アモルの明窓浄几

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耐震診断と耐震補強について-12

2009年03月14日 | すまいのこと
第12回「4.耐震補強のポイント 4-4.基礎のひび割れ等も補修や補強が必要」

↑ 「図表-19」:耐震補強のポイント その4

基礎は、上部構造に作用する外力や荷重を地盤に伝える大切な部位で、地盤の沈下や変形に対して安全な構造体でなければなりません。
従って、基礎自身が弱かったりすると、幾ら上部構造を合理的な耐震補強をしていても、地震時には被害を受ける事になります。
「図表-19」写真の被害を受けた基礎は、鉄筋の入っていないコンクリート(無筋コンクリート)基礎で、ひび割れのある老朽化した基礎と思われます。

実は、古い木造住宅の基礎には、安全上問題があるものが多々存在します。
前回、2000年(H12)の建築基準法改正で、木造の継ぎ手及び仕口部は金物で緊結するよう告示第1460号で仕様を特定されたと云いましたが、基礎においても地盤調査を行い、その地耐力に応じて基礎の形式を定めるように法改正がなされました。

法改正により、告示第1347号で基礎の構造形式や基礎形式別の仕様規定が定められたのです。法改正前は、原則仕様規定等はなかったものの、建築士の責任において基礎設計する事になっていましたが、ビルやマンション等と比較すると二階建て程度の木造在来住宅は、建物荷重も軽く又、歴史的経緯の慣習からか地盤調査も行わずに、経験則に基づいて基礎形式を決めてきたように思われます。
仕様規定といえば、当時の住宅金融公庫仕様が一般に認知されており、公庫仕様に適合した基礎にしておけばよいといった認識であったものと思われます。
旧住宅金融公庫の果たした役割は大きく、建築基準法の不備を補って来た経緯があります。1981年以降は、基礎に鉄筋を入れる事が当たり前となり一般に普及しましたが、それ以前は無筋コンクリートが主流で、古くはブロック造、レンガ造や玉石基礎等も存在していました。

「図表-19」写真のように大きな被害を受けた基礎は、同下の写真のように既存の基礎に新たな基礎を抱き合わせて補強する場合もあります。その他、不同沈下がみられる場合や基礎自体に1.5㎜以上の割れが連続している場合等にも、増打ち基礎による補強や鉄筋コンクリート基礎に造り替える等の必要があります。

それ程の被害はなくても基礎表面をよく見ると、ひび割れを発見したりします。ひび割れ巾が0.3㎜以上ある場合は、専門家に調べてもらう必要があります。ひび割れが小さければエポキシ樹脂等の注入による補修を行いますが、1.0㎜程度のひび割れの場合は、鋼板等を添えてアンカー留めする等の補修、補強を行います。

尚、ひび割れの巾を測るのは、コンクリート基礎表面のひび割れです。構造クラックとも云います。基礎の立上げ部分の外部側は、通常モルタル等の仕上が施されていますから、この仕上材のひび割れは構造的欠損ではありません。
仕上材に其れなりに目立つひび割れがあれば、その周辺部を剥がし、コンクリート面にひび割れが及んでいないかを確認します。

尚、コンクリート面のひび割れ巾が0.2㎜以下であれば、補修は特にする必要はなく、仕上材で保護すればよいでしょう。
良質な施工によるコンクリート基礎であっても、完全にひび割れを防ぐ事は困難な事です。ひび割れの全てが悪いのではなく、ひび割れの原因と程度を掌握し、適切な処置をする事が大切です。

以上の他に耐震診断を行う場合に注意すべき事は、複合基礎は認められないという事です。例えば、鉄筋コンクリート布基礎で補強計画を行う場合は、連続している建物外周廻りの基礎及び内部の耐震壁下部の基礎は、鉄筋コンクリート布基礎でなければなりません。
又、無筋コンクリート基礎に、引き抜きの負担の大きいホールダウン金物等を設置する場合は、検討を要します。更に、無筋コンクリート基礎の老朽化が激しい場合は、補強の必要があります。

今回で、「耐震補強のポイント」は終了ですが、この他にも外構のブロック塀等は、地震時のみならず、台風時においても転倒したりして通行者に被害を与える事故が見受けられます。日頃から、屋外廻りにも注意を払ってください。


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