不埒な天国 ~Il paradiso irragionevole

道理だけでは進めない世界で、じたばたした生き様を晒すのも一興

Giardino di Ninfa

2011-05-10 23:32:00 | アート・文化

Giardino di Ninfa(妖精の庭園)は
2000年からラツィオ州の州定自然文化財に指定されています。

ニンファ川を中心に広がる独特の動植物生育環境をもつ
ある意味外界から隔離された楽園の様相を呈しています。
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最も古く植樹されたバラの一つ、Kiftsgateが茂る廃墟。

既に古代ローマの時代には
現在の庭園のある場所に
美しい湧水に棲むと伝えられるギリシャの神
Naiade (ナイアス)をまつる神殿が建てられるほど
その水の美しさは知られていたようです。

ローマ周辺はその昔、広い湿地帯で
今も残るアッピア街道周辺も湿原に覆われていて
8-9世紀頃には
南イタリアとローマを繋ぐ交易の道は
Monti Lepini(レピニ山)の麓に伸びる道だけでした。
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切り立つ岩肌のレピニ山。

その道沿いに広がるニンファ川周辺地域は
重要な交易の基点として
人とモノそして金が集まる場所になり
次第にローマの実力者や教会の注目を浴びるようになります。

8世紀Costantino V(コンスタンティヌス5世)が
わずかな住民を数えるだけだったこの肥沃な土地の管理を
教皇庁に許可し、
11世紀には都市としての機能を持つようになります。
教皇と繋がりのある家系が支配権を交代し
Frangipane(フランジパーネ家)の時代に都市建築が確立し
政治経済の基盤が築かれました。
1159年にはローマ皇帝Federico Barbarossa
(フェデリコ・バルバロッサ)に追われて
Rolando(ローランド枢機卿)が流れ着き
街のChiesa di Santa Maria Maggiore
(サンタ・マリア・マッジョーレ教会)で
Alessandro III(教皇アレッサンドロ3世)として就任。
これに復讐するべくバルバロッサが略奪行為を行うなど、
長い歴史の中で度々掠奪が繰り返されています。

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廃墟と化したサンタ・マリア・マッジョーレ教会。
元々この街には7つの教会があったそうで
庭園内にはその残骸に植物が絡み付いていたりします。

1294年にCaetani(カエターニ家)から
BonifacioVIII(教皇ボニファティウス8世)が出ると
1298年には甥を援助してカエターニ家が
ニンファ川周辺の統治権を獲得するも
1382年Onotato Caetani(オノラート・カエター二)によって
掠奪破壊されたあとは周辺地域に蔓延したマラリアの影響で
再建されることなくやがて放置されます。

16世紀になって、
Niccolo III Caetani(カエターニのニコロ3世)がこの地に戻り、
植物学に詳しかった彼が庭園建築に着手します。
庭園設計はFrancesco da Volterra
(フランチェスコ・ダ・ヴォルテッラ)に任せられ、
フランジパーネの時代の建築物の廃墟の壁を再利用して
小さな庭園が完成します。
これが現在もニンファ庭園の一部として残る
Hortus Conclususで
当時は珍しい柑橘類が栽培され、
アフリカ産のマスなどが養殖されていたそうですが
ニコロ3世の死と共にこれもやがて放置されてしまいます。
17世紀になって再びカエターニ家によって
庭園の再建築が試みられましたが、
やがてマラリアの蔓延で敢えなく放置され
1800年代はすっかり忘れ去られていました。

1800年代終わりになって
カエターニ家の末裔であるAda Bootle Wilbrahamが
息子たち(Gelasio, Roffredo)を連れて戻り、
イギリス庭園の形を継承するニンファ庭園を整備します。
Roffredo(ロッフレード)の妻となった
Marguerite Chapinが庭園の手入れを続け、
二人の娘であるLelia(レリア)に継承。
彼女は庭園を一つの絵画作品のようにとらえて
色彩をちりばめ
また生態系を重視して
化学肥料をいっさい使わないスタイルを確立します。
カエターニ家の最後の継承者となったレリアは
1977年に亡くなるときに
ロッフレード・カエターニ財団を設立し
ニンファ庭園の継続を決め、その運営を委託しています。

現在8ヘクタールの広さを誇るニンファ庭園では
日本のサクラ、モミジなどをはじめ
ヒマラヤ原産のタイサンボクや熱帯性のバナナなども含め
1300種以上の植物が植えられ、100種類以上の鳥類も棲息。
現在も化学肥料を使わず、
自然の法則に従って、独自の生態系を護り続けています。
その状態を保持するために
一般公開も4月から10月までの年間20回ほどに限られており、
入場は必ずガイド付きのグループ見学となります。

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Giardino di Ninfa
アクセス方法:
ローマからLatina Scaloまで列車で約30分、
Latina Scalo駅からタクシーで15分
2011年開園日:
5月15・22日
6月2・4・5・19日
7月2・3日
8月6・7・15日
9月3・4日
10月1・2日
11月6日(特別開園)
入園料:
Giardino di Ninfa 10,00ユーロ
Hortus Conclusus 2,00ユーロ

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それぞれの写真の注釈は
そのうち気が向いたらつけることにします(笑)。