スカラムチ氏は首席補佐官らに対する攻撃に出る直前、トランプ大統領と夕食を共にしており、この場で首席補佐官追い落としのシナリオが描かれた公算が強い。
プリーバス氏は共和党全国委員長を務めた党主流派の1人。ライアン下院議長とも親しい間柄で、主流派とホワイトハウスをつなぐパイプの役割を期待されていた。
しかしオバマケア見直し法案が否決されるなど議会対策がうまくいかず、大統領の不満が高まっていた。大統領は最近、昨年10月に大統領の女性スキャンダルが表面化した時、
プリーバス氏が批判したことを蒸し返し、「あの時、アイツが何をしたか覚えているか」などと側近らの前で罵っていた。大統領がスカラムチ氏を使ってプリーバス首席補佐官を辞任に追い込んだのは確実だろう。
問題は31日、新首席補佐官に就任するケリー国土安全保障長官がホワイトハ
ウスの全般的な統括力を発揮し、内紛や混乱を収めて政権を正常化できるかだ。ここで重要になるのは、ホワイトハウスの指揮系統の一元化だろう。
トランプ政権のホワイトハウスは発足当時から3頭体制。通常の政権ではトップである首席補佐官に加え、バノン首席戦略官、娘婿のクシュナー上級顧問の3人が同格に据えられたため、
指揮系統が複数となって政権の混乱に拍車がかかった。この時点で、プリーバス首席補佐官の失脚は決まったと言っても過言ではない。
しかし、半年を経て、ホワイトハウスの権力構図も変わった。現在の派閥は大きく言って5つ。1つはクシュナー氏やその妻でトランプ氏の長女イバンカ顧問といったトランプ一族だ。
2つ目はニューヨーク・ウォール街出身の企業家中心のグループ。ここにはコーン国家経済会議委員長、ロス商務長官らがいる。
3つ目は選挙戦からのトランプ氏の側近グループ。バノン首席戦略官やミラー顧問らだ。4つ目は共和党の主流派に属する一派。ペンス副大統領や更迭されたプリーバス氏、スパイサー前報道官らだ。
そして最後は政争から一歩引いて構える将軍一派。目立つことを避けているのが特徴で、ケリー新首席補佐官、マティス国防長官、マクマスター国家安全保障担当補佐官らである。
ケリー氏は国家安全保障長官として、厳しい不法移民対策やイスラム諸国からの入国禁止などトランプ大統領の政策を強く支持し、大統領からの信頼を勝ち得た。またホワイトハウスの各派閥とも対立せずにうまく立ち回ってきた。
しかし、首席補佐官という立場はこれまでとは全く違う。5つの派閥の中で、トランプ氏に最も影響力を持っているのはクシュナー、イバンカ夫妻を中心とする一族グループだ。
「彼らに嫌われれば、明日はない。指揮系統の一元化を確保しつつ、トランプ一族の大統領への直接的なアクセスには目をつぶる」(アナリスト)ということがケリー氏の成功のカギだろう。
しかし、政権の混乱はケリー氏の首席補佐官就任でもすぐには収まりそうにない。ロシア・ゲートをめぐり、セッションズ司法長官の解任問題がくすぶり、国務省の人事に難癖を付けられ続けているティラーソン国務長官も早期辞任を検討していると伝えられるなど、今後も山あり谷ありだ。
歴代の首席補佐官史「門番」の著者であるクリス・ウイップル氏は「ケリー氏の任務は“ミッション・インポッシブル”」(米紙)とその多難さを予測している。
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