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読書の森

三島由紀夫『豊饒の海』続き



先程のブログはかなり独りよがりで分かり難かったと反省しました。
これでは、何が「真実を追う」か、何が無常か、さっぱり伝わってきませんよね。

この物語の筋を私なりに追っていく事にしました。

物語は、松枝清顕という貴族の若者が主人公です。
才能も容姿も優れた寡黙な若者は、集まりで見た春の花の様な美女、聡子に一目で惹かれてしまうのです。
気持ちが通じて二人がお互いに惹かれあった頃、聡子に懸想した皇族と縁談が起きるのです。

気が狂いそうになった清顕は、このままでは手の届かぬところに行ってしまう恋人との一夜の逢瀬を企むのです。

この手引きをしたのが、彼の親友である本多です。
春の淡雪が降る一夜限りの逢瀬を、原作は夢の様に美しく描いています。

この為に二人の仲は強引に引き裂かれ、聡子は仏門に入る事になりました。
聡子のいる奈良へ行く旅の途中で、心身共に衰弱した清顕は、この世を去るのです。

この清顕の体に特徴のある美しい黒子があります。
清顕を惜しむ本多は、この黒子を持つ若者を、転生した清顕として追っていくのです。若者達は何処か悲劇の芽を持っていて、清顕と同じ20歳で夭逝していきます。

美しく若いままで死んでいく若者の転生の証を追っていく内に本多自身は随分と年老いてしまいました。
仕事にも家庭にも恵まれた本多ですが、彼の魂の奥底に輪廻転生への答えを求める思いが消えないのです。
それは彼自身が生きた時間や歴史を意味のあるものとしたいからです。

清顕の転生に関する答えを見い出せるかと、望みを込めて本多は聡子を訪ねるのです。



本多も聡子も八十路を超えています。

未だに本多が転生という真実を追っているのに、聡子はその青春の記憶が無いと静かに答えるのみでした。

由緒ある寺院で、向き合う上品な老人、静かな寺の庭、傍目には穏やかな時間が過ぎているかに思えます。

しかし、本多の胸には、「記憶もなければ何もないところにきてしまった」という虚ろな思いが去来するのでした。

非凡な才能、激情的な若さ、悲劇的な死も、無常の世は嘘の様に忘れ去っていく、
もし三島由紀夫が書き進む内にそんな境地に至ったら、最早書くべきものは何もなかったのでしょうね。
それが、死に繋がっているのかも知れません。

実は私は三島由紀夫の作品はあまり好きでは無いのですが、彼の激烈な死の謎が知りたい気持ちは強かったのです。

そんな意味で、ここに独断に満ちたブログを作ってしまいました。

最後迄我慢して読んでいただきありがとうございました😊



読んでいただき心から感謝します。 宜しければポツンと押して下さいませ❣️

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