不埒な天国 ~Il paradiso irragionevole

道理だけでは進めない世界で、じたばたした生き様を晒すのも一興

Annunciazione

2004-10-21 09:08:32 | 日記・エッセイ・コラム
L'ospedale degli innocenti。
フィレンツェ共和国時代に
「絹織物組合」の出資で建てられたもの。
設計・建築はフィリッポ・ブルネッレスキ
(Filippo Brunelleschi)が担当している。

1400年代のフィレンツェには
育てられなくなって捨てられる子供が
後を絶たなかった。
そうした子供たちを受け入れる施設として
ヨーロッパでも初の捨て子受け入れ施設として
1419年に誕生したのが
この「L'Ospedale degli Innocenti」。
行き場をなくした子供たちを介護し育て、教育して、
やがて社会に出られるように
手に職をつけさせるというのが目的。

建物の前につけられたアーケード。
この左端に小さな穴が開けられている。
今は鉄格子がはめられているけれど、
両脇を二人の天使に守られたこの穴は
「RUOTA」と呼ばれていた回転台。
台の上に子供を置いて、
くるりと回すと
台ごと回転して一瞬にして子供は壁の向こう側に。
こうすることで
やむを得ず子供を置き去りにしていく
親の顔を知られずにすんだ。
それでも親はいつか金銭的余裕ができて
子供を再び引き取れる日が来ることを祈り
そのときに識別可能なように、
何かしらひとつ小さなオブジェを添えていたという。
この回転台、1875年まで機能していたというから驚き。

建物内部の回廊には
Andrea della Robbiaの彩色テラコッタ「Annunciazione」。
immagine9.jpg
やさしい雰囲気をかもし出すこの作品は
この施設の本来の機能をよく表していていい感じ。

Innocenti(インノチェンティ)という苗字は
今の時代のイタリアにも数多く残っていますが、
その起源はこの施設にあり。
この養育院出身者を
遠い昔の祖先に持つという意味でもあります。

しかし、「L'Ospedale degli Innocenti」
これを初めて日本語に訳した人は
どうしてこのような訳にしたのだろう。
「捨て子養育院」。
こう呼ぶたびに
すごく寂しい気持ちになるのだけれど。
せめて「孤児院」でよかったのではないかしら。
実際どこにも「捨て子」という
イタリア語は含まれていないのだし。
個人的には「ポニーの家」と呼びたいけれどね。


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