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学校と私:阿寒で郷土力はぐくんだ=鶴雅グループ社長・大西雅之さん(毎日新聞)

2010-10-23 00:00:00 | その他のニュース
学校と私:阿寒で郷土力はぐくんだ=鶴雅グループ社長・大西雅之さん


大西雅之・鶴雅グループ社長
 小学6年の時、北海道阿寒町(現在は釧路市と合併)から札幌市に転校し、その後、東京の大学に進学しました。私の原点は阿寒湖畔で学んだ少年期だと思います。

 通っていた町立阿寒湖小は、児童数が1学年20人前後の小さな学校。一つの教室をカーテンで仕切り、2学年が分かれて授業をします。カーテン越しに隣の先生の声が聞こえてくるのどかな学校でした。当時の先生は威厳があり怖かった。ひとりが悪いことをすると「連帯責任だ」と、みんながたたかれた記憶があります。学校が終われば、近くの森に作った「秘密基地」で遊び、休みの日はボーイスカウトで野外活動に一生懸命でした。

 印象に残る先生は3、4年の担任、吉田隆先生です。手が届きそうな満天の星空に輝く天の川を眺めながら、吉田先生から「この星のどこかに生命が存在するかもしれない。地球なんてちっぽけな存在。ささいなことに悩んだり、苦しんだりするな」と聞かされました。その影響もあり、中学校で天文クラブに入りました。親から高価な天体望遠鏡を買ってもらい、親友と2人で未明の星空をながめ、ジャコビニ流星群を見たりベネット彗星(すいせい)を探したものです。

 阿寒湖畔の自宅近くにアイヌコタン(集落)がありました。同級生にアイヌの子が4人おり、一緒によく遊びました。アイヌへの差別や偏見が残っていた時代でしたが、私にとって自然な存在でした。両親が体調を崩し、家業の旅館を手伝うため、30代で阿寒に戻りました。その時聞いたエカシ(長老)の話が印象的でした。「アイヌには時計がない。好きな子ができたら、満月の晩に会おうと約束する。でも、その日がよく分からないから何日も待ってようやく会える」。時間に追われた生活とは無縁のアイヌの世界観に触れ、豊かな阿寒の自然の中にいると、環境を傷める人間の愚かさを感じました。

 ホテル経営、地域づくりには郷土力が必要です。地域の宝物を見つけ、個性を磨き、他にない本物を提供する。そう信じて仕事をしていますが、それには小学生での体験や阿寒の土地柄があると思います。【聞き手・千々部一好】

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 ■人物略歴

 ◇おおにし・まさゆき
 1955年北海道釧路市生まれ。東京大卒。北海道で七つのホテルなどを経営。「鄙(ひな)の座」(阿寒温泉)はJTBの08年全国最優秀旅館に。観光庁の観光カリスマ百選の一人。

毎日新聞 2010年10月23日 東京朝刊


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