生きていると、あまりに感動して、言葉にならない、という出来事が、たまにある。
昨晩のコンサートがまさにそれだった。
私は、コンサート評をもう書かないときめていたけど、
本当にあまりによくて、感激して、泣いたコンサートだったので、
書いておこうと思います。
昨年の2月28日、私は仙台にいた。
ラ・フォル・ジュルネで、ショパンを弾くため、次々コンクールをうけていたのだった。
アールンピアノコンクールの予選・本選と進み、
曲をバラード1番から2番に変え、2週間もなく仕上がらないまま入ったエリア大会の仙台だった。
ホールに行ったら、小ホールというのがあり、
9時から3時まで、ぎりぎりまでねばって弾き続け、ふらふらになって出た舞台で、
思いもかけず、たくさんの拍手をいただき、奇跡的に合格し、全国大会が決定した。
仙台駅前のビジネスホテルにもどると、TVのニュースが大変なことになっていた。
その日は、あのチリ大地震の津波が、東北地方を襲った日で、
ついさっきまでコンクールをしていたホールが、付近の住民の方の避難場所になっていたのだ。
その地域は、若林地区の方達だった・・・
今回の大震災の津波のニュースを知った時、
私はショック状態に陥り、リサイタル前にもかかわらず、ピアノが弾けなくなってしまった。
今回のコンサートの事がOEKのホームページにのっていた。
このコンサートは、石川県の知事さん、谷本さんや、井上さんが発起人になり、
演奏活動の中止を余儀なくされた仙台フィルの方々とOEKとの合同特別コンサート。
入場料収入から公演経費を除いた全額を被災された方々への資金として、
仙台フィルに預託するそうだ。
指揮者の山下一史さんの悲痛なコメントがのっていた。
震災後、団員の方々の生活もままならず、6月までの定期が全部中止になったそうだ。
私は、いてもたってもいられず、金沢駅で、諸江屋の’はなうさぎ’っていうかわいい落雁(らくがん)を、団員の方々分買って(ちっちゃいけどおいいしんですよ!元気になる!)
県立音楽堂に走った。
プレ・コンサートはいつもききに行ってますサックスの筒井さんとハープの上田さん、ピアノの堺先生。
昨年の新人登竜門コンサートの角口さんのコンサートの案内があり、筒井先生の福島から非難されたお母さんの事をきいていた。
とてもいいプレコンサートでした!
コンサートホールでは、最初に、慰霊のため、バッハが演奏され、
仙台フィルと合同のプログラムが始まった。
安永さんがトップだ。
グリンカの歌劇「ルスランとリュドミラ」の序曲、シューベルトの「ロザムンデ」間奏曲、
そして、シベリウスの「フィンランディア」!
ヤマハの講師生活最後の年に、生徒20人くらいのエレクトーンと、仲良しの講師のティンパニーで、スコアをまっくろにして頑張った曲。
音楽堂できけると思ってなかった!
山下さんは、力強く、堂々として、整然としたパワーにみなぎるフィンランディアを演奏された。
仙台フィルの皆さん、ものすごく綺麗な音ですね。感激です。
透明な、流れるような弦の流れと、かっちりとしまった木管、金管、パーカッション、すばらしいです!
休憩をはさんで、ドヴォルザークの「新世界より」
この曲もスコアももってて大好き!
指揮は井上さんで、ここに欲しいと思う時に欲しい音が来る、しかもバランスが完璧。
どこもかしこも、完璧に成り立っていて、素晴らしい音色、弦が流れて、ドーンと重厚なブラスが重なる。
流れもバランスも最高。
完全な「新世界」だった!すばらしくいい演奏。ブラボー!!
アンコールはOEKトップで、井上さん指揮で「利家とまつ」きゃー!豪華バージョン
今度は、SPOトップで、もしかしたら・・・とおもってたら、山下さん指揮で、
「独眼竜正宗」!うわーなつかしい~
独眼竜は、その当時はまってしまって(大学のあとだな?)
ちょうどNHKの見学コースにアナの伯父に連れて行ってもらって、
正宗の衣装の渡辺 謙さんと握手できたのだ!ああ謙さん・・・
そういえば謙さんも被災地訪問されてましたねえ。
仙台フィルの独眼竜は、本当に竜のようで、ものすごい音の渦の竜巻みたいな演奏でした。
ボルテージも最高!井上さんと山下さんが、手を組み合って舞台上に。
ブラボーの嵐の中、観客の方々が、歩きながら舞台下にあつまってきた!
私も前から2番目だったので、一緒に手をたたき続ける。
皆、口ぐちに「がんばれ!負けるな!」と大きい声で伝える。
こんなの初めてだ!舞台の上で、「石川の皆さんありがとう」という垂れ幕をもって答える
SPOの方達。
目には涙。私も、涙でぐしゃぐしゃだ。
そのままの流れで、廊下にでたら、ちょうど山下さんがでてこられた。
私はすぐに「バスの中で、皆さんでたべてください!」と落雁をお渡しし、
少しの間山下さんとならんで廊下を歩いた。
「こんな本格的なコンサートは、震災後初めてです。
私達がやらなきゃいけないことはこれなんだ!」
山下さんの、目にも大きな涙が光っていた。
私はもうぐしゅぐしゅで「本当によかったです。またいらして下さい」というのが精いっぱい。
ロビーでは、金沢の観客の方達とSPOの団員のかたとが握手をし、「がんばってください。また来て下さい」
と、皆、口々に伝え、手を握り合っていた。
音楽はすばらしい、という言葉で表現できないほどの感動。
是非、また、仙台フィルの方々とのコンサートを!
この忘れられないコンサートを再びお願いします!