イタリア・マニエリスムの代表的な画家で
メディチ家のコジモ1世の宮廷お抱え画家として
寵愛されたBronzino(ブロンツィーノ)。
彼のモノグラフィー展が
フィレンツェのPalazzo Strozzi(ストロッツィ宮殿)で
9月から予定されていますが、
この展覧会に向けて彼の3つの作品の修復作業が
現在急ピッチで進められています。
ブカレストの美術館から運ばれてきた作品は
「Venere, Cupido, due amorini e la Gelosia」
ニースから運ばれたのは最近彼の作品と認定された
「Cristo Crocifisso」
ウフィツィ美術館保管庫からは
「Doppio ritratto del nano Morgante」。
この3点は彼の作品や
影響を受けた画家や弟子たちの作品合わせて
56点を集めるモノグラフィー展の目玉作品となるようです。
「Cristo Crocifisso」は長く作者不定となっていましたが
近年の研究で描かれるキリストの彫塑的ポーズに
ブロンツィーノの特徴が確認できるとして
Giorgio Vasari(ジョルジョ・ヴァザーリ)が記録に残していた
Bartolomeo Panciatichi(バルトロメオ・パンチャティキ)が
望んで依頼したといわれる
「キリスト磔刑」であることも確定されました。
ヴァザーリの記録によると
この作品を制作したときにはブロンツィーノは
十字架にかけられた本物の死体を見て
正確に表現しているのだそうです。
ブカレストから運ばれてきた「ヴィーナスの寓意」は
複数回の上描きがされていることに加え
ベースの木材の損傷も激しく、
どの程度の修復が必要となるか未定。
おそらく展覧会までに表面の大方の修復を終了し
さらに展覧会終了後に
大掛かりなベースの修復を続けることになるといわれています。
ボボリ庭園の外れに置かれていて絵葉書にもなっているので
見かけたことがある方も多いかもしれないMorgante。
ルネッサンス期のヨーロッパの宮廷ではこうした小人が
まるで南国の見知らぬ動物と同じくらいの
好奇心で重宝されていました。
メディチ家の宮廷にも
何人か道化や詩吟を行う小人がいたとされ
その中でもコジモ1世の時代に
特に有名で愛されたのがモルガンテだといわれています。
ブロンツィーノはモルガンテをバッカスになぞらえて
肖像画を描いたのですが、
珍しく1枚の板絵の裏表に前面と背面が描かれて
2重肖像となっています。
これまでウフィツィ美術館管轄の倉庫に眠っていたので
今回の修復・展覧会で日の目を見ることになりそうです。