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読書の森

松本清張『月光』

記録的な大雨による被害の情報が相次いでます。
私も夜中にスマホの警戒情報の音で目が覚めた口ですが、お陰様で今のところ何事もありません。
梅雨の雨とは思えない酷い状況です。ご無事を祈るばかりです。

気持ちを変えて、全く別の文学の世界に身を置きたいと思います。





今まで文庫化されていない松本清張の初期作品を集めたこの本、興味深く読みました。
『月光』は女流俳人の橋本多佳子をモデルにした小説です。
彼女は非常に美しい人でこれも華やかな噂の絶えなかった杉田久女に学んだ事があります。
久女が激情的で世渡りが下手だったのに対して、多佳子は理知的なタイプでした。
久女が貧しい教師の妻だったのに対して、多佳子は富豪の未亡人なのが、余裕を持てる理由だったのかも知れません。

松本清張は彼女を見て、その美しさ、気品の高さが忘れられなかった様です。
小説の中でもマドンナの如き女性が描かれてます。


読後、私は橋本多佳子の顔写真が無性に見たくなりました。
そこでネット検索して写真も作品も知りました。松本清張さんには悪いですがこっちの方がよっぽど興味あるものでした。

今の女子美出身(病弱で中退してますが)の彼女は、涼しげな印象の顔立ちをしてます。
年齢がいくほど表情に深みが出て美しいと思いました。
スラリと背が高くて、気品があります。
成る程杉田久女とは異なる印象を受けました。
久女が炎なら、多佳子は水の様な感じですね。

しかし、その句を読んで印象が一変したのです。
心の中に炎🔥を持つ人なのですね。



「月光に いのち死にゆく
ひとと寝る」
彼女が38歳の時、看病の甲斐なく夫と死別します。

「万緑や わが額にある
鉄格子」
彼女は亡き夫に貞操を守り通した女人だったと言います。
若い頃一見取り付き難い印象があるのはその為でしょうか?鉄格子とは何でしょうね?

「七夕や 髪ぬれしまま
人に逢う」
「くらがりに 傷つき匂う
かりんの実」
「蛇を見し 目もて弥勒を
拝しけり」
私としては非常に色っぽい句だなと新鮮に感じました。

さて彼女の代表作と言われるのは
「いなびかり 北よりすれば
北を見る」
どうという事ないじゃない、と思われる方が多いと思います。
しかし、この情景を目に描くと雄大なものがあります。北からするから凄まじい稲光なので北を見る、という感覚にも男性的な感じを受けます。

橋本多佳子は嫋やかな女性的な人と言うより、ダイナミックにものを捉えた人ではないかと思えるのです。

清張さんのお陰で素敵な女流俳人に会えました。





読んでいただき心から感謝します。 宜しければポツンと押して下さいませ❣️

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