不埒な天国 ~Il paradiso irragionevole

道理だけでは進めない世界で、じたばたした生き様を晒すのも一興

Madonna della gatta

2013-08-21 08:06:00 | アート・文化
絵画作品の中に
犬や猫が描かれるケースもたくさんあります。
大まかな区分ですが、
どちらかというと、
犬は忠誠を、猫は裏切りを暗喩していると言われます。
しかし、もちろんすべてそうとは限りません。

Federico Barocci(フェデリコ・バロッチ)の描いた
Madonna della gatta(猫の聖母)は
元々はウルビーノ公のコレクションでしたが、
Vittoria della Rovere(ヴィットリア・デッラ・ロヴェーレ)が
トスカーナ大公フェルディナンド2世
(Ferdinando II de' Medici)のもとに嫁いだ時に
嫁入り道具の一つとしてフィレンツエェに持ち込まれ、
そのまま現在もウフィツィ美術館の所有となっています。

作品のテーマは「Visitazione/エリザベッタの訪問」で
画面の右側にElisabetta(エリザベッタ)と
夫であるZaccaria(ザッカリア)に連れられて
幼い洗礼者ヨハネ(San Giovannino)が描かれ
画面の左側に重いカーテンをあげて
部屋の中へ招き入れているGiuseppe(ジュゼッペ)、
小椅子に座って幼子キリストの眠るゆりかごを揺らす
聖母マリアが描かれています。
その聖母の服のうえで
母猫が二匹の子猫に授乳しているシーンが
画面の中央に見られます。

聖母マリアとキリスト、
エリザベッタと洗礼者ヨハネ、
親猫と子猫という
3つの母子像が描かれており、
隠されたテーマは「母性」であると言われています。
エリザベッタはやんちゃ坊主のヨハネの左腕を掴んで
段差から落ちないように支え、
聖母マリアは眠りについているキリストが
目を覚まさないように
ゆりかごを優しく揺らし続けています。
母猫は突然のエリザベッタたちの訪問に警戒心を強め、
耳を軽く下げて
視線をエリザベッタたちの方に投げています。

マニエリズモ期の画家であり、
また反宗教改革者でもあったバロッチは
作品の中に動物を描くことが多いようです。
同じ空の下に生きるすべての命は
神の意による兄弟であるという考え方に基づいて
その想いを作品の中で表現するために
動物を登場させているのだといわれています。

この作品中の猫は裏切りの暗喩ではなく、
母の愛を象徴しているのです。
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