CARAVAGGIO(カラヴァッジョ)の不遇の死の後、
彼の生前を盛大に語り継いだのは
ライバルの画家たちだったこともあり
彼の悪い部分だけが取り沙汰され、
またヴァチカンも常々
カラヴァッジョが宗教画を描くときにも
聖人のモデルとして一般庶民、
ともすれば貧しい人々を取り上げたことから
彼の作品を俗物として好まなかったこともあり
実は本当に長い間、彼の評価は低いままでした。
1900年代後半になって
カラヴァッジョの再評価を試みたのは
イタリアの著名な美術史研究家である
Roberto Longhi(ロベルト・ロンギ)で、
彼が熱心に著作の中で評価を続け、
ミラノの王宮での記念すべき展覧会で
成功を収めたことにより
カラヴァッジョの評価はぐんぐんと上がり、
今日に至っています。
この再評価の過程で、
カラヴァッジョと名がつけば
展覧会の人の入りもよかったせいもあり
実際には彼の作品ではないかもしれない
疑惑の作品もあたかも彼の作品かのように
数多くの展覧会に出展されてきました。
むしろカラヴァッジョの作品であると
確定されているものは門外不出に近くなり、
不確定要素の強い作品のほうが
よく目に付くようになったりもしました。
2010年はカラヴァッジョ没後400年に当たり
各地でさまざまな作品を集めた展覧会が開催されますが、
カラヴァッジョ派であったり、
多分カラヴァッジョ作といった作品も
展覧会会場に多く出回ることになります。
そんななかで
ローマのQuirinale(クイリナーレ)で開催される特別展では
これまで一堂に会する機会がなかった
正真正銘のカラヴァッジョの作品を
全世界から25点集めることになっています。
それに加えてローマ市内には教会や宮殿などに
約40点近いカラヴァッジョおよび周辺の作品があるので
特別展とあわせて
じっくりローマのカラヴァッジョ巡礼をすることで
かなりの数のオリジナル作品を目にすることができます。
このローマにある作品の中に
実はぱっと見はまったく同じ作品が存在します。
SAN GIOVANNINO(若き洗礼者ヨハネ)ですが、
一枚はカピトリーノ絵画館(Pinacoteca Capitolina)に
もう一枚はドリア・パンフィリ(Villa Doria Pamphiilj)に
所蔵されています。
経済的に苦しかったカラヴァッジョが作品を売り稼ぐために
まったく同じものを製作したといわれたこともありましたが
現在ではこのうちの一枚がオリジナルで
もう一枚は完璧なコピーであることが
専門家の研究の結果明らかになっています。
しかし、素人の目からすれば
その違いなどほとんどわからないので
コピーのほうが展覧会に出ていたとしても
感心して見入ってしまいます。(罠)
もちろん複製であったとしても
完成度は非常に高いので
もしコピーであることを知っていれば、
違う意味で感心することもできます。
今回のQuirinaleの特別展に出展されるのは
もちろんオリジナルの
カピトリーノ絵画館所蔵のSan Giovanninoです。
Caravaggio
会場:Squderie del Quirinale
Via XXIV Maggio 16
Roma
会期: 2010年2月20日から2010年6月13日まで
開館時間:日-木 10:00-20:00
金・土 10:00-22:30
入場料:10,00ユーロ
詳細インフォメーション:http://bit.ly/5ea53u