[構造形式]がラーメン構造であれば、「ピロティ」の有無や「構造バランス」の良し悪しを検討する事になります。此処まで問題なく進んでくると、最後のチェックが再度[建設年度]です。1971年以降の建物は、十勝沖地震(1968年)を教訓に建築基準法施行令の改正が行われ[ほぼ安全と思われる]と判定しますが、1970年以前の建物は、[診断が望ましい]に該当します。

以上の予備診断フローから、[診断が望ましい](緑色の囲い部分)又は、[診断が必要](赤色の囲い部分)に該当すると思われる場合は、次の診断を検討してください。


               ↑ 「図表-9」:RC造 耐震診断フロー

上記の「図表-9」について、簡単に説明をします。
[簡易診断](赤色の囲い部分)を行い、問題有りとなれば、[高次診断](黄色の囲い部分)へ進み、最終検討を行います。

簡易診断のポイントは、[構造形式]の「ラーメン構造」である場合、次のステップの[柱率と壁率の算定]において、耐震指標Is値が0.8以上か未満かでルートが変わり、0.8未満の場合は[高次診断]へ進む事になります。
耐震指標の「Is値」とは、地震時に水平力が建物に作用する力の大きさと建物が持っている地震時水平力に抵抗できる耐力の大きさを比較した値です。従って、Is値が0.8未満であれば、地震の振動及び衝撃に対して倒壊する危険性が高いと判断し、高次診断へ進んで詳細な検討を行う必要があるのです。

高次診断においては、図表にあるように、1次診断・2次診断・3次診断があります。
「2次診断」は、鉄筋の配筋状態やコンクリートの強度等を考慮して、建物が最終的に破壊する時の強さ、ねばり強さ等を評価する診断法です。
「3次診断」は、2次診断で判断出来なかった場合に2次診断をさらに高度にしたもので、建物の保有水平耐力(構造物が極限状態に達した時に保有し得る水平耐力の事)を算出する診断法です。

以上で、RC造マンション耐震診断の概略をお話しましたが、補助事業等については、前回の「図表-5」(住宅の耐震診断・耐震改修事業の流れ)を参照してください。


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