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耐震診断と耐震補強について-4

2009年02月22日 | すまいのこと
第4回の今回からは、第2章「住宅の耐震診断の流れ」に移ります。
但し、耐震診断等の細かな技術的説明をする事が目的ではなく、耐震診断とはどのようなものなのか、そして兵庫県の補助事業との関係はどのようになっているのかを説明します。

先ず、耐震診断とは第2回目にお話したように1981年に施行された新耐震設計法の基準に適合した「木造住宅の耐震診断と補強方法」(日本建築防災協会発行)に基づいた診断法によって行う耐震診断を云います。

此処でいう耐震診断法は、3種に分類されています。
(1)「誰でもできるわが家の耐震診断」:ユーザー自らが診断する事を目的とした診断法。住まいの何処に地震に対する強さや弱さがあるのかを理解し、より専門的な診断を行う際の参考にするのが目的。

(2)「一般診断法」:耐震補強の要否のスクリーニングを主目的とした診断法。建築士等の知識や経験を有するものが行います。非破壊の調査でわかる範囲の情報で診断する方法です。

(3)「精密診断法」:この診断法は、原則一般診断法の診断結果を受け、より詳細な情報に基づき耐震補強の要否の最終判断を行う事、及び補強後の耐震性の診断をする事を目的とします。建築士であるやや高度な知識や経験を有するものが行います。尚、精密診断法には、4種類の方法がありますがここでは説明を省きます。

上記(1)の診断法は、市役所等へ行けばリーフレットが配布されています。
耐震診断問診表の形を取っており、10問診を各々点数(評点)で評価し、評点の合計で今後の対策を判定します。あくまで耐震性のポイントを知ることが目的のため、これをもって、耐震補強設計は出来ません。又、補助金受給の対象診断法ではありません。

上記(2)の一般診断法は、耐震補強等の必要性を判断することが目的であるため、診断の結果、補強の必要性有りと判断された場合は、精密診断へ進むのが原則です。
但し、この一般診断法から精密診断を介さずに耐震補強設計を行うことも可能ですし、補強後の耐震性の診断にも用いる事が出来ます。又、兵庫県下においては、この一般耐震診断法は補助金受給の対象診断法に定められています。
この診断法の最大のメリットは、非破壊調査のデータで診断出来る事であり、結果的に精密診断法の代替診断法である事です。実務者にとっては非常に有難い現実的な診断法と云えます。但し、診断結果には不確定要素が含まれるため、安全率を見込んで耐震補強設計を行うので必要以上の補強設計になる可能性があります。従って、ユーザーに充分説明し、理解して頂く必要があるのです。

上記(3)の精密診断法は、一般診断の結果を受けて行う事が原則ですが、一般診断を省略する事も可能です。より合理的な耐震補強設計を行うには、詳細な診断法である精密診断法を用いる事がよいと思います。但し、より詳細な情報を得るため破壊調査が必要となり、調査日数や調査費用が嵩む場合があります。当然ながら補助金受給対象の診断法です。

以上をフロー化したのが下図「図表-4」です。


            ↑ 「図表-4」:想定される診断の流れ

以上、3種類の診断法の概略を説明しましたが、私達専門家が耐震診断と呼ぶのは、(1)を除いた(2)と(3)の診断法を用いた耐震診断をいい、本診断とも云います。
又、上記で説明した通り一般診断法は精密診断法の代替診断法と認められているため、両者の診断法の目的は違っても、結果的には同列の診断法と云う事になります。
耐震診断を受ける場合は、「一般診断(法)」にするか、「精密診断(法)」にするかは、専門家の考えを尋ね、充分納得の上依頼してください。

実は、もう一つの診断があります。次回にお話する予定の兵庫県の「簡易耐震診断推進事業」における「簡易耐震診断」です。
この診断は、上記の(2)又は、(3)の診断を行う必要があるかどうかの要否を判断するための予備診断です。(1)の診断に近い考え方ですが、より技術的要素を取り入れた診断法になっています。市の窓口に申し込むと、簡易耐震診断員(建築士)が派遣されます。

最後に、耐震診断とは全く別物ですが、地震災害の後に行われる建物の被災状況を判定する判定方法について説明しておきます。
被災を受けた建物の被災状況の判定方法には、下記の3種類があります。
①「応急危険度判定」
  ・地震直後に自治体が最初に実施する。
  ・余震に備えて、被災した建物をそのまま使用し続けてよいかどうかを判定する。
  ・赤(危険)、黄(要注意)、緑(調査済)のステッカーを貼る。
②「被災度区分判定」
  ・地震の被災後2~3ヶ月以降に実施する。
  ・被災した建物の復旧の容易度を専門家が判定する。
  ・構造体の損傷状態を調査し、補修、補強及び解体等の判断の目安を示す。
  ・被害ランクⅠ(軽微)、Ⅱ(小破)、(中破)、Ⅳ(大破)、(崩壊・倒壊)で判定。
③「罹災証明」の判定
  ・生活再建のための支援金、義援金の受取りに必要だった。
  ・税金などの減免申請に必要。
  ・全壊、半壊、一部損壊で判定。

阪神淡路大震災の後、これらの判定の目的などが理解されず、又混同されたり解釈が統一されていなかったりして、トラブルに発展した事を覚えておられる方も多いと思います。
例えば、震災直後の応急危険度判定において、被災を受けた建物の屋根瓦が落下する恐れがあるため赤色のステッカーを貼っているのを見て、危険=大破した建物と思い込んだり、罹災証明の全壊が即解体し、建替えするしかないと思われたりしました。
このようにこれらの判定方法には、目的も方法も異なる事を理解し確認しておくことが大切です。ましてや、耐震診断法とは全く関係はありません。

次回は、「2-1.住宅の耐震診断・改修工事の流れ」と題し、兵庫県の補助事業との関係を取上げます。


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