不埒な天国 ~Il paradiso irragionevole

道理だけでは進めない世界で、じたばたした生き様を晒すのも一興

Discesa di Cristo al Limbo di Bronzino

2007-08-21 07:38:12 | アート・文化

十字架にかけられたあとの復活前夜の土曜日。
キリストは地獄の入り口に降り立ちます。

Limbo(辺獄)は洗礼を受けずに亡くなった幼児や
キリスト生誕以前に死んだ善人
(その多くは旧約聖書に登場する父祖たち)の
霊魂が眠るといわれる場所。

ブロンズのカンヌキで閉ざされた扉を打ち破り
神々しい光を纏ったキリストが辺獄に舞い降りて
悪魔の手により閉じ込められている善人の霊魂を
解放するというエピソードは
聖書外伝のニコデモ(Nicodemo)の福音に記されています。

キリストによって救い出される善人には
アダムとイヴ、その息子セス、モーゼ、ダヴィデ、
イザイア、シメオン、洗礼者ヨハネなどがいます。

芸術作品の中ではキリストの発する果てしない力と
彼がまとう眩い光のために辺獄の支配者である悪魔は
打ち破られた扉の下敷きになったり
光の届かない暗闇の部分に逃げ込んだ姿で描かれます。

1966年の洪水から40周年を迎えた昨年、
長年大規模に展開されていた
重要な修復作業が続々と完了しました。
最も被害の大きかったサンタ・クローチェ教会には
輝きを取り戻した様々な作品が戻ってきています。

その中にAgnolo Bronzino(アーニョロ・ブロンツィーノ)の
Discesa di Cristo al Limbo(キリストの辺獄降臨)があります。
Cristo_scende_limbo_03
約4メートル×3メートルの作品で
金色をメインにした多色の木製額縁も
ブロンツィーノのデザインを基に作成されているといわれています。

Cristo_scende_limbo_02
作品は1552年に作製されたもので、画家の署名と共に
Giuditta(ユーディット)の握り締める
剣の柄の部分に記されています。

ひときわ白い肌を晒して
軽い足取りで歩を進めるキリストの足元に群がる人群。

コジモ一世のお気に入りでメディチ家の宮殿画家として
一族の肖像画を数多く残している画家の描く人々は
どことなく、メディチ家の人物を思い出させます。

画面正面向かってキリストの右に立つ女性がイブ、
おそらくその脇に寄り添うのはアダム。
その上方に細い十字架の杖を持つ男性は洗礼者ヨハネ。
キリストが手を差し伸べているのは
預言者ハバククにも似ている気がします。

Cristo_scende_limbo_01
画面右上方に描かれるのが敗北の悪魔たち。
身を乗り出している悪魔が妙に漫画チックなところが気になります。
これは修復者の意図的なものなのかと疑ったほどですが。

この作品はサンタ・クローチェ教会内教会美術館の
最後の広間(旧食堂)に展示されています。

Basilica e Museo di Santa Croce Firenze
開館時間:平日 9:30-17:30
     祝祭日 13:00-17:30
閉館日:1月1日、復活祭、6月13日(聖アントニオの祝日)、
    10月4日(聖フランチェスコの祝日)、12月25日、12月26日 
入場料:5,00ユーロ
インフォメーション

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