アモルの明窓浄几

芦屋・仕舞屋・三輪宝…生噛りの話題を机上で整理します。

診断診断と耐震補強について-3

2009年02月16日 | すまいのこと
第3回「1.繰り返される地震 1-3.芦屋市周辺の地質」

地震に対して建物が壊れるかどうかは、一口で言うと建物に入ってくる地震力の大きさより、その建物が持っている抵抗力の方が強ければ壊れないということから、建物自体の耐震化(補強)に目が向くのですが、その前提として建物を支える地盤の特性を考慮しなければなりません。

基本は、硬くて強い「よい地盤」の上に建物を建てるのが理想ですが、現実はそうではありません。そこで、軟弱な「悪い地盤」では、地震動の増幅や地盤と建物との共振現象等が起こることから建物の必要耐力を1.5倍にすることになっています。
従って、自分の住まいの建っている地盤の特性を知っておくことが大切です。

地盤の特性を知る方法としては、一般的に行われるのが地盤調査のボーリング標準貫入試験ですが、木造戸建て住宅程度の建物では、スウェーデン式サウンディング調査が普及しています。
しかし、既存建物の耐震診断などの場合は、上記のような地盤調査を行うことが困難な場合があるため、自治体などが提供している周辺データの閲覧やハザードマップ及び「地質図」(産業技術総合研究所地質調査総合センター発行)などから推測します。

※兵庫県ハザードマップ:http://www.hazardmap.pref.hyogo.jp/hazmap/top.htm
  但し、洪水、土砂災害、津波、高潮、溜池災害のみで、地盤の情報はありません。
※日本シームレス地質図:http://riodb02.ibase.aist.go.jp/db084/index.html
  産総研が、インターネット上に公開している地質図です。


       ↑ 「図表-3」:芦屋周辺の地質図

上の「図表-3」をご覧下さい。
日本シームレス地質図から芦屋周辺部を拡大したものです。(国道2号線の赤線は、私が書き入れました。)
この地質図で、海側に面している薄水色部分が約1万8千年前から現在に至る堆積岩類で、地質時代でいうと新生代の最も新しい第四紀(現在から約260万年前迄)の後期更新世から完新世に該当します。
この薄水色部分の地層(以後、H堆積層と呼びます)は、国道2号線を挟んで広く海側に伸びた平野部に分布しており、建物が多く存在する市街地を形成しています。

実は、1980年に建設省告示1793号で地盤は、三種類に分類されています。
・第1種地盤:岩盤、硬質砂礫層その他主として第三紀以前の地層によって構成されているもの又は、…以下、省略
・第2種地盤:第1種地盤及び第3種地盤以外のもの
・第3種地盤:腐植土、泥土その他これらに類するもので大部分が構成されている沖積層(盛土がある場合においてはこれを含む。)で、その深さがおおむね30m以上のもの、沼沢、泥海等を埋め立てた地盤の深さがおおむね3m以上であり、かつ、これらで埋め立てられてからおおむね30年経過していないもの又は地盤周期等についての調査若しくは研究の結果に基づき、これらと同程度の地盤周期を有すると認められるもの

前回で紹介しました耐震診断法では、この第1種地盤を一般診断法による分類では、「よい地盤」(精密診断法では「良い・普通の地盤」以下、括弧内同じ)に相当します。第2種地盤は、「普通の地盤」(「やや悪い地盤」)、そして第3種地盤は、「悪い地盤」(「非常に悪い地盤」)に相当することになります。

この告示でわかるように、第3種地盤「悪い地盤」には深さが概ね30m以上ある「沖積層」が含まれています。これは、沖積層の厚さが30mを超すと、木造建物の地震による被害率が略10%を超え、それ以上の層厚になるにつれ、被害率が急増することが経験的事実として知られているからです。

この「沖積層」ですが、これは「図表-3」のH堆積層に含まれています。H堆積層は、現在から約1万8千年前迄の地層を指しますが、沖積層は現在から約1万年前迄の完新世に概ね該当します。そして、それ以前の同じ第四紀の地層を「洪積層」と分けて呼んでいます。

従って、我が家が沖積層の地盤の上に建っていたり建築する場合は、良く調査することが重要です。又、洪積層以前の地層であっても、昔は河川、池、沼地などであった処の埋立地は、液状化や不同沈下の恐れがありますし、山地や丘陵地を造成した宅地などでは、旧地形の傾斜面に盛土した部分に建築した建物には、被害が多く見られます。崖地なども崖崩れや土砂崩れなどに注意が必要で、このような処は調査することが必要です。

最後に、「震災の帯」について少し触れておきます。
阪神淡路大震災の折、国道2号線を挟んだ両側に被害が多く集中し、この状況を当時「震災の帯」と呼びました。何故、国道2号線に沿って被害が集中したのでしょうか。
この阪神淡路大震災は、内陸型地震でした。地震の揺れは、硬い地盤から軟らかい地盤へと伝わる時に大きくなりますし、それらの地盤の境目部分では、揺れが複雑に増幅したりします。
詰まり、国道2号線沿いの「震災の帯」と呼ばれた処は、この境目に位置したのでした。
もう一度、「図表-3」を見てください。
国道2号線から山側の濃い色の部分は、六甲山系で硬い地盤です。この山裾から海側に向けての薄水色部分はH堆積層ですが、殆ど沖積層で成り立っています。当然ながら、この軟らかい沖積層の下には六甲山系からの硬い地層が滑り込んでいます。
山側には被害が少なく、山裾から少し平野部に入ったJR線から国道2号線を跨いだ範囲の「震災の帯」辺りが境目であり、最も被害が大きかったのです。


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