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65オヤジのスタイルブック

65才茶々丸のスタイルブック。様々なカルチャーにふれて養ったライフスタイルを紹介

映画 37セカンズ

2020年02月28日 | 【映画・ドラマ・演劇】

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生まれた時に37秒を息をしなかったことで全身に障害を抱えた23歳の女性を主人公に展開される異色作、映画「37セカンズ」を観てきました。

今回の映画は、NHKの朝のラジオ番組のゲストで監督のHIKARIさんがゲストで出ていて、そのインタビュー内容が記憶にあり、上映タイミングを逃す寸前で鑑賞できました。

内容は生まれた時に37秒呼吸が出来ず手足に障害を抱えた23歳の主人公女性の日常から生まれた冒険活劇。2016年にサンダンス映画祭とNHK主催の脚本ワークショップで選ばれ2019年に映画化に進んだ異色作で、ベルリン映画祭でパノラマ観客賞と国際アートシネマ連盟賞の2冠に輝いています。また、今回の脚本監督のHIKARIは、今回の作品が長編監督デビュー、本作でハリウッドも注目する新鋭女性監督です。

過保護の母を持つ主人公のユマは、友人の漫画家ユーチューバーのアシスタントして働いているのですが、実はゴーストライターで密かに漫画家として自立したいと思ってます。ある日公園でふと目に留まったエロ漫画を拾い原稿を出版社に持ち込みます。編集長からリアリティーがないと指摘されたユマは、そこから、ユマが知らなかった未体験ゾーンへと突き進んでいきます。

ウォンカーウエイ監督の思い起こさせる映像美、主人公の目線で追う昼と夜の世界、彼女を取り巻く様々な人々の感情など彼女の様々な体験が常識を越えて動き出す面白さ、そして彼女と母親の関係がドラマとして動き出す濃密なストーリー。どこをとっても飽きることのない完璧な仕上がりで、まさに一人の女性のキラキラとした青春活劇です。

ラジオでのインタビューでも述べられてましたが、監督自身が1981年に公開された松山善三監督によるサリドマイド児の典子を主人公に制作されたセミドキュメンタリー映画の「典子は今」の影響を受けたこともあり、今回の主人公に同じ障害を持つ、佳山明を抜擢し、母親役を演じた神野美鈴さんとの共同生活でよりリアリティーある作品に作り上げています。初めての演技で挑む明さんが障害者のリアルを体当たりで演じていて、そのすごさに心奪われます。そして出会いの人々を演じる俳優陣が彼女を中心に生き生きと楽しく演じているように思いました。

久しぶりに笑って泣いて、すごいなと思った日本映画、個人的には2020年キネマ旬報ベスト1です。ぜひ、劇場で体験してみてください。

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映画 1917 命をかけた伝令

2020年02月27日 | 【映画・ドラマ・演劇】

オスカー監督サム・メンデスによる戦争スペクタル作品「1917 命をかけた伝令」を観てきました。

本年度アカデミー賞で撮影賞、録音賞、視覚効果賞の3部門を受賞、もしパラサイトがなければ、間違いなく作品賞、監督賞を受賞していたと思います。

舞台は1917年の第一次世界大戦のイギリス対ドイツの戦線。若きイギリス兵の二人が、最前線にいる部隊に重要な命令を伝達するために敵のいる戦地を歩いて抜けていくというもの。一番に注目は、ワンカットごとの撮影が長回しで描かれていること。見えない敵を相手に進む二人の兵士の緊迫感が伝わり、さらに戦地の悲惨さを泥に埋もれた死体や大きなネズミの姿だけで表現されていて、無駄なものを省略したことで兵士の恐怖を増幅しています。

主人公の一人、スコフィールド上等兵を演じたジョージ・マッケイは、僕が作品として印象深い「はじまりへの旅」で森の中で社会と隔絶した家族の長男を演じてました。演じ方は違えどクールな顔立ちと正反対の生存能力を感じる演技でした。

前線で戦う兵士を救う伝令。歩みを進め、走り抜き、泳ぎ、砲撃をものともせず駆け抜ける姿にシンプルに感動を覚えます。パラサイトブームが日本を席巻していますが、今年の観るべき映画のひとつです。そして、劇場で観ずしてこの作品の凄さを感じれないです。新型コロナを恐れずマスク着用で観てください。

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映画 スキャンダル

2020年02月23日 | 【映画・ドラマ・演劇】

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本年度アカデミー賞メイクアップ&ヘアメイク部門でカズ・ヒロがオスカーを受賞し、人気女優が共演して話題の映画「スキャンダル」を鑑賞してきました。

今回の作品、2016年にアメリカで実際に起こったスキャンダル事件を取り上げたもので、その後に起こるミートゥー運動の原点ともいえるセクハラ事件を題材にしたものです。

全米で人気ナンバー1を誇るFOXニュース。その人気ベテランキャスター、ニコール・キッドマン演じるグレッチェン・カールソンがクビを言い渡されたことで、テレビ業界の帝王と言われたCEOのロジャー・エイルズを告発。そのことがきっかけで、人気キャスターのシャーリーズ・セロン演じるメーガン・ケリーとキャスター、スタッフを巻き込んでの局内大スキャンダル事件へと発展する様相を描いています。

今回のオスカーを獲得したカズ・ヒロさんによるメーガン・ケリーを演じた特殊メイクがすごいです。彼女が演じていることを認識していなければわからないですが、今までと明らかに違うのは、どこか彼女の雰囲気を漂わせながら実在に人物に似せているように感じです。そのような共通点は、ニコールにも、またCEO演じたジョン・リスゴーにも感じました。

また、このタイミングで登場したのが、現大統領のドナルド・トランプ。大統領選挙を巻き込んだスキャンダル合戦が展開され、シリアスな告発劇が派手なメディア業界の演出でヒートアップしていくところが、いかにもエンターテーメント好きのアメリカらしく楽しめます。そこにヒロ・カズさんの特殊メイクが加わって、事件のリアリティーが増し、エンターテーメントの要素を加えることで、セクハラ事件に対する視線をうまく向かせてるのが、僕にとってはわかりやすいし、面白い手法だと思いました。

アップテンポで進むスキャンダルドラマと女優たちの名演、エンターテーメントとヒューマニティーがミックスされて十二分に楽しめる映画です。

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DVD ザ・バニシングー消失ー

2020年02月15日 | 【映画・ドラマ・演劇】

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映画館で観れなかった作品をDVDで観るシリーズ。今回は、スタンリー・キューブリック監督が絶賛した1988年制作のサイコ・サスペンス「ザ・バニシングー消失ー」です。

本作は、88年制作ですが、93年に監督自らによりサンドラ・ブロックとキーファー・サザーランドでハリウッドリメイクされています。僕自身は、この映画の存在を知らず昨年に日本公開されたのをラジオで知りましたが、上映館も少なく期間も短ったこともあり今回のDVDで鑑賞となりました。

キューブリック監督が3度鑑賞し絶賛し、ラストへの旋律がサイコや、セブン、ゴーンガールを超えると言われてました。

物語は、オランダからフランスへの小旅行中のカップルのレックスとサスキア。ドライブインの給油中に忽然とサスキアが失踪。手がかりが得られることなく3年の月日が流れ彼女を忘れられないレックスのもとに犯人らしき男から手紙が届き始めます。

今回の作品は、恋人も忘れられない男と殺人を犯した男とのある種の静かな戦いが描かれています。なので、サスペンス作品として期待した人にたぶん不評だと思いました。しかし、犯罪心理においては、その境界線を越えるかどうかをテーマにすると犯人の二面性または三面性が、恐ろしくラストでピークを迎えます。そこが、とてもに日常に起こり得そうで恐怖が増してきます。また、レックスの行動には、どこか失踪したサスキアへの思いとは別のどこか自己執着への完結を感じます。

そう考えるとキューブリック監督が絶賛するのも理解できます。評価の良しあしは観た人が判断することなのでラストは伏せておきたいと思います。

 

 

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映画 グッドライアー 偽りのゲーム

2020年02月14日 | 【映画・ドラマ・演劇】

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イギリスを代表する名優、ヘレン・ミレンとイアン・マッケラン共演のサスペンス「グッドライアー 偽りのゲーム」を鑑賞

今回の作品、イアン・マッケランがベテラン詐欺師ロイに扮し、ヘレン・ミレン扮する資産家の未亡人ベティから全財産を騙し取るまでの策謀が描かれていますが、ラストで事態は一変するという極上のサスペンスドラマが展開されます。

ネタバレがないと今回の作品は説明し難いところがありますが、数点にわたり手の込んだ手法について話したいと思います。

先ず、二人の出会いが年老いたカップルでありながら、出会い系サイトで知り合うというところ、そして、出会いの場でお互いに名前明かしたところが最初のウソの始まりです。また、イアン演じるマッケランは投資詐欺の手法で犯罪を起こすグループのリーダーで、伏線としてもうひとつの詐欺の手法が伏線となっています。

ミレン演じるベティには、孫が一人いてロイに疑いの目をもっていて、ベティの家の周囲にはもう一人謎の男が徘徊しています。そして、孫がいるドイツでの旅行がロイとベティの知られざる真実の鍵となっています。

そしてラストで一変する事態には、出会い系サイト、ドイツ旅行、投資詐欺の三つのキーワードが結び付いています。

一般には、ロード・オブ・ザ・リングのガンダルフ役のイメージが強いイアン・マッケランですが、SFファンタジーからアメコミ、現代劇に舞台と変幻自在に役をこなす彼の老練ぶりとヘレン・ミレンのしたたかな女の強さがぶつかり合い、最後まで目の離せない展開と上質な大人のサスペンス劇です。

げに恐ろしきは女の怨念、果たして結末はいかに。


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DVD 泣き虫しょったんの奇跡

2020年02月12日 | 【映画・ドラマ・演劇】

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映画館で観れなかった作品をDVDで観るシリーズ。今回は奨励会退会後に再びプロ棋士を目指したアマチュア棋士の実話に基づく「泣き虫しょったんの奇跡」です。

近年、将棋界を描いた「聖の青春」や「3月のライオン」など青春映画の名作が公開されました。今回の作品は、脱サラ棋士の瀬川晶司の原作を元にした感動作です。

松田龍平演じる主人公のしょったんの小学生時代からプロ棋士を目指した奨励会時代、挫折からサラリーマンアマ棋士とて日本一に、そして将棋界の慣習を破り、再びプロ棋士を目指す人生を丁寧に描いています。

将棋との出会いを作るきっかけになった同級生のライバル役には、RADWINPSの野田洋次郎、また奨励会時代に仲間には永山絢斗、染谷将太、妻夫木聡など同世代の俳優仲間が出演、彼を後押しする父や小学時代の恩師に國村準に松たか子など豪華な俳優陣が顔を揃えています。最近は、寡黙で少し陰のある役柄が多い松田龍平が、今回も、奨励会時代から奇跡のプロ棋士になる過程を言葉少ない演出で徐々に輝く存在感を醸し出してました。

僕の世代は、誰もが慣れ親しんだ将棋ですが、僕の場合は、あまり経験がないのですが不思議に日本人のDNA的なものを将棋に感じていました。盤上の勝負事は男心をくすぶり、人間ドラマが集約されているように思います。豊田利晃監督自身が元奨励会出身で、松田龍平の存在を世に知らしめた「青い春」以来の共演で監督自身も20年目の節目、そんな男同士も絆や出演者の友情などが強く感じる作品でした。


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アカデミー賞2020発表 私的考察

2020年02月11日 | 【映画・ドラマ・演劇】

「パラサイト 半地下の家族」は作品賞含む4冠受賞の歴史的快挙

昨日の第92回アカデミー賞でパラサイト半地下の家族が作品賞を含め作品賞、監督賞、脚本賞、国際映画賞の4冠を獲得、11日が祝日のタイミングで日本中がパラサイトブームに沸いているみたいです。

受賞結果は以下の通り

作品賞:「パラサイト 半地下の家族」公開中
監督賞:ポン・ジュノパラサイト 半地下の家族
主演女優賞:レニー・ゼルウィガージュディ 虹の彼方に」3月6日公開
主演男優賞:ホアキン・フェニックスジョーカー」公開中
助演女優賞:ローラ・ダーンマリッジ・ストーリー」Netflix'sで視聴可
助演男優賞:ブラッド・ピットワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」公開中
脚本賞:ポン・ジュノハン・ジヌォンパラサイト 半地下の家族
脚色賞:タイカ・ワイティティジョジョ・ラビット」公開中
視覚効果賞:「1917 命をかけた伝令」2月14日公開
美術賞:「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」DVD視聴可
撮影賞:ロジャー・ディーキンス1917 命をかけた伝令
衣装デザイン賞:ジャクリーン・デュランストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語」3月27日公開
長編ドキュメンタリー賞:「アメリカン・ファクトリー
短編ドキュメンタリー賞:「Learning to Skateboard in a Warzone (If You’re a Girl)」
編集賞:「フォードvsフェラーリ」公開中
国際長編映画賞:「パラサイト 半地下の家族
音響編集賞:「フォードvsフェラーリ
録音賞:「1917 命をかけた伝令
メイクアップ&ヘアスタイリング賞:「スキャンダル」2月21日公開
作曲賞:ヒドゥル・グドナドッテイル「ジョーカー」公開中
主題歌賞:“(アイム・ゴナ)ラヴ・ミー・アゲイン”「ロケットマン」DVD視聴可
長編アニメーション賞:「トイ・ストーリー4」DVD視聴可
短編アニメーション賞:「Hair Love」
短編実写映画賞:「向かいの窓

今回日本での公開が2月、3月の作品も数多く受賞していることもあり、その部分はわかりませんが、パラサイトが作品賞、監督賞、国際長編映画祭の3冠は獲るのではと思っていました。また、主演男優賞のホアキン・フェニックスや助演男優賞初受賞のブラッド・ピットが受賞したことは、一ファンとしてうれしいです。また、2度目のメイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞した日本人アーティストのカズ・ヒロさんのスキャンダルや1917命をかけた伝令など観たい映画の受賞もあって僕にとっても、うれしい結果でした。

かつては、白人至上主義的受賞が続いたアカデミー賞もアカデミー会員人種の平等と拡大があってか、ここ数年でそのあり様が、黒人やエスパニック系の監督が作品賞を獲得し変化が徐々に生まれてきました。しかし、英語圏の圧倒的な強さで作品賞は英語作品で、その一つとして外国語作品賞がありましたが、本年度から国際長編映画賞に。パラサイトのポン・ジュノ監督もその点を評価していました。

その点でも今回のアカデミー賞が歴史的な分岐点となったことは間違いないと思います。日本映画も今回の韓国映画のように海外に進出的できるようなグローバルな展開を日本映画界全体で考えていく大きな示唆になったのではと思います。


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DVD 空母いぶき

2020年02月08日 | 【映画・ドラマ・演劇】

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映画館で観れなかった作品をDVDで観るシリーズ。今回は西島秀俊と佐々木蔵之介W主演の映画「空母いぶき」です。

沈黙の艦隊のかわぐちかいじのコミック原作を豪華なキャスティングで実写映画化した本作。時を同じくして憲法9条をめぐる解釈で自衛隊の存在がクローズアップするタイミングで公開され、首相を演じた佐藤浩市の演出を巡って一部保守派から批判の的となったことでも話題になった作品です。

世界が再び空母の時代となった近未来、日本が国籍不明の軍事勢力から攻撃を受ける中で、戦闘状態下で、現憲法の下で国家と国民を守るために奔走する自衛隊の姿が描かれているフィクションです。

自衛隊が置かれた立場を西島演じる秋津と佐々木演じる新波との異なる立場から、憲法下でいかに国民を守るかがテーマとなっています。いわゆる解釈を巡って国会でも論争となっている専守防衛についてですが、局面局面の攻防で瞬時に判断する自衛隊の決断に対して、原作者の意図と監督に加えて脚本家の意図が三位一体となってうまく描かれていると思いました。また、俳優陣も中堅、ベテランに重きをおいたことで緊迫感が出ていました。

批判にさらされた首相役の佐藤も中立な立場で自らの意見を役柄に反映しているなと感じました。この映画の大きな意義は国家は国民のためにあり、戦争が起こさない、戦争の引き金とならない国家の在り様です。自衛隊の違憲云々や専守防衛の解釈云々よりも、その点がもっとも重要視することがラストで明確に表れているように思います。


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DVD アルキメデスの大戦

2020年02月07日 | 【映画・ドラマ・演劇】

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映画館で観れなかった作品をDVDで観るシリーズ。今回は山崎貴監督、菅田将暉主演の「アルキメデスの大戦」です。

今回は、日本の戦争の過去と未来をテーマにしたフィクション作品2本を順番に紹介します。先ずは、戦艦大和沈没の真相をテーマにしたフィクション作品「アルキメデスの大戦」です。

今回の映画は、永遠の0の山崎貴監督によるコミックを原作にした実写版で、菅田将暉が若き天才数学者うぃ演じています。また、彼を手助けする青年将校には柄本佑が、その他にも山本五十六に舘ひろしなど、ベテラン俳優が脇を固めた豪華な出演陣となっています。

物語は、アメリカとの開戦前の日本。戦艦大和の建造計画に勝機を見出だそうとする帝国海軍上層部に対して、山本五十六と國村準演じる長野修身が、天才数学者の力を借りて無謀な建造計画阻止に奔走するという内容です。

初っ端から大和沈没のシーンを監督VFXで迫力ある演出で再現。しかしながら、今回はそこが布石となって大和建造がいかに無謀な計画であるかを、軍部の最終決定会議までに証明していきます。菅田将暉を初め若手俳優の初々しさがあって少し軽さのあるキャスティングとベテラン俳優の重厚感とのギャップを少し感じました。そこが、僕としては娯楽映画の域を越えられませんでした。

内容としては、最近のコミックのグレードの高さから面白いと思いますが、もう少し戦争映画らしい重苦しさが欲しかったです。

山本五十六自らが戦艦大和の建造の逆手をとって、奇襲作戦に進む下りは史実の上でも納得でき、また、戦争というものを超えて何かを成し遂げようとする究者の宿命で終わるところに、この作品の真意が伝わったように思います。

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没後90年記念 岸田劉生展 名古屋市美術館

2020年02月06日 | 【美術鑑賞・イベント】
 
名古屋市美術館で開催中の「没後90年岸田劉生展」を鑑賞しました。
 
岸田劉生と言えば愛娘を描いた麗子像が有名です。今回は重要文化財の麗子微笑が2月26日まで限定展示されています。劉生は、日本の近代洋画に多大な影響を与えた日本を代表する洋画家で38歳で急逝され画業生活も短い画家でした。
 
僕自身もやはり、あの妖艶などこか怖いイメージのある麗子像が浮かぶのですが、今回の展覧会では劉生への数々の新しい発見がありました。先ずは、麗子像と並ぶ自画像の多さ、斜に構えた眼鏡をかけた武骨な顔立ちの自画像、一見するとその写実性から同じような作品に見えるのですが、よく見ると自画像の中に画風の変遷を感じます。端的には風景画や静物画にも見られるのですが劉生は、晩年の麗子像にいたるまでに、西洋絵画の美術史の中にある絵画技法を用いているのです。それは、セザンヌの影響を受けたと言える印象派の画風であったり、古典絵画の極めて細密な画風のなど様々な画風を実験的に挑んでいることがわかります。さらに劉生や洋画ののみならず、日本画や水墨画にも挑戦していて、どの作品も劉生の特色がよく表れていました。
 
そして、彼の代表作である麗子像です。茶や黒の暗い背景に赤や黄色の中心にした着物や毛糸のガウン。おぱっか髪に、切れ長の眉毛とふくらみのある頬。一見するとおどおどしいイメージのある童子の姿が、実際に観るとすべてはバランスよく配置され麗子の優しいさと童子の中に秘めた母のような慈愛を感じます。まさに劉生の麗子像は彼自身の完成形であることがよく理解できました。
 
150余点の珠玉の作品が一堂に介する展覧会は、今回の名古屋展で最終となる劉生展、様々な麗子像と共に新たな劉生像を発見してみてはどうでしょうか。



 

特別展 ミイラ ~ 「永遠の命」を求めて 国立科学博物館

2020年02月05日 | 【美術鑑賞・イベント】

 



 

今回の東京アート旅のパート3は、絵画鑑賞と趣を変えて国立科学博物館で開催中の「特別展 ミイラ ~ 「永遠の命」を求めて」を鑑賞してきました。会場は国立博物館の隣にあり、会場内は子供連れや若者など大盛況の混雑です。古代から続くミイラ信仰がこれほどまでに受け入れられているとは驚きです。

内容は、南北アメリカ、古代エジプト、ヨーロッパ、アジア・オセアニアのミイラ43体を紹介、各地のミイラがどのようにして作られ、その地域の風俗文化として形成されていったかをわかりやすく解説しています。

特に今回のミイラで目を惹いたのは世界最古のチンチョーロ文化のミイラから始まるインカ帝国に代表される南米のミイラ。老若男女の大小様々なミイラが最新のCTスキャンにより解析されて展示されています。

他にもミイラの代名詞と言える古代エジプトでの捧げものとなった鳥や猫のミイラやヨーロッパの自然ミイラやアジアでは原住民の装飾ミイラに日本の学者が自らミイラとなった本草学者のミイラに高僧の即身仏などが展示されています。

これらミイラは、地域の信仰的な風習によるところが多いなと感じましたが、対象としての扱いが様々なのも興味深いところです。そして、古代より現在に至るまで生命に対する神秘に起因するところが現代人がミイラに惹かれる点ではないかと思います。


コートールド美術館展 愛知県美術館

2020年02月04日 | 【美術鑑賞・イベント】
 
愛知県美術館で開催中のコートールド美術館展を鑑賞しました。
 
化繊事業で財を成し、イギリス人実業家のコートールドのコレクションによる印象派、後期印象派の作品が並ぶ本展。古典主義の強いイギリスにあって印象派の画家たちの作品をいち早く購入し美術館に寄贈したコートールドの作品は、マネやセザンヌ、モネ、ルノワール、ゴッホ、ゴーギャン、ドガなど馴染みのある画家たちの代表作が並び、改装となる美術館以前の展示写真をモノクロームのパネルで展示、作品のほぼすべてに詳細なキャプションをつけたり、美術館を代表する画家たちの名画には、解説付きの作品パネルが展示されるなど手の込んだ演出で誰もが楽しく絵画に触れ合える空間となっています。
 
そんな楽しい演出の中で、ひと際印象的なのはマネの代表作、フォリー=ベルジュールのバー。ミュージックホールの一角にあるバーカウンターを描いた作品でうつろなの女店員を中央に配し、バックにある鏡にホールの情景を映し出した名作です。画面の隅々に至るまで物語が存在し、想像力を掻き立てる。この作品に出合えるだけでも価値の高い展覧会と言えます。
 
他には、コレクションの中核をなす印象以降の画家たちに多大な影響を与えたセザンヌのコレクションやオルセー美術館の草上のマネの昼食の元絵のとなった同タイトルの秀作「草上の昼食」にナビ派のボナールやポスト印象派のスーラー、ロートレックにロダンの彫刻などフランスを代表する芸術家の作品がならぶサブタイトルの「魅惑の印象派」にふさわしい、魅力が満ち溢れた展覧会です。
 
東京からスタートした本展、名古屋では3月15日まで、その後に神戸にて3月28日から6月21日まで開催されます。コートールド美術館が現在改装中により、本展が実現したともいえる幸運を、ぜひあなたの目で体験してください。