完全自粛期間が明けて時々テレワークの勤務体制になって
通勤のローカル電車の中吊り広告で見つけた三谷幸喜さんの講演会告知。
Covid-19の感染対策のため入場人数制限があり、
抽選で200名限定と書かれていたので、
倍率高そうだなとは思ったけれど、とりあえず応募しておいた。
抽選結果を知らせるメールでは「落選」っていうことだったので一度は諦め
そのあとでやっぱり当選という電話があったときには正直驚いた。
でも嬉しかったので、早々に午後半休の申請をした。
会場は地元の韮山時代劇場。
ホール入り口から密な状況が作られやすい施設で
どうやって3密回避するのかなと思いながら
ギリギリで会場に到着したら
いつも入る狭い正面入り口ではなく脇のスペースに誘導されて
まず屋外で検温、
そのあと五十音順に区分けされたブースで名前と体温を告げて
たっぷりの消毒ジェルを手にかけられる。
脇の出入口からエントランスに入ったところで
座席を書いた小さな紙を渡されて座席が指定される。
L-33。
韮山時代劇場大ホールは桟敷席や花道があるちょっと独特な造りで
1階・2階・桟敷席合わせて約500席。
感染対策のため座ってはいけない席にはA4の紙が貼られていて
座席はひとつづつ空けて前後も重ならないように指定。
抽選200ということだったけれど、最終的に250人入ったそう。
この座席に貼ってあった紙の裏面がアンケート用紙だったことを講演会の最後に知って、いいアイディアだなと思った。これもニューノーマルなんだろうか。
三島青年会議所主催ということで、
なんかすごく体育会系なお兄さまたちが取り仕切って
個人的にはムズムズするような、ちょっと懐かしい感じがした。
伊豆の国から出た北条義時が主役となる2022年の大河ドラマの
脚本を書かれる縁で、三谷幸喜氏独自の歴史観についての講演。
「僕が歴史を好きな理由」
ローカル線の中吊り広告ではわからなかったけれど、
この企画はその北条氏や源頼朝つながりで
小田原と鎌倉と韮山の3会場を結んだリモート講演会でもあった。
Covid-19禍での新しいイベントの形ってこういうことなんだなぁって
なんとなく肌で感じることができたかも。
以前よりは入場手続きにちょっと時間もかかるけれど
でも、これはこれで悪くないと思ったし、
工夫次第でなんとかできることの方が多いんだなって改めて思う。
体育会系開会の儀や来賓あいさつなんかを経ていよいよ三谷さん登壇。
出てきた瞬間からユーモア炸裂。
私は新撰組も真田丸も観ていないし
そのほかの三谷作品もほんの少し知っているくらいだけれど、
そんな私が想像していた遥か上をいくユーモアの幅だった。
大河ドラマにも、日本の歴史にもさして興味を持たなかったし
物書きになりたいという夢を途中で捨て去った私と違って
三谷氏は10歳の頃に観た大河ドラマがきっかけで歴史が好きになり、
いつか自分でこういう作品を書いてみたいと思って
それをきちんと生業にしている。
講演会の内容は
ご自身が影響を受けた大河ドラマのエピソードを交えた自己紹介から始まり
これまでに手掛けた2つの大河ドラマの話し、
そして現在執筆中の3つ目の大河ドラマの裏話まで。
新選組も真田丸も負け組へのシンパシーを表現した作品で
負けてゆく多くの人々への共感を描いたけれど、
北条義時(鎌倉殿の13人)はどちらかといえば勝ち組。
しかし、本当の意味で彼が「勝った」のかというところを描きたいって。
平安末期のイメージが湧かないので書く作業はとても難しいとも。
石橋山は海から離れているのに、落ちている石が丸みを帯びているのは
当時の山中での戦い方が石飛礫の投げ合いだったからだとか、
貨幣は流通していなくて物々交換が主流だったので
戦勝報酬でいくら授けるという表現ができないとか、
どの時代よりももっともっと神が近い存在で
戦いの日取りも神託によるところが大きかったとか。
三谷さんのお話の中であぁと思ったのは
ピンチを切り抜けるヒントは歴史の中に必ずあると仰った時。
それは吉川さんがかつてどうしようもなく追い詰められたときに
三国志の中に答えを探し求めたエピソードに
とてもよく似ていたから。
我々はまだまだ歴史から学べることがたくさんあるんだろうね。
講演の後の質疑応答も新しい形での取り組みで
申し込み時に記載した質問の中から運営側が事前に選択してあって
小田原と鎌倉の会場からも質問がされたり。
それでも時間が余ったので、韮山会場から追加で数人質問ができて
期末テストを終えたばかりの学生の
覚えることばっかりで歴史が苦手になりそうだけど、
どうすれば覚えられるかという学生らしい質問に対して
三谷氏が
どうせ簡単に調べられるんだから年号も固有名詞も覚える必要なんかないし
成績が落ちたって気にしなくていい。
年号なんかより歴史を学ぶうえでもっと大切なのは、因果だ。
何が原因でそうなったのかという大きな流れを掴むことが重要なんだって
答えていて、素敵だなぁって思った。
それに対して学生が
成績が落ちるのは困るけれど、先生にはそう伝えていこうと思います
と切り返したのもイカしているなと思った。
三谷さんのユーモアとか歴史との向き合い方も含めてひととなりを
知ることができたのはもちろん大きな収穫だったし
イベント全体を通して
Covid-19禍だからこそできることを探し、
そこに楽しみを見つけていこうという雰囲気があって
それだけでもなんか行って良かったな。
開会の儀で三島青年会議所理事長(たぶん)が
Covid-19禍で何をやっても、やらなくても
どっちにしても賛否両論、議論が起こるような状況で
それならやらないよりはやった方がいい。
行動しなければ議論さえも起こらないのだからと
力強く発言されていて、
なんかこの半年近くでそんな言葉を聞いていなかったので、
ハッとさせられた。
なんか知らず知らずに小さくまとまりかけていたのかも、私。