以前、瀬戸内寂聴『場所』の書評を削除してしまった事があります。
「不倫を礼讃してると思われたら嫌」などと変な事考えたのですね。
そんな事を言えば、大好きな筒井康隆にしても江戸川乱歩にしても、その作品の主人公の生き方など出来る訳もない。
ただし、この『場所』についてはほぼ事実に即して書かれてます。
出家して70代の後半を迎えた著者が、今は消えてしまった風景や故人となった人との懐かしい思い出を物語った作品として稀有のものがあると思います。
非常に情熱的で才能のある、魅力的な作家の息づかいが感じられる作品です。
^_^ただし出世作『夏の終わり』の発表当時(1973年)は若かった私、「不潔な関係!こんなおばさんに二人の男が夢中でしかも不貞(不倫より不貞が一般的な時代)を働くなんてどこが良いのかしら?」と思ってた。
又、作品中のそれぞれの場所の記憶が実に鮮やかです。
例えば、彼女が着のみ着のままで家出して頼った友人の下宿、京大に近い閑静な場所にあります。そこから仕事探しに出かけた「油小路三条」、平安時代からあった町の描写のリアルさが、一瞬時を忘れさせます。
情緒ある濃い目の文章なのに、さらりと後を引かないのが瀬戸内作品の真骨頂だと思います。
晩年の瀬戸内寂聴さんは人を包み込むような魅力のある人だったと言います。
この作品を読んでも、ロマンチストな一面、元々明るい活発な女の子だったエピソードが書かれてます。
情熱に任せて行動した結果、身内や恋人に残酷な事をしてしまった一つ一つに傷ついて、それを乗り超えた生き方をされたのではないでしょうか?
彼女の作家人生に一番深く影響を与えたのが井上光晴氏です(作品では別の名前)。
彼女の作家人生に一番深く影響を与えたのが井上光晴氏です(作品では別の名前)。
圭角の多い無口な男性ですが、女性を惹きつける魅力がある人なのですね。
井上光晴氏の娘が作家井上荒野さんです。
瀬戸内寂聴さんの死後井上荒野さんが世に出した本が書店に並んでました。
いつかじっくり読んでみたいと思います。
ウチの父親は事情があって母以外の女性に殆ど触れていませんが、この井上荒野さんの気持ちに近いものを私も持っているからです。
男女の交情に対する恐れと言いますかね、そんなものです。(井上さんの私生活など知らないまま言ってごめんなさい)
ただし井上荒野さんには優しい夫君がいらっしゃいますよ(念の為)。
早咲きの桜が健気に咲いてます。可愛いです❤️
早咲きの桜が健気に咲いてます。可愛いです❤️
小さな子供達の顔が元気に見えます。もう春みたいに錯覚してしまいます。