スラウェシ島の山岳地帯、タナ・トラジャにトンコナン様式とよばれる建築の家があるのは有名である。
トラジャ人がみんなそういう家に住んでいるのではない。一般庶民の農民は、正方形の2階建て住宅(1階部分に壁のない高床建築)などに住んでいる。
トンコナン様式の家は小さな集落をなしていて、山際にぽつりぽつりとあるそういう集落のたたずまいが、日本の合掌造り集落と雰囲気が似ている気がするので
私はスラウェシ合掌造りとひそかに呼んでいる。
この建築はサダン・トラジャと言われるいわゆるタナ・トラジャ地域ではいたるところで見ることができ、廃れるどころかどんどん新築もされている(2008年現在)。
トラジャの派手なお葬式も廃れるどころか派手になる一方と聞くから
彼らは見栄を張れる限りは精一杯張るのが生きがいなのかもしれない。
あるいは彼らの見栄というのは、古い物を捨てて新しい物に移行することではなく
伝統の中で思いっきり派手にやることだといえるのかもしれない。
トンコナン様式の家には貴族が住んでいて、集落はその一族でつくっている。
家の前に広場があり、そこをとりまくように倉が両側にいくつも並ぶ。
これらは貴族の持ち物である。
本でトラジャの集落について読んだ。
貴族というのは領主という感じである。
そこに小作人がいて、米を作らせている。
小作人たちは集落の回りに住んでいる。
そして奴隷と呼ばれる人も、この回りに住み、領主のための仕事をしている。
私が思うに、領主といっても領地はうんと小規模であると思う。
日本の戦国時代のような、尾張の国とか武蔵の国とかいうスケールではない。
貴族でも見た目は普通の人と同じである。また、労働しないわけではなく、普通に田んぼをやったりしているように見えた。
奴隷というとどうも日本では、かつてヨーロッパ人がアフリカから強制的に連れてきて非人道的な扱いをして過酷な労働をさせた人たちというイメージがあるが、
そういうものではなく、ちゃんと仕事をして領主に食べさせてもらっていた人たちである。働き方においてはサラリーマンと大差ないと思う。
日本語の奴隷という言葉は2つに分けたほうがいい。ローマの奴隷も後者のほうである。
タナ・トラジャのカーストは、貴族、平民、奴隷だという。今、現地のガイドたちは、貴族、中流、下流、奴隷という4つのクラスで説明する。けれどもともと中流というのは貴族と下流の混血で、本来は3階層だと本には書いてある。
最も今では学校教育などのためにそういう身分の区別はあまりしないし、恋愛結婚が多くなって、どんどん混ざっているということだ。
続く。
写真/ スラウェシ島タナ・トラジャ(2008年)
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