Red Sparrow -AKASUZUME-
第八話『交差する思い』
戦闘終了からおよそ半日たった昼頃、ソフィリアは議会場の時計台の屋根にいた。
彼女の服装はまだ『任務』のときに着る黒装束のままだった。
街の空は不気味な厚い雲に覆われていて、今にも雨が降り出しそうだった。
彼女は先ほどの戦闘で割れた自分の仮面を取り出し、眺めていた。が、しばらくして手でバラバラに砕いた。
もうこの仮面は使い物にならないし、別の仮面がまだあるから別にいらない、彼女はそう思いながら砕いた。
砕かれた仮面の破片は、屋根を転がって下に落ちていく。今議会場は無人だから、破片に当たる人はいない。
彼女は仮面を砕き終えると、彼女は空を見ながら自分が今まで殺したAAのことを思い返してみた。
恐怖に顔を歪め、一突きで簡単に死んでいった単なる標的。
今まで殺したAAは、どの人間もその顔に恐怖を浮かべていた。私はそれを気にする事もなく殺した。
どんな敵であれ、情けは不要。それは生死の境目にいる私にとって当然の事だった。
どんなに親しい友人であっても、一瞬でも気を抜けば彼らに殺される。だから何も考えずに殺してきた。
それなのに、何であの人だけは一瞬躊躇してしまったの?彼女は心に叫ぶ。
あの人は私にとって単なる標的のはずなのに、何で殺したくないなんて思ってしまうの?
あの人は私の敵なのに!私を殺そうとしているのに!彼女は頭を抱えた。
・・・正直に言えば、私は彼を殺したくない。でも、殺さなければ私が殺される。
殺さなければいけない存在なんだってわかってるのに・・・。
・・・。彼女はふと思い出した。彼女の過去の日々を・・・
今から7,8年ほど前。仮想空間のエリア149という場所で民族紛争が勃発した。発端は独立宣言だった。
エリア149は仮想空間治安維持軍の管理下から離れ、独立国家として道を歩む。支配者はそう宣言した。
当然のごとく、軍はそれに対し部隊を派遣し、独立軍と称する反乱軍を鎮圧することを決定した。
そして独立軍は住民が国外退去するのも許さず、男は即戦力として、女子供は銃後で
ほぼ勝ち目のない戦に狩り出された。逆らう者は民衆の前に引きずり出されては、目の前で虐殺された。
そんな独立軍に、治安維持軍は容赦なく攻撃を加えた。建物という建物を破壊し、
戦闘員と思われる人間は姿を見せただけで射殺した。
ソフィリアの父親もまた、ヘリに搭乗しようとした際にロケット弾の直撃を受けて即死した。
しかしそんな状況でも独立軍は戦いをやめようとしなかった。戦える男がいなくなると、
今度は女性たちをも戦闘に狩り出した。今にもジャム(弾詰まり)しそうな銃を渡され、
混乱して気持ちのいい状態になる薬を嗅がされて、女性たちは笑いながら突っ込んでいった。
ソフィリアの母親も、同じようにそうやって行方がわからなくなった。そして彼女は一人になった。
その数日後、独立軍の司令官は部下に殺され、紛争はあまりにもあっけない幕切れを迎えた。
しかし、苦しい生活が始まったのはそれからだった。無政府状態になったエリア149には配給もなく、
必要な物はすべて、持っている人間から力づくで奪い取らなければならなかった。
ソフィリアにとってもそれは同じことだった。彼女は古くからの知り合いと組み、強奪をして生活した。
時には相手を殺して奪うこともあった。だが、そうしてまでも生きたかった。
・・・しばらくして、知り合いは死んだ。ほかの仲間と組んで盗みをやったとき、軍人に殺されたそうだ。
だからといって、奪い取ることをやめるわけにはいかない。その後も彼女は人から奪って生きていた。
そんな生活だったが、ある時『あの人』との出会いで変わった。その人は治安維持軍の兵士だった。
その日、ソフィリアが食糧輸送車を狙って車内に忍び込んだとき、独立軍の残党が治安維持郡と戦闘になった。
彼女は輸送車の中で息を殺して隠れた。独立軍と治安維持軍、どちらに見つかっても殺されるからだ。
銃声や叫び声、爆発音などが止むことなく聞こえてきた。彼女は食料コンテナの陰に隠れた。
しばらく戦闘音が続いた後、急に静かになった。彼女はコンテナの陰から外の様子をうかがった。
彼女から見える範囲内には、人影はなかった。彼女は音を立てないようにしてゆっくりと外に出た。
次の瞬間、彼女は背後から銃を突きつけられた。前からも数人の男が近寄ってきた。
「お前・・・一体ここで何をしてる?俺たちをつけてるのか?」
リーダーらしき男は太い声でそう言った。彼女は恐怖で声を出せなかった。
「おい、こいつ殺すか?」
「当然だ。後で軍の連中に言いつけるかも知れねえ」
男たちは二言三言話し合うと、彼女のこめかみに銃を突きつけた。そしてゆっくりと撃鉄を引き起こした。
「動くなよ。すぐに楽になるからな」
背後の男は彼女の耳元でそうささやいた。その言葉に彼女はいっそう震えあがった。
そしてリーダーらしき男が軽くうなずいて命令した瞬間、その男の頭が破裂した。
そしてやや遅れて銃声が聞こえ、数人の兵士が飛び出してきた。
背後の男も銃口を彼女から離して構えようとした瞬間、胴体を蜂の巣にされた。
残党全員が動かなくなり、兵士の小銃の銃声が止むまでわずか数秒の出来事だった。
周囲に転がった残党の男たちの中心で、彼女は立ちすくんでいた。と、兵士の後ろから一人の将校が現れた。
彼は彼女の姿を確認すると、すぐに部下に何か命令を出した。そしてその将校は彼女に近寄った。
彼女はあわてて一歩後ずさった。が、その将校は笑いながら、彼女に携帯食料を手渡した。
数日間食べ物を口にしていない彼女はもちろん、とてもお腹が減っていたので、それをすぐに平らげた。
その様子をそばで見ながら、その将校は良心的に微笑んでいた。
「親は・・・殺されたのかね?」
将校は携帯食料を食べ終わった彼女に、ためらいがちに言った。彼女はゆっくりとうなずいた。
「・・・そうか。頼る親戚はいないのかね?」
彼女はその質問に、再びうなずいた。すると将校は兵士の一人を呼んでこう言った。
「この子の健康状態はかなり悪い。軍の方で保護することにするぞ」
兵士は了解と言って敬礼し、すぐに無線機で連絡を取った。その間に将校は彼女の薄着の上に自分の軍服を羽織らせた。
数分後、横に紅い十字架の描かれたヘリコプターが着陸した。彼女は将校と一緒にヘリに乗った。
その後、彼女は軍の本部で保護され、しばらくの間軍の保護院で生活した。院の人間は優しかったし、
何よりも毎日の食事と寝床が確実にある、という事だけでも彼女はうれしかった。
将校はあの後もときどき面会に来た。その時には、必ず彼女のために何かをプレゼントとして持って来た。
それは時におもちゃだったり、あるいは音楽の入ったCDだったりしたが、彼女はいつも楽しみにしていた。
数年間の保護院での生活の後は、その将校に引き取られた。そして将校は軍を辞め、会社を始めた。
そして彼女は将校のために働く事を決めたのだ。その手を血で汚し手でも、彼女は将校の役に立とうと決めた。
その後は、将校にとって不利になるような情報を掴んだ人物を殺し、彼を守ってきた。
それが、彼女を救ってくれた彼への、彼女なりの恩返しなのだ。
だが、今回は殺さなければならない相手を二度も殺しそこね、さらに一瞬躊躇してしまった。
殺すべき相手が、ドネットと名乗ったあの人物だからなのだろうか。
彼女はそこで考えるのをやめた。というのもあの人物の気配を感じたからだった。
「・・・彼らは誘いに乗ってくると思うか?」
その声の主は、仮面を被ったあの男だった。彼女はひとこと、
「おそらく」
と答えて黙り込んだ。
「珍しいな、今まで冷酷に標的を消してきた貴様が悩んでいるとは」
男はやや笑いながらそう言い、彼女の傍に腰掛けた。彼女は一瞬横目に彼を見た。
「だが殺しに悩みは不要だ。悩みは己を死に導く。わかっているな?」
「・・・」
「貴様は悩むことなく目の前の敵を葬ればいい。それがあの方の命令だ」
彼がそう言うと、彼女は静かに答えた。
「・・・了解」
「よろしい。次に奴らと会うときは、必ず殺せ。いいな」
男は『殺せ』を強調して言うと、次の瞬間にはそこからいなくなっていた。
彼女は立ち上がると、遠くを見ながらつぶやいた。
「標的は必ず殺す。それが任務・・・」
暗い空から雨が降り注ぐ中、彼女はずっとそこに立っていた。
場所は変わって、紅の家。俺は自分の携帯端末で、レモン屋の送ってきた情報を閲覧していた。
今のところは『星の中心』について関係する情報はまったく見つかっていなかった。
おそらくこのままわからないままではさらに被害者が増えるだろう。また被害者が出ないうちに
この言葉の示すものを突き止めなくては。俺はそうやって幾つものファイルを開いていった。
一方紅は、俺が頼んだ刀を作っているらしい。家の中の作業場から刀を打つ音が途切れる事なく聞こえていた。
ドネットはというと、事件現場の位置を見ながら、何かを考えているようだ。
まあ、そんな事を見ている場合ではないので、俺はすぐに端末へと目を戻した。
数時間ほど経っただろうか。突然ドネットが「あっ!」と叫んだ。
「どうしたドネット?いきなり大声なんか出して」
「この図を見てください!第一の事件現場から順に現場の位置を直線で結ぶんです!」
「どれどれ・・・」
俺はそう言いながら彼の見せた地図にペンで線を引いた。第一現場から第二現場。
第二現場から第三現場というように次々と直線を引いていった。
「最後に第五現場と第一現場を直線で結ぶと、ほら!星の形になるんですよ!」
彼は興奮しながらそう言って街の地図の上に現れた大きな星印を指し示した。
「そんなバカな事ってあるのか・・・?」
俺は思わずつぶやいていた。そんな冗談みたいな事があるとは。
しかし、これで星が見つかったわけだ。俺はその星の中心を見た。ここが決戦の地か。
「これで『星の中心』の意味がやっとわかりましたね・・・」
「ああ」
俺はそう答えるしかなかった。
次回予告
『星の中心』に集まった二つの力。
一つは大事なものを守るために。もう一つは破壊するために。
次回『星の中心で』
もう、この戦いで終わらせる。
作者の勝手にひとこと(仮)
はい、ついにRed Sparrow略してRSもついに大詰めを迎えました。
よくここまで書けたな、という感じですよ、マジで。
何しろ俺は挫折して書けなくなるのが普通だから。
もうホントこれはみんなが批評してくれるおかげだと思ってる。
そしてアドバイスしてくれる事で、がんばる力が湧いてくる。
ありがとうみんな!まだまだ俺は書き続けるぞ!
というわけで今日もまたトピックをひとつ。
今回は一番気に入っているキャラについて。
この小説にでてくる人のほとんどはチャット友達のハンドルネームです。
しかし、ドネットやソフィリアといった人物はオリジナルです。
俺的に一番気に入ってるのはドネットですね。
おそらくaaaよりも現実の俺に近い感じのキャラ(え
そんでもってaaaは俺の理想かな?
まあ今回はこの辺で。では次回でお会いしましょう!
よかったら押していってね♪(ソフィリア)
日記@BlogRanking
第八話『交差する思い』
戦闘終了からおよそ半日たった昼頃、ソフィリアは議会場の時計台の屋根にいた。
彼女の服装はまだ『任務』のときに着る黒装束のままだった。
街の空は不気味な厚い雲に覆われていて、今にも雨が降り出しそうだった。
彼女は先ほどの戦闘で割れた自分の仮面を取り出し、眺めていた。が、しばらくして手でバラバラに砕いた。
もうこの仮面は使い物にならないし、別の仮面がまだあるから別にいらない、彼女はそう思いながら砕いた。
砕かれた仮面の破片は、屋根を転がって下に落ちていく。今議会場は無人だから、破片に当たる人はいない。
彼女は仮面を砕き終えると、彼女は空を見ながら自分が今まで殺したAAのことを思い返してみた。
恐怖に顔を歪め、一突きで簡単に死んでいった単なる標的。
今まで殺したAAは、どの人間もその顔に恐怖を浮かべていた。私はそれを気にする事もなく殺した。
どんな敵であれ、情けは不要。それは生死の境目にいる私にとって当然の事だった。
どんなに親しい友人であっても、一瞬でも気を抜けば彼らに殺される。だから何も考えずに殺してきた。
それなのに、何であの人だけは一瞬躊躇してしまったの?彼女は心に叫ぶ。
あの人は私にとって単なる標的のはずなのに、何で殺したくないなんて思ってしまうの?
あの人は私の敵なのに!私を殺そうとしているのに!彼女は頭を抱えた。
・・・正直に言えば、私は彼を殺したくない。でも、殺さなければ私が殺される。
殺さなければいけない存在なんだってわかってるのに・・・。
・・・。彼女はふと思い出した。彼女の過去の日々を・・・
今から7,8年ほど前。仮想空間のエリア149という場所で民族紛争が勃発した。発端は独立宣言だった。
エリア149は仮想空間治安維持軍の管理下から離れ、独立国家として道を歩む。支配者はそう宣言した。
当然のごとく、軍はそれに対し部隊を派遣し、独立軍と称する反乱軍を鎮圧することを決定した。
そして独立軍は住民が国外退去するのも許さず、男は即戦力として、女子供は銃後で
ほぼ勝ち目のない戦に狩り出された。逆らう者は民衆の前に引きずり出されては、目の前で虐殺された。
そんな独立軍に、治安維持軍は容赦なく攻撃を加えた。建物という建物を破壊し、
戦闘員と思われる人間は姿を見せただけで射殺した。
ソフィリアの父親もまた、ヘリに搭乗しようとした際にロケット弾の直撃を受けて即死した。
しかしそんな状況でも独立軍は戦いをやめようとしなかった。戦える男がいなくなると、
今度は女性たちをも戦闘に狩り出した。今にもジャム(弾詰まり)しそうな銃を渡され、
混乱して気持ちのいい状態になる薬を嗅がされて、女性たちは笑いながら突っ込んでいった。
ソフィリアの母親も、同じようにそうやって行方がわからなくなった。そして彼女は一人になった。
その数日後、独立軍の司令官は部下に殺され、紛争はあまりにもあっけない幕切れを迎えた。
しかし、苦しい生活が始まったのはそれからだった。無政府状態になったエリア149には配給もなく、
必要な物はすべて、持っている人間から力づくで奪い取らなければならなかった。
ソフィリアにとってもそれは同じことだった。彼女は古くからの知り合いと組み、強奪をして生活した。
時には相手を殺して奪うこともあった。だが、そうしてまでも生きたかった。
・・・しばらくして、知り合いは死んだ。ほかの仲間と組んで盗みをやったとき、軍人に殺されたそうだ。
だからといって、奪い取ることをやめるわけにはいかない。その後も彼女は人から奪って生きていた。
そんな生活だったが、ある時『あの人』との出会いで変わった。その人は治安維持軍の兵士だった。
その日、ソフィリアが食糧輸送車を狙って車内に忍び込んだとき、独立軍の残党が治安維持郡と戦闘になった。
彼女は輸送車の中で息を殺して隠れた。独立軍と治安維持軍、どちらに見つかっても殺されるからだ。
銃声や叫び声、爆発音などが止むことなく聞こえてきた。彼女は食料コンテナの陰に隠れた。
しばらく戦闘音が続いた後、急に静かになった。彼女はコンテナの陰から外の様子をうかがった。
彼女から見える範囲内には、人影はなかった。彼女は音を立てないようにしてゆっくりと外に出た。
次の瞬間、彼女は背後から銃を突きつけられた。前からも数人の男が近寄ってきた。
「お前・・・一体ここで何をしてる?俺たちをつけてるのか?」
リーダーらしき男は太い声でそう言った。彼女は恐怖で声を出せなかった。
「おい、こいつ殺すか?」
「当然だ。後で軍の連中に言いつけるかも知れねえ」
男たちは二言三言話し合うと、彼女のこめかみに銃を突きつけた。そしてゆっくりと撃鉄を引き起こした。
「動くなよ。すぐに楽になるからな」
背後の男は彼女の耳元でそうささやいた。その言葉に彼女はいっそう震えあがった。
そしてリーダーらしき男が軽くうなずいて命令した瞬間、その男の頭が破裂した。
そしてやや遅れて銃声が聞こえ、数人の兵士が飛び出してきた。
背後の男も銃口を彼女から離して構えようとした瞬間、胴体を蜂の巣にされた。
残党全員が動かなくなり、兵士の小銃の銃声が止むまでわずか数秒の出来事だった。
周囲に転がった残党の男たちの中心で、彼女は立ちすくんでいた。と、兵士の後ろから一人の将校が現れた。
彼は彼女の姿を確認すると、すぐに部下に何か命令を出した。そしてその将校は彼女に近寄った。
彼女はあわてて一歩後ずさった。が、その将校は笑いながら、彼女に携帯食料を手渡した。
数日間食べ物を口にしていない彼女はもちろん、とてもお腹が減っていたので、それをすぐに平らげた。
その様子をそばで見ながら、その将校は良心的に微笑んでいた。
「親は・・・殺されたのかね?」
将校は携帯食料を食べ終わった彼女に、ためらいがちに言った。彼女はゆっくりとうなずいた。
「・・・そうか。頼る親戚はいないのかね?」
彼女はその質問に、再びうなずいた。すると将校は兵士の一人を呼んでこう言った。
「この子の健康状態はかなり悪い。軍の方で保護することにするぞ」
兵士は了解と言って敬礼し、すぐに無線機で連絡を取った。その間に将校は彼女の薄着の上に自分の軍服を羽織らせた。
数分後、横に紅い十字架の描かれたヘリコプターが着陸した。彼女は将校と一緒にヘリに乗った。
その後、彼女は軍の本部で保護され、しばらくの間軍の保護院で生活した。院の人間は優しかったし、
何よりも毎日の食事と寝床が確実にある、という事だけでも彼女はうれしかった。
将校はあの後もときどき面会に来た。その時には、必ず彼女のために何かをプレゼントとして持って来た。
それは時におもちゃだったり、あるいは音楽の入ったCDだったりしたが、彼女はいつも楽しみにしていた。
数年間の保護院での生活の後は、その将校に引き取られた。そして将校は軍を辞め、会社を始めた。
そして彼女は将校のために働く事を決めたのだ。その手を血で汚し手でも、彼女は将校の役に立とうと決めた。
その後は、将校にとって不利になるような情報を掴んだ人物を殺し、彼を守ってきた。
それが、彼女を救ってくれた彼への、彼女なりの恩返しなのだ。
だが、今回は殺さなければならない相手を二度も殺しそこね、さらに一瞬躊躇してしまった。
殺すべき相手が、ドネットと名乗ったあの人物だからなのだろうか。
彼女はそこで考えるのをやめた。というのもあの人物の気配を感じたからだった。
「・・・彼らは誘いに乗ってくると思うか?」
その声の主は、仮面を被ったあの男だった。彼女はひとこと、
「おそらく」
と答えて黙り込んだ。
「珍しいな、今まで冷酷に標的を消してきた貴様が悩んでいるとは」
男はやや笑いながらそう言い、彼女の傍に腰掛けた。彼女は一瞬横目に彼を見た。
「だが殺しに悩みは不要だ。悩みは己を死に導く。わかっているな?」
「・・・」
「貴様は悩むことなく目の前の敵を葬ればいい。それがあの方の命令だ」
彼がそう言うと、彼女は静かに答えた。
「・・・了解」
「よろしい。次に奴らと会うときは、必ず殺せ。いいな」
男は『殺せ』を強調して言うと、次の瞬間にはそこからいなくなっていた。
彼女は立ち上がると、遠くを見ながらつぶやいた。
「標的は必ず殺す。それが任務・・・」
暗い空から雨が降り注ぐ中、彼女はずっとそこに立っていた。
場所は変わって、紅の家。俺は自分の携帯端末で、レモン屋の送ってきた情報を閲覧していた。
今のところは『星の中心』について関係する情報はまったく見つかっていなかった。
おそらくこのままわからないままではさらに被害者が増えるだろう。また被害者が出ないうちに
この言葉の示すものを突き止めなくては。俺はそうやって幾つものファイルを開いていった。
一方紅は、俺が頼んだ刀を作っているらしい。家の中の作業場から刀を打つ音が途切れる事なく聞こえていた。
ドネットはというと、事件現場の位置を見ながら、何かを考えているようだ。
まあ、そんな事を見ている場合ではないので、俺はすぐに端末へと目を戻した。
数時間ほど経っただろうか。突然ドネットが「あっ!」と叫んだ。
「どうしたドネット?いきなり大声なんか出して」
「この図を見てください!第一の事件現場から順に現場の位置を直線で結ぶんです!」
「どれどれ・・・」
俺はそう言いながら彼の見せた地図にペンで線を引いた。第一現場から第二現場。
第二現場から第三現場というように次々と直線を引いていった。
「最後に第五現場と第一現場を直線で結ぶと、ほら!星の形になるんですよ!」
彼は興奮しながらそう言って街の地図の上に現れた大きな星印を指し示した。
「そんなバカな事ってあるのか・・・?」
俺は思わずつぶやいていた。そんな冗談みたいな事があるとは。
しかし、これで星が見つかったわけだ。俺はその星の中心を見た。ここが決戦の地か。
「これで『星の中心』の意味がやっとわかりましたね・・・」
「ああ」
俺はそう答えるしかなかった。
次回予告
『星の中心』に集まった二つの力。
一つは大事なものを守るために。もう一つは破壊するために。
次回『星の中心で』
もう、この戦いで終わらせる。
作者の勝手にひとこと(仮)
はい、ついにRed Sparrow略してRSもついに大詰めを迎えました。
よくここまで書けたな、という感じですよ、マジで。
何しろ俺は挫折して書けなくなるのが普通だから。
もうホントこれはみんなが批評してくれるおかげだと思ってる。
そしてアドバイスしてくれる事で、がんばる力が湧いてくる。
ありがとうみんな!まだまだ俺は書き続けるぞ!
というわけで今日もまたトピックをひとつ。
今回は一番気に入っているキャラについて。
この小説にでてくる人のほとんどはチャット友達のハンドルネームです。
しかし、ドネットやソフィリアといった人物はオリジナルです。
俺的に一番気に入ってるのはドネットですね。
おそらくaaaよりも現実の俺に近い感じのキャラ(え
そんでもってaaaは俺の理想かな?
まあ今回はこの辺で。では次回でお会いしましょう!
よかったら押していってね♪(ソフィリア)
日記@BlogRanking