見出し画像

読書の森

本多孝好『ここじゃない場所』

北京オリンピックの閉会式は夢幻の世界を観るようでした。


ただ、東京オリンピックも北京オリンピックも、不幸な事に、未曾有のコロナ禍に遭ってしまいました。

綺麗に膨らんだ色とりどりの風船が弾けて消えた様な虚しさです。

不謹慎ですがバブルの弾けた頃を思い出してしまいました。



『Syory Seller』の作者達は皆バブル世代であります。
これらの作品が上梓されたのはバブルが弾けた後です。
屈折したものがある物語が多いです。

『ここじゃない場所』の主人公は受験間近の女子学生。
見た目可愛いけど、素直な良い子とは言えない。
「、、休み時間になればみんなと同じように虚ろな言葉を吐き続ける。ずれることが怖いわけではない。、、私はただ、ずれ方がわからないだけだ」

このように冷めた子が、気になって仕方ない男子がいる。
なんと相手は「超能力者」、テレポーター(空間飛行者)の同級生。
彼女はこの恋愛感情を認めたくない、悩んだ挙げ句、逆に彼が自分をストーキングしてると思うようになった。
確かに彼女の身の回りで不可思議な事が続出したのだ。
そして、彼女は誰かに突然襲われ、両手両足を縛られて暗いガレージに閉じ込められたのだった、、、!

最終的にこの物語は、全ての謎が解けて、めでたしめでたしで終わります。

作者、本田孝好は当時の若者にたいそう人気のある人です。
この作品は今の若者にも、昔の若者にも、強く惹きつけられるものがありそうです。

甘く切ない、けれどそれを認めたくない恋、青春期の不安定さ、は時代を超えて共通なんだと思えます。


「ここじゃない場所」は作品ではテレポーターが一瞬にして移動する場所を意味しています。
私には、満たされない今の状況から別世界に行きたい思いを意味する様にも思えます。

「ここじゃない場所」に行きたいという思いは、コロナ禍の中で憧れに変わっているかも知れませんね。

ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!

名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

※ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「書評」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事