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65オヤジのスタイルブック

65才茶々丸のスタイルブック。様々なカルチャーにふれて養ったライフスタイルを紹介

マリー・ローランサンとモード展 名古屋市美術館

2023年06月29日 | 【美術鑑賞・イベント】

今回の展覧会は、同時期に生まれ1920年代にパリで活躍した画家マリー・ローランサンと服飾デザイナーのココ・シャネルにスポットをあてパリで芽生えた新潮流を紹介する先鋭的な美しさで彩れた展覧会です。

パリで生まれピカソやブラックなどの交流を通じて新しい芸術表現に挑んだローランサン。淡い色調と独特な美しさのあるフォルムで描かれた女性像は女性ファンのみならず世界的にも愛された芸術家です。一方フランスの片田舎で育ち、自らの才能でファッション業界に一石を投じシャネルスーツに代表される独自のファッションを作り上げたシャネル。

今回の展覧会は異なる意識を持った女性の才能が対峙するような展示となっています。そのことを裏付ける作品としてシャネルが自らの肖像画を依頼しながらその作品に異議を持ち受け取りを拒否したシャネルと画家としての信念を貫き修正しなかった作品「マドモアゼル・シャネルの肖像画」とマリー・ローランさんの「わたしの肖像画」象徴的に出迎えます。

 

マリー・ローランサンの作品は、二つの大戦の狭間で花開くパリの「狂騒の時代」に絢爛華麗な社交界の女性たちをパステルカラーもシンプルな表現で描いていますが、こうした表現が受け入れられたのも当時の社交界の持つ気質ではないかと伺われます。また当時のパリは若き芸術家たちの集まる場でもありピカソやブラックなどの画家たちはもとより、コクトーやマンレイなどの様々な分野で新しい文化が花開いていきます。

ローランサンもそうした人々の影響を受けキュビズムの技法や舞台芸術や装飾芸術の分野にも進出しています。そうした功績もバレエ・リュスの映像やタペストリーなどの装飾などで紹介されています。

後半ではローランサンの作品と共にモダンガールの登場により新たなファッション・アイコンとして生まれたシャネルの衣装や作品が展示されカール・ラガーフェルドによる現代に継承されるシャネルの功績が紹介された展示となっています。

ともすれば画家の周辺による展示しかなされなかったマリー・ローランサンですが、同い年でありながら異なる美意識を持って同時代を代表する女性であったシャネルとローランサン。響きあう二人の芸術の調べは異なるも魅力的なものでした。絵の好きな人もファッションが好きな人も共に楽しめる展示となっています。

会期は9月3日まで、巡回展の最後となる展覧会ですので興味のある方はお見逃しなく。

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映画 エゴイスト

2023年06月21日 | 【映画・ドラマ・演劇】

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本日の映画レビューは、鈴木亮平&宮沢氷魚共演、松永大司監督の「エゴイスト」です。

今回の映画は2月に公開されロングランヒットを続けている作品で、先日岐阜のミニシアターで鑑賞しました。高山真氏の自伝的小説を原作としてゲイのカップルと家族、その周辺の人々との関係を描いており、ヨーロッパでは近年同性愛をテーマにした作品が数々紹介される中で日本でもここまで描き切ることがことが出来た力作です。

14歳で母を亡くしゲイであることを隠して学生時代を過ごし上京して編集者として成功を収めている鈴木亮平演じる浩輔とシングルマザーで病弱の母(阿川佐和子が演じてますがこれもいい)を支えながらパーソナルトレーナを目指している宮沢氷魚演じる龍太と出会い、二人の愛を育んでいく過程を描いています。と、ここまでしか書くことが出来ないほど衝撃的で濃密な愛のかたちがあり涙を誘う内容でした。

こうした作品はゲイカップルを演じた二人の熱演だけがクローズアップされ、好奇心が先行しがちですが、ゲイであることを隠しながら思春期を過ごし富を得てオープンにして人生を楽しんでいる浩輔と母のために人生を捧げながらも浩輔との出会いにより心の奥底にある性と葛藤する龍太、陽と陰が重なりあったときに生まれた新たな愛のかたちに心揺さぶられる人はいないと思います。

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映画 怪物

2023年06月14日 | 【映画・ドラマ・演劇】

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本日の映画レビューは、是枝裕和監督、坂元裕二脚本による話題の映画「怪物」です。

はじめに率直な感想として凄いもの見せてもらいました。個人的には是枝作品の中ではベスト1です。

物語は大きな湖のある小学校。安藤サクラ演じるシングルマザーの麦野早織は帰宅した息子の湊の姿を見ていじめにあっているのではないかと学校に抗議をします。子供同士のけんかに思われたいじめは、クラスの星川依里の証言で担任教師の保利によることとなり、保利は責任をとり辞職。事態は収まったかのように思われた矢先、湊と依里が忽然と姿を消してしまいます。

物語は前段での一連の流れから、二人の蒸発を境に流れの中にある真実の事象が明かされていきクライマックスを迎えます。こうした手法はミステリー映画の中ではよく使われる手法ですが、是枝と坂元がタッグを組むとここまで繊細に濃密な展開になかるのかと感嘆します。しかも、子供たちのみならず、教師や親までそれぞれが抱えていた問題が白日の元に晒されていくのですが、誰一人として悪人として描かれておらず、すべての事象が美しい線で繋がっていきます。その線を繋いでいくだけでも十二分に楽しめる作品ですが、主役を演じた湊役の黒川想矢君と依里役の柊陽太君がまばゆいほどに光り輝いていました。さらに言えば音楽を担当し遺作となった坂本龍一の美しい旋律が映画の見えない演出に深く関わっています。

子役を使い社会の問題に鋭くメスを入れる是枝監督と若者たちの心の機微に深く入り込む坂元脚本による見事な化学反応を起こし珠玉のヒューマンミステリーが出来上がりました。映画ファンのみならずすべての人に見てほしい映画です。

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映画 ウーマン・トーキング 私たちの選択

2023年06月07日 | 【映画・ドラマ・演劇】

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本日の映画レビューはサラ・ポーリー監督、ルーニー・マーラはじめ若手、中堅の実力派女優陣が繰り広げる会話劇「ウーマン・トーキング 私たちの選択」です。

今回の作品は南米ボリビアで起こった集団レイプ事件をモデルに架空の村での設定でヒットした小説を原作として制作されています。映画化を持ち込んだのがスリービルボードやノマドランドのオスカー女優フランシス・マクドーマンドで、ビラッド・ピッドの映画制作会社プランBにより実現しました。このストーリを知っただけでも僕にとっては興味津々でした。

舞台は2010年のニューヨーク郊外のキリスト教一派の村で集団レイプ事件が発覚、識字教育さえ受けていない女性たちは村の男たちから悪魔の仕業と思いこまされていました。ある日そのことが村の男の犯行としった女たちは、男たちが村にいない二日間で三つの選択を話し合います。その選択は「このまま」「闘う」「脱出」彼女たちの代表により決着の話し合いが行われます。

物語の大半は三者三様の女性たちの会話劇で進むのですが、女たちのレイプにより一変する人生組み込まれ、それぞれの選択に真実味が強調され静かに力強さを感じる映画です。日本ではカルト宗教的な一面で語られそうですが、強者が弱者に向ける威圧を正当化する不条理ととられた方がこの作品を正しく見る要素だと思います。彼女たちの選択は平和的かつ彼女たちの持つ強さゆえの選択だと感じるでしょう。

アカデミー賞の脚色賞でオスカーを獲得しているにも関わらず上映館の少なさに失望しましたが、こうした真正面から女性に生き方をとらえた作品がもっと広がらないと日本の現状なんて進まないなと痛感する作品です。性別を超えて弱者に向けられる愛を感じてほしい映画です。


映画 AIR/エア

2023年06月03日 | 【映画・ドラマ・演劇】

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今回の映画レビューは、ベン・アフレック監督、マット・デイモン主演のナイキの復活劇となるエアージョーダン誕生までを描いた「AIR/エア」です。

今回の作品は、Amazonオリジナルとあって劇場以外でもプライム作品で視聴可能でしたので、こちらで鑑賞しました。しかし最近のアマゾンプライム、近作映画のラインナップが群を抜いてます。

アメリカ現代史を描くことで監督としての地位を築いていったベン・アフレックがマット・デイモンとコンビを組んだのが今回の作品。アメリカプロスポーツ史に輝くマイケル・ジョーダンを誕生から陰で支えナイキの代名詞となったエアジョーダン製作までの社員の奮闘を描いた内容となっています。

アメリカ人気プロスポーツのNBL。コンバースやアディダス、リーボーックなどのシューズメーカーの中で後れを取っていたナイキが、新人選手であるマイケル・ジョーダンとのスポンサー契約に乗り出し前代未聞の選手の名前を冠したシューズ製作に挑み伝説の歴史を作り上げたマット・デイモン演じる営業マンは地味な内容ですが、ナイキファンやスポーツファンなら興味深い作品となっています。ちなみにCEO役をベン・アフレックが演じてますが、二人とも市井の人を演じた感じで、風貌はかっこよくないです。

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