アモルの明窓浄几

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耐震診断と耐震補強について-13

2009年03月19日 | すまいのこと
第13回「5. リフォームと耐震補強の関連法 5-1.耐震改修促進法との関連」

耐震改修工事を行うのに、補強工事のみを行う場合と、リフォームと合わせて補強工事を行う場合があります。
リフォーム工事においては、リフォーム専門の設計士や業者さんに依頼されるケースが多いようですが、プランやデザインを優先し過ぎて、建物の耐震性を充分に検討しているのか疑問を感じる場合もあります。

テレビ番組で「○○ビフォーアフター」等と夢のような大改造を演出しているのですが、改装の域を越えた建物の構造上主要な躯体までも改造するケースが見受けられます。
耐震的安全性も含めたリフォーム工事を提供し、合わせて補強工事を行うと内外装材等のやり替えの重複を防げて工事費の軽減も図れるなど、耐震補強工事のメリットと重要性をアピールして頂きたいものです。

今回からは、第5章「リフォームと耐震補強の関連法」に移ります。
皆様のお住まいの住宅がある程度古い場合は、既存不適格建築物に該当します。
この既存不適格建築物を耐震補強工事やリフォーム工事を行おうとすると、どのような法律に抵触し、どのような取扱いを受けるのかを説明します。

説明に入る前に、用語を整理しておきます。
・増築:既存建物を建て増しする事を云います。棟続きの同一棟増築と、既存建物とは別に同一敷地内に新たに建てる棟別増築とがあります。このシリーズで増築とは、前者を指します。

・改築:既存建築物を地震等で滅失した後に、用途、構造、規模の略同程度の建物を建てる事を云います。尚、用途、構造、規模の異なる建物を建てる場合は、新築となります。

・リフォーム:内外装の模様替えやキッチン、浴槽等の入替え等の改装を指しますが、広くは既存建物の躯体の変更を伴う改造や増築もリフォームに含める業者もあるようです。尚、リフォームは和製英語で、建築基準法にこの用語はありません。

・大規模の修繕:主要構造部の一種以上について行う過半の修繕を云います。例えば、既存瓦屋根の面積の過半以上を同じような瓦で修繕する事など。

・大規模の模様替:主要構造部の一種以上について行う過半の模様替えを云います。例えば、既存瓦屋根の面積の過半以上を瓦とは異なる鋼板等で葺替える事など。

・主要構造部:壁、柱(間柱は除く)、床(最下階の床は除く)、梁(小梁は除く)、屋根、階段(屋外階段除く)などの「防耐火上」重要な部位を云います。
これと似た用語に「構造耐力上主要な部分」(基礎、基礎杭、壁、柱、小屋組、土台、斜材、床版、屋根版、横架材などの構造強度上重要な部位)があります。

・既存不適格建築物:建築した時には、建築基準法等の法律に適合していたのに、その後の法律の改正や都市計画の変更等によって、現行の規定に適合しなくなった建築物の事。
事実上、現行の法律には適合していないが、違反建築物とは区別され、原則としてそのままの状態で使用する事が出来ます。

今日は、「耐震改修促進法との関連」についてです。
先ず、大原則として、建築確認申請が必要か不要かに関わらず、既存不適格建築物は、増改築及び大規模な修繕や模様替え等をすると、建物全体を建築基準法等の法律に適合させる必要があります。
この点を念頭において、下記の「図表-20」をご覧下さい。


↑ 「図表-20」:.耐震改修促進法との関連

耐震改修促進法とは、正確には「建築物の耐震改修の促進に関する法律」と云います。
この法律は、阪神淡路大震災の年の1995年12月25日より施行されています。既存建築物の耐震改修を促進する処置を講ずる事によって、建物の安全性の向上を図ることを目的としています。

前説でお話したように、既存不適格建築物を増改築などすると建物全体を現行法に適合させる必要がありますが、「一定の基準」の耐震改修を行えば、耐震関係規定以外の法規定部分については、既存不適格建築物として取り扱うとするものです。
言い換えると、耐震補強工事をすれば、建物の他の部分は現行法に適合していなくても、原則今のまま使用してよいと云う事です。

この事は、建物の耐震化を最優先した考え方で、耐震改修を促進する同法の根幹です。
但し、同法は建物の所有者が「自らの問題」として耐震化に取り組む事とし、努力義務とされています。

尚、「一定の基準」には、「木造住宅の耐震診断と補強方法」(日本建築防災協会発行)に基づいた診断法(一般診断法又は、精密診断法等)で耐震改修化を計画する事を含みます。

次回は、既存不適格建築物の耐震改修化の建築基準法での取扱いを見てみましょう。


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