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読書の森

宇野浩二 『思ひ川』後編



このような恋を配偶者が黙って見てる訳がない。
浩二の妻は
「他の女と遊んでもいいが、八重さんの店には行かないでくれ」
と訴えた。

その時、浩二は箪笥の引き出しを一つづつ出して階下に放り投げるという暴挙を黙ってする。
妻は心が凍る思いをしただろうが、浩二の許を離れない。

また、八重の方も所詮旦那持ちである。
彼女は旦那と別れて浩二と結ばれたい。
ヒステリーを起こす彼女、怨む妻、入り組んだ三角関係の中で、浩二の弱い神経は苛まれた。

彼はとうとうダイナミックに発狂した。
実際に精神病院に入院した彼を見舞った芥川龍之介は、その凄まじい狂態を見て不安になったという。
自分も発狂したらああなるのかと想像して、それが自殺する原因の一つになったともいうのだ。
ちなみに芥川龍之介は浩二の入院中に自殺している。

浩二の入院は二度に渡ったが、いずれも早く退院している。
復帰して再び物書きを始めた。



彼の妻は終戦後亡くなった。
八重と結ばれたかと言うとそうでない。
別の女と再婚するのだ。

八重も旦那と別れて、たいして好きでも無い男に次々と身を任す。
皆身過ぎ世過ぎの為にである。
経済的な援助を浩二は一切していない。

つまりお互いに生活は次々と他の異性と共にしながら、交流し続けるのだ。

私だったら逃げますがね。

『思ひ川』で一躍有名になった浩二と芸者置き屋の女将となった八重は、世間に知られる仲であるが、依然として浮世離れした関係である。

八重は、後々
「先生を知る前は本当に呑気で面白い事ばかりだったけど、知ってから何も面白くなくなった。
先生の心がいつ私に移ったんでしょう」
と怨じる。

「心が移る」事は恋人同士においてあり得るのだろう。

村上八重が純粋な人だったという前に、宇野浩二が一種不思議な力を持っていたと言えよう。

何れにしても恋は論理的に説明出来るものではない。

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