読書の森

永井するみ 『秘密は日記に隠すもの』



明けましておめでとうございます。
旧年中は読者となっていただき本当に有難とうございました。
本年もよろしくお願い申し上げます。

さて、年の初めに日記に関したミステリーを紹介致します。
実はこれは永井するみさんの最後の作品となるものです。

2010年9月死去と知った時、残念な思いがした事を覚えてます。
一口に言えば才気溢れる方でした。
出世作『マリーゴールド』を読んだ時も構成や人物の描写が自然でいて、あっと言わせる結末を書ける人でした。

彼女の文章の展開は読み易く、グイグイと惹きつけるものです。
魅力ある作品がこれからもっと書ける筈だったのに謎の死が惜しいなと思います。



この作品は4つの連作になっています。
登場人物に繋がりがあるだけで物語は一つ一つ独立してるものです。

殺人劇があるのは最後の『夫婦』だけ。
それも事故死としか見えない死に方です。
しかも犯人は日記上では故人になってた妻。

永井するみの作品の人間関係の殆どが屈折してて本音を最初見せません。
読者は必ず騙される仕掛けになってます。

よくある不倫の末の失恋、ストーカーになるのかしら?と見えた『サムシングブルー』。
実は自分を縛る妹に見せる為の作り話で、実は結婚に至る恋愛を隠すダミーの日記でした。

作者は恐らく書き上げた時ニンマリ笑ったと思えます。

細やかなトリックとどんでん返しで、著者は亡くなる前まで読者に対するサービス精神を忘れない人だったと感じます。



永井するみさんの写真や経歴を見て思う事は非常に恵まれた人であるという事です。
逆に嫉妬され易い立場の人だったのではと。

遺作を読んで気がつくのは、自由に対する希求です。
自分を縛る親、親切を押し付ける周りの親戚、干渉してくる妹、軽蔑する夫からの自由の達成がテーマになってると思えます。

美貌の人妻でしかも人気作家、経済的にも満たされているのに、実はそれらから逃げ出したい女でした。
と独りよがりな解釈で読むと、納得してしまう私が屈折してるのでしょうか。

ともあれ、東京芸大と北大、日本IBMやAppleという難関を軽くパスしてしまったこの人は、非常に優秀です。
優秀であるが故の軋轢があったと思えてなりません。

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