麻友が夫の悟の殺人計画を立て始めたのは、その年の春の事である。
早峯悟は評判のいい心療内科クリニックの院長をしている。
患者を包み込むようなゆったりとした笑顔で患者の訴えがどんな奇妙な形にしても絶対否定する事がない、このクリニックに来るとそれだけで癒される気がすると言う巷の噂である。
「優しくて人格者の早峯先生」患者は勿論その家族からも、言われている。
その声を、麻友は直接聞く事が出来ない。
初めて彼と会った所は大学病院の精神科の診察室で、麻友は患者で悟は成り立ての医者だった。
つまり、それだけ年の差があれば、先に死ぬ確立は高いし、死ぬまで彼に閉じ込められる訳である、と麻友は考えた。もう後少しで高齢者になってしまう。その前に逃げたい。
自由を求めて、ここから抜け出すの為に夫を殺すしかない。
あまりに短絡的過ぎる考えを麻友は持った。
「優しくて人格者の早峯先生」患者は勿論その家族からも、言われている。
その声を、麻友は直接聞く事が出来ない。
子どもの居ない二人の家庭の住所は院内の誰も知らない。
秘密だった。
秘密だった。
その人格者の院長の妻が麻友だということも誰も知らない。
これも秘密だった。
彼、悟が内と外では大違いの暴君なんて事は全然無い。
彼、悟が内と外では大違いの暴君なんて事は全然無い。
外面同様、家庭でも彼は優しく上品な男である。夫としては、上品過ぎと麻友は思う。
箱入り妻の麻友は包み込む様に大事にされ、欲しい物は何でも与えられている。物質的には勿論精神的にも何不自由のない暮らしをしている筈だった。
「奥様はお幸せですわ。こんなにご立派な優しいご主人に恵まれて」
「そんなこと」
箱入り妻の麻友は包み込む様に大事にされ、欲しい物は何でも与えられている。物質的には勿論精神的にも何不自由のない暮らしをしている筈だった。
「奥様はお幸せですわ。こんなにご立派な優しいご主人に恵まれて」
「そんなこと」
と麻友は恥ずかしげに俯き淑やかに微笑む。
しかし、、。
しかし、、。
大人しげな笑顔の裏で「もううんざりだー」と心の中で呟く。

物騒な話に戻る。

物騒な話に戻る。
この言うことのない夫殺害を麻友は企てていた。
麻友が悟を殺したいのは、悟が裏切ったからでも、悟の遺産が欲しいからでも、好きな男が出来たからでもない。
悟という偉大な保護者から逃げ出したいだけである。「私はあなたのペットじゃない」と叫びたいけど、じっと我慢した挙句、それらしい理由を出して何回か離婚を切り出した事がある。
しかし、憎たらしい夫は頑として受け付けなかった。
「君みたいに世間知らずで、歳だけは取って、心のか弱い人をほっぽり出しは出来ない。担当医としても責任がある君が穏やかな最期を送れるように看取る責任がある」
悟は穏やかに諭した。つまり夫自身が患者の妻を診る形になっている(普通は医者の家族は他の医者が診る、客観的判断をする為である)。
麻友の殺意はこの時芽生えた。
悟の中で麻友は依然として精神科の患者なのである。
自分の最も近い相手に一生まともな人間として扱われないで、飼い殺しにされるなんて真っ平だと麻友は思う。
麻友が悟を殺したいのは、悟が裏切ったからでも、悟の遺産が欲しいからでも、好きな男が出来たからでもない。
悟という偉大な保護者から逃げ出したいだけである。「私はあなたのペットじゃない」と叫びたいけど、じっと我慢した挙句、それらしい理由を出して何回か離婚を切り出した事がある。
しかし、憎たらしい夫は頑として受け付けなかった。
「君みたいに世間知らずで、歳だけは取って、心のか弱い人をほっぽり出しは出来ない。担当医としても責任がある君が穏やかな最期を送れるように看取る責任がある」
悟は穏やかに諭した。つまり夫自身が患者の妻を診る形になっている(普通は医者の家族は他の医者が診る、客観的判断をする為である)。
麻友の殺意はこの時芽生えた。
悟の中で麻友は依然として精神科の患者なのである。
自分の最も近い相手に一生まともな人間として扱われないで、飼い殺しにされるなんて真っ平だと麻友は思う。
(少なくともこの男より後に死にたい。そして人間らしい自由を味わいたい)
何故ならば、若く見えるが麻友は悟より10歳年上である。
何故ならば、若く見えるが麻友は悟より10歳年上である。
悟は52歳、麻友は62歳なのである(゚∀゚)
初めて彼と会った所は大学病院の精神科の診察室で、麻友は患者で悟は成り立ての医者だった。
一目惚れしたのが同時だった。今もそれを麻友は悔やんでる。
つまり、それだけ年の差があれば、先に死ぬ確立は高いし、死ぬまで彼に閉じ込められる訳である、と麻友は考えた。もう後少しで高齢者になってしまう。その前に逃げたい。
自由を求めて、ここから抜け出すの為に夫を殺すしかない。
あまりに短絡的過ぎる考えを麻友は持った。
これが「精神を患った患者独特の現実を遊離した妄想だと言うなら言え」と恐ろし過ぎる考えを持ちながら、麻友は疲れてる夫の為に特製お粥(卵とネギ入り)を作る。毒は、、、入ってない。
追記:あんまり暑いので、封印してた(いつか文学新人賞応募の為にストックしてた)ネタに添削してupしました。又写真が物語の季節とマッチしてないのをお許しください。
よろしければ見てね。