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耐震診断と耐震補強について-5

2009年02月24日 | すまいのこと
第5回「2.住宅の耐震診断の流れ 2-1.住宅の耐震診断・改修工事の流れ」

今回は、耐震診断と兵庫県の補助事業との関係を事業の流れに沿って説明します。
兵庫県の補助事業とは、第1回目に説明した通り、建物の耐震改修計画や耐震改修工事の費用の一部を補助する制度です。又、芦屋市も平成20年度より県の補助事業に上乗せ助成をしております。
それらを図表化したのが下記の「図表-5」です。
但し、図表中の数値等は、平成20年度のものである事をお断りしておきます。


            ↑ 「図表-5」:住宅の耐震診断・耐震改修事業の流れ

上記の「図表-5」を木造戸建て住宅を例として解説します。尚、前回の「図表-4」と見比べて頂くと良くわかると思います。
1.『簡易耐震診断推進事業』とは、本診断(一般診断・精密診断)を行う必要がある建物かどうかを判定する予備診断に当たります。1981年5月31日以前に着工された住宅が対象となり、診断手数料3,000円を支払えば、簡易耐震診断員を派遣してもらえる事業です。「図表-4」における「誰でもできるわが家の耐震診断」に該当します。
尚、2×4(ツーバイフォー)住宅や丸太組住宅は対象外、店舗付住宅は面積の過半が住宅用途であること、マンションの場合は管理組合の決議等が必要であったりします。事前に市の申込み窓口(芦屋市は建築指導課)で確認されるのがよいでしょう。又、派遣される簡易耐震診断員は登録名簿から選択する事が出来ます。

2.上記の申込みをすると、後日指名の診断員より現地の調査日を問合せる電話があります。調査にお伺いする診断員は、顔写真入りの証明証を携帯しておりますから、指名した診断員であることを確認できます。このことは大切な事で、診断員自らが現地調査を行い、自らが簡易耐震診断報告書を作成し、署名押印する事が義務付けられています。
現地での調査時間は、建物の図面等の有無で異なりますが、概ね1~3時間程度です。土地・建物の図面、確認申請書(副本)、地盤調査書、増改築時の資料などがあれば用意して頂くと調査がスムーズに運びます。
現地調査は、ヒアリングと(非破壊)目視調査です。目視調査は、敷地の形状や周辺の状況、建物内外部の状態、床下・小屋裏点検口からの隠蔽部分の状況と筋違いの確認などです。建物内部において、図面と現況(壁の位置等)が同じ場合は、全てのお部屋を拝見する必要はありません。プライベートな部屋やご病人の居られるお部屋などで、特別な状態(床の傾きや雨漏り等)がなければ、簡易診断においては強いて見る必要はないのです。
現地調査が完了すると、診断員は後日、市へ報告書を提出します。依頼主は市からの診断手数料支払い通知を待って、振込みして頂くと簡易耐震診断書が届きます。
尚、依頼主へ診断員より直接診断書が届く事はありませんし、依頼主が診断員へ診断手数料を直接支払う事も絶対ありません。

3.「簡易耐震診断報告書」が手元に届きましたら先ず、表紙(「図表-6」参照)をご確認ください。
依頼主さま宛ての報告書になっているか、診断員名が現地調査に来た人と同じかを確認した後に二重枠で囲まれた「総合評点」欄を見てください。この総合評点が1.0以上ならば「一応安全です」乃至「安全です」のランクに該当しますが、1.0未満の場合は「安全性が低いと診断されたもの」に該当します。
次に「所見」欄をお読みください。所見欄は診断員によって表現方法は異なりますが、診断結果について依頼主に知って頂きたい重要な事柄について記載されています。
尚、総合評点の内訳は、「耐震診断シート」(「図表-7」参照)をご覧下さい。A~F項目に分類されており、各々数値で評価し、全ての数値を掛け合わせた合計数が総合評点となります。又、不明な点や質問等がありましたら診断員へ問合せると説明させて頂く事になっています。特に総合評点1.0未満の「安全性が低いと診断されたもの」に該当した場合は、今後の事も含め相談されるのがよいでしょう。
尚、簡易耐震診断報告書は、特に定められた統一書式は無いようですが、兵庫県下の診断員は、(社)建築士事務所協会が公開している書式を使用しているようです。私も同書式を用いていますが、概ね10枚程度の報告書となります。


             ↑ 「図表-6」:木造住宅の簡易耐震診断報告書の表紙(使用例)


             ↑ 「図表-7」:報告書内の耐震診断シート(使用例)

4.『わが家の耐震改修促進事業』は、簡易耐震診断で「安全性が低いと診断されたもの」の住宅を総合評点1.0以上に引き上げる耐震補強をするために行う事業です。既に述べたように「耐震改修計画」(補強設計)と「耐震改修工事」に対し、費用の一部を補助します。
又、この耐震改修促進事業を受けるには、簡易耐震診断の結果「安全性が低いと診断されたもの」である事が絶対条件ですが、簡易診断の結果安全性が低いと判定されたからといって、耐震補強を強要されたり、耐震改修促進事業を受けないといけないといった事は全くありません。尚、兵庫県民住宅再建共済制度(フェニックス共済)に加入する事も条件です。

5.「耐震改修計画策定費補助」は、耐震補強の必要性の判定と耐震補強後の耐震性の評価を行う事に対して、(補助対象部分の)改修計画費用の3分の2(上限額20万円)を補助する制度です。此処で、“耐震補強の必要性の判定”とは、「図表-4」における上から三段目の「一般診断(又は精密診断)」を指し、簡易耐震診断で「安全性が低いと診断されたもの」を改めて本診断で評価する事です。又、“耐震補強後の耐震性の評価”とは、「図表-4」における下から三段目の「補強設計」と二段目の「精密診断(又は一般診断)」を指し、耐震補強設計後に目標とする耐震性が確保出来ているかを再評価する事です。
平たく言えば、建築設計士等に耐震補強設計を依頼した場合の契約料の2/3(上限有り)を補助して貰えるのです。但し、工事監理料は対象外なので注意してください。

6.「耐震改修工事費補助」は、耐震改修計画に基づく補強工事に対して、その(補助対象)工事費の4分の1(上限60万円)を補助する制度です。
ここで注意すべきは、リフォーム工事と合わせて耐震改修工事をする場合に、耐震改修と直接関係のない工事部分は補助対象にはならないので、補助対象工事部分と補助対象外部分を見積書で区分けしておく事が大切です。又、この補助を受けるには、所得が1,200万円以下の県民であることが条件です。

7.『芦屋市の耐震改修促進事業』は、県の『わが家の耐震改修促進事業』の内の「耐震改修工事費補助」の助成金交付決定を受けている事が条件です。上乗せの補助金額は、県と同じく耐震補強工事費の4分の1ですが、上限が30万円となります。

8.「図表-5」にも記載していますが、県と芦屋市の補助金を合算した場合の例を下記に示します。
例:木造戸建て住宅で総費用が270万円(計画費30万円+工事費240万円)掛かる場合
・県からの補助金額=計画費に対する補助金20万円(30万円×2/3且つ20万円以下)
          工事費に対する補助金60万円(240万円×1/4且つ60万円以下)
・市からの補助金額=工事費に対する補助金30万円(240万円×1/4且つ30万円以下)
・    合計金額=20+60+30=110万円……上限の補助金額
・ 自己負担の費用=270万円-110万円=160万円(総額の約59%)

9.耐震改修工事に関するその他の補助や優遇処置について紹介します。
・「住宅耐震改修工事利子補給事業」:金融機関から融資を受けて耐震改修工事を行う場合に利子の一部を補助する制度。耐震改修を含むリフォーム工事に要する費用も補助対象になります。融資額最大500万円までの利子補給で、利子補給率は2%、利子補給期間は5年間です。
・「住宅改修促進税制」:『わが家の耐震改修促進事業』により、補助を受けて工事をした所有者に対し、所得税控除と固定資産税の減免を受ける事が出来ます。所得税は、耐震改修工事に要した費用の10%相当額(上限20万円)を控除します。固定資産税は、耐震改修工事費が30万円以上掛かったものに対し、その住宅の120㎡相当部分に付き、本年(H21)に工事を行った場合は、3年間に渡り1/2減額、平成22~24年に工事を行った場合は、2年間に渡り1/2減額、平成25~27年に工事を行った場合は、1年間1/2減額となります。

以上、長々と述べてきましたが、制度の内容は年度毎に変わることがあります。
当、ブログにおいても随時変更があれば、報告する予定ではいますが、紹介した制度をご利用になる予定の方は、下記のHPなどでご確認ください。
・兵庫県庁:http://web.pref.hyogo.jp/town/cate3_216.html
・芦屋市役所:http://www.city.ashiya.hyogo.jp/machidukuri/iewotaterutoki9.html


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