のやま亭の前の道を、ずっと左に歩いていき、堤防を越えてさらに突き当たる道が川原町だ。ここには格子戸の昔ながらの街並みが残されているというので、歩いてきてみた。確かにここも風情ある町並みだったけれども、私はむしろ、そこに至るまでの鋸型の家並みのほうが魅力的だった。
観光客も、地元の人も殆ど道にはいなかったけれども、町並みのそこかしこから歴史の風情を感じた。道の向こうにはいつも金華山の面影があって、少し歩み進めるとどこかで必ず長良川にあたる。その歩き具合は、どこか故郷札幌を思わせる。斉藤道三や織田信長などの武将が目をつけぬはずない、またとない好立地な場所である。
この川原町には、ギャラリーが数店あったり、長良川温泉の十八楼や、和菓子の老舗
玉井屋本舗、岐阜団扇の3種が揃っている
住井冨次郎商店町屋をそのまま改造して雰囲気のある喫茶店と和雑貨屋に仕立てた
川原町屋など、楽しいスポットも満載。長良川の近くのお土産屋では、岐阜提灯や和傘も買い求めることができる。
特に良かったのは、岐阜団扇。漆塗りの真っ赤な岐阜団扇と柿渋で塗った渋うちわ、6月15日以降、夏にしか販売しない噂の水うちわ…どれも手作りでため息が出るほど美しい。水団扇は販売開始後すぐに売切れてしまうらしく、現在も見せていただくことしかできなかったが、真っ赤な岐阜うちわがとてもきれいで1つ購入した。10年ほど前に購入した韓国の団扇は未だに現役できれいに使っているし、丈夫で美しい団扇というのはとてもいいものである。
長良川は、先日訪れた美濃市にも流れている。昔はこの川をつたって、美濃の和紙が運ばれてきたので、このあたりにこの団扇屋のように紙を使って工芸品を作るお店が建ち並んだのだという。思えば、岐阜3大工芸は、皆、美濃の和紙を用いる。
今年は、和紙に誘われていろいろな出会いがあったことを思う。
川原町屋も、建物をどんどんつたっていって、蔵の中で美味しくコーヒーを頂いた。こちらの地域では、「コーヒー下さい」と頼んだだけで、期待を裏切らないスイーツが一緒に付いてくるので嬉しい。今日も、有機栽培の豆コーヒーに、自家製の生チョコと、クッキー、ひよこのメレンゲ菓子がついてきた。
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今回は行けなかったが、金華山周辺には、明和昆虫博物館やお抹茶が頂けるお茶室もある。長良川が流れているので、シーズンにはその鵜匠の説明も聞けるし、
長良川温泉も出ているので、
十八楼別館など近くのホテルでは鮎料理を堪能しながら、日帰りで温泉も楽しめる。円空美術館もあるし、なかなか見所満載なのである。
これに、加納城跡近辺や和傘、岐阜県美術館のコースも入れると、岐阜は本当に奥深い都なのだ。また来年、折を見つけて、訪れてみたい。