緑のカーテンとゴルわんこ

愛犬ラム(ゴールデンレトリバー)との日々のあれこれと自然や植物、
本や映画などの勝手な独り言を書き留めています

寒い日にはなぜか藤沢周平を・・・

2016年01月12日 | 

暖かな年明けだと喜んでいたら、今日は真冬らしい厳しい寒さの一日となりました。

床暖房だけでは朝の寒さにおいつかず、石油ファンヒーターもつけています。灯油が安いので助かっています。

寒いので私はすっかり冬籠り、暖かくした部屋でなぜか今になって藤沢周平の時代小説本を読みふけっています。 藤沢周平の小説は映画化されたりドラマになったり、いろいろ評判は知っていたのですが、あまり読んだことがなかったのです。

読み始めたきっかけは、去年の8月22日の日経新聞夕刊で「海鳴り」という上下巻の作品を紹介していたのを読んだのが始まりでした。 「文学周遊」というその日経新聞の記事を見て、読んでみたいなと思いすぐにアマゾンで取り寄せました。世話物というのでしょうか、老境の入口に差し掛かった江戸の一商人の心情をきめ細かく描き出した作品で、文章も全体の雰囲気もしっとりしていてなかなかよかったです。

 

それからは時々図書館でこれはどうかなと思う藤沢本を見つけると借りてきて読み続けています。何冊目だったか、映画やドラマになった作品「蝉しぐれ」を手に取り、藤沢ワールドの魅力にはまりました。

すごく有名な小説ですね。少年から青年、壮年と成長していく武士の姿と淡い初恋を見事に描き出していく筆力に、魅了されました。多くのファンがいることが、「なるほど、これなら」と思わされました。好きな方は同じ本を何度も読み直すとか、読み終わって小説の世界から去らねばならないのがすごく心残りで、いつまでもこの世界にとどまっていたいと思わせる作品でした。

続けて読んだ「風の果て」、私にはこれがさらによかったです。藤沢周平は山形県生まれ、東北地方の架空の藩、海坂藩を舞台にした多くの時代小説を書いています。この「風の果て」も海坂藩とは明記されていないのですが、東北地方のあまり豊かではない小さな藩でのお話です。

大きな出世ができそうもない下級武士の次男坊だった青年が、新田開発の夢を持ちその実現へと愚直に歩み続けていくうちについに筆頭家老の地位まで昇りつめる、その生きてきた日々の中で自分なりに選択してきた道筋が本当にそれでよかったのだろうかとある出来事に出合い、ふと振り返る・・・

年齢を重ねると、「風の果て」の主人公のように自分の人生を俯瞰するようなそんな心境になるときがあります。今の自分自身ではなく、もう一つの道を歩んでいたかもしれない自分の姿、今までの人生を後悔するというのではなく、その時々に自分なりに考え歩んできた道なのに、もしこの道ではない方を選んでいたらどんな自分になっていただろうかと。 

功成り名を遂げた主人公がふとそうした感慨にふける、その気持ちがとてもよく伝わってきて、人の「幸せ」っていったい何なのだろう、「人生」って本当に一筋縄ではいかないものなのだなとしみじみと思わされます。

私の年齢に相応しい内容の本に、まさにどんぴしゃりで出会うことができて、深い喜びを覚えます。もっと若い時に読んでいたら、この小説の良さが分からなかったかもしれません。

藤沢周平の遅れてきたファンの1人に私も加えていただきたいものだと思いました。

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