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耐震診断と耐震補強について-7

2009年03月01日 | すまいのこと
第7回「3.耐震補強工事費の目安 3-1.木造住宅の耐震補強工事の費用」

耐震補強工事をする場合、一体どのくらいの費用が掛かるのか?気のなるところです。
下記の「図表-10」をご覧下さい。この表は、私が技術者研修を受けた時のテキストに掲載されていたものです。

データが平成18年で少し古く50軒のサンプル数でもあり、あくまで参考に過ぎないのですが、次のような傾向はありそうです。
(1) 概ね100~300万円くらいの補強工事費が多い。
(2) 補強前の評点が低いと工事費は高く、補強前の評点が高いと工事費は安い。


              ↑ 「図表-10」:耐震補強工事費の目安

尚、耐震改修工事には、耐震補強のための直接関係する費用の他に、それに関連した工事費用も発生します。例えば、ある部屋の一部分の壁を補強改修し仕上が新しくなると、残りの壁部分との仕上がりの差が目立つため、結局その部屋の既存壁全部の仕上もやり直す事になったりします。その様な関連費用も見込んでおく事が必要です。



「3-2.改修方法によってもかわる費用」
同じ建物でも耐震改修方法によって補強工事費が異なる事例を紹介します。
建物の状況や改修方法によって費用に幅が出る事に留意してください。


             ↑ 「図表-11」:耐震改修方法が異なる場合の事例

図表に記載していますが、間取り図の左側が、「A案」で内部改修を主とした改修工事の事例、右側は「B案」で外部改修を主とした改修工事の事例です。

事例を簡単に解説すると、在来木造の2階建て住宅で延べ床面積が約43坪です。耐震改修前の総合評点が≒0.5程度で“倒壊する可能性が高い”ランクにあった建物を、“一応倒壊しない”ランクの総合評点1.0程度に引き上げた場合の耐震改修費用を比較したものです。事例は1階間取り図のみですが、2階も改修工事をしています。
補助金対象(補強工事)部分の概算費用は、A案、B案共に略同じですが、補助金対象外(関連費用)部分は、A案がB案の2倍費用が掛かっています。
尚、概算の改修工事費は、下記の通りです。    
                               A案    B案
・補助金対象部分の費用(図中斜線部分含む)  310万円  320万円
・補助金対象外部分の費用             180万円   90万円
・             合計             490万円  410万円

「A案」(内部改修を主とする補強工事)の特徴
   ・外壁廻りの壁も内壁側から改修するため、外壁を一切いらわずにすむ。
   ・内壁改修部に接する床や天井面及び設備器具類も一部分やり直す必要がある。
   ・内部の改修部分が多いと、一時的家具類の移転や引越しも必要。
   ・補強部分が少なければ、納戸や押入部分等を優先改修部分にすれば、形態上やコスト面においてメリットがある。
   ・内部のリフォーム工事と合わせて行うと、コストダウンが図れる。

「B案」(外部改修を主とする補強工事)の特徴
   ・外壁廻りの壁を外から改修するため、足場等が必要。
   ・外壁改修部に接する雨戸、小庇や樋等の付け戻し若しくは、取替えも有り。
   ・外壁の部分的改修であっても、目地切処理では適切でなく又見苦しい場合は、仕上の全面やり直しも有り。
   ・今回の事例「A案」のように、主要な部屋に影響する内部改修が多い場合は、関連費用が嵩むため、外部改修を主とする「B案」の方がコスト面においてメリットがある。
   ・内部改修部分を最小限に止められれば、家具等の移転も必要なく又、工事中もプライバシーが保てる。

概ね以上のような特徴が考えられますが、内部リフォームと合わせて耐震補強をする場合は「A案」型を、内部リフォームが無く補強部分が多い場合は、「B案」型を検討されるのがよいと思います。

又、耐震補強には何処から補強してもよいのではなく、補強すべき順序を考慮して行わなければ費用対効果が望めません。
上記事例のような建物上部構造部分の補強の前提として、基礎構造部及び地盤の安全性が優先します。大まかな優先順位を示すと下記のようになります。
優先順位(高) 1.地盤が悪ければ、地盤改良などを検討する。
          2.RC造でない基礎、ひび割れや老朽化している基礎は補修、補強する。
       ↑  3.耐力壁の追加や既設壁を補強したりする。
          4.木構造腐朽部分の取替え及び継手・仕口部分の金物補強をする。
          5.二階床面及び小屋裏面の水平剛性を高める補強をする。
      (低) 6.土葺瓦屋根等を軽量屋根材に葺き替える。

注記:屋根葺材の軽量化を図ると、耐力壁の追加や補強が軽減する場合があるため、屋根の軽量化を優先順位の上位にする考え方もあり、日本瓦を石綿系や金属系屋根材に葺き替えるケースがあります。しかし、私の個人的考えでは、瓦屋根を地震に不利といった一面のみで捉えるべきではないと思います。雨や火災に対しては有効であり、美的にも美しい種類のものが沢山あります。屋根が多少重たくても、それに見合った補強をすればよい事で、従って優先順位を下げました。

本年1月17日に某事業者共同組合が、耐震補強工事の施工金額を発表しました。新聞紙上で読まれた方も居られるでしょう。
同組合によると、2006年4月から2008年11月迄に実施した耐震診断は、11,288件になるそうです。その平均築年数は約26年で、その内から耐震補強工事を行った家屋の平均施工金額は、約129万円との事です。尚、この組合は2007年当時も平均施工金額を約127万円と発表しています。

私は、この施工金額を鵜呑みにはしていません。自らの経験からも平均施工費が130万円程度で納まるとは思えません。平均費用とは云え、概ね130万円有れば耐震補強工事が出来るといった同組合からのメッセージと私は捉えているのですが、果たしてそうなのでしょうか。一例では有りますが、次回検証してみたいと思います。


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