だいだらぼっちであります。遂に7月となりましたね。
観測史上例の無いほどの暑い日が続いた今年の6月。暑さはまだまだこれからです。
もっともっと燃えて、最高の夏にしましょう。
さて、7月と言えば旬のものは何でしょう?
7月の声を聞くと突然頭に浮かぶものとは・・・そうです。「鮎」なのです。
勿論もっと早い季節から「鮎」はメニューにのります。解禁されています。
特に「稚鮎」と呼ばれる「鮎」の少年少女時代は評価が高く、骨ごと頭から食べられるのも魚愛好者に人気がある理由の一つでしょう。
「塩焼き」は勿論ですが、「から揚げ」「フライ」でも美味しくいただけます。
しかし「鮎」が本領を発揮するのは6月の下旬から7月にかけてです。
「鮎」の魅力の一つは、あの何とも言えないいい香りです。
川底の「苔」を食べるので、おそらく「苔」の香りも影響しているのかも知れません。
いい「苔」の育つきれいな川の「鮎」はやはり美味しいと評判になります。
あの香りは「稚鮎」の時代にはまだまだ出ていないのです。
日本人が好む「鮎」。いったい何がそんなに日本人に響くのでしょう?
①一年しか生きない潔さ
「鮎」は例外を除くと一年しか生きません。
だから「若鮎」などと、爽やかな人を評したりしますが、「鮎」は皆若いので
す。
「若鮎」もへったくれもないのです。
「桜」や「蝉」のように一瞬の輝きを好む日本人には、「鮎」の生き様が美しく
見えるのかも知れません。
②見た目の美しさ、爽やかさ
これは説明の必要は無いでしょう。川魚はもともと美しい魚が多いのです
が、「鮎」は光沢といい、あのフォルムといい、他の追随を許しません。
「背ごし」にしたときの、料理としてのヴィジュアルは「オー、マイ、ガッツ石
松」なのです。「たいしたもんた&ブラザーズ」なのです。
③味の素直さ
「鮎」は「塩焼き」よし。「煮浸し」よし。「造り」よし。「から揚げ」よし。
「南蛮漬け」よし。「うるか」美味し。
とにかく味が素直で上品なので、様々な料理で食べられます。
「鮎づくし」のコースがあるほど、料理人にとっては魅力のある季節の食材
なのです。
④香りの独特さ
これは先に述べました。とにかくあの香りはほかの魚にはありません。
「鮎」を「香魚」とも書く所以ともなっているのでしょう。
などなど魅力は尽きませんが、潔くて、爽やかで、美しくて、素直で、清流に住んで、
若々しくて・・・とにかくカッコいいやつなんですよ!「鮎」は・・・
しかしそのカッコいい「鮎」が一番仲のいい奴、知っていますか?
「蓼(たで)」なんですよ!実は・・・
「蓼」って知ってますか?道端や水辺に生える、さえなーい野草なのです。
「蓼食う虫も好き好き」と言うことわざになっているくらい、食べると苦くて辛くて、普通は口に入れるのもありえない野草なのです。「野草」ですよ、「野草」。
いまどきわざわざ「野草」食べなくてもいいじゃありませんか。
「山菜」ならわかりますよ、「山菜」なら。「野草」なんですよ。
しかしこの「蓼」は「鮎」と出会って本当によかったのです。
いやむしろ「鮎」は「蓼」に出会ってしまってよかったのでしょうか?
「鮎」の料理の代表格は何といっても「塩焼き」ですね。
生きのいい「鮎」に串うちをして、天然の塩で化粧して、炭で焼く。
脂が炭に落ちて、すす臭い煙があがらないように丁寧にじっくりと仕上げていきます。
綺麗に焼けたら様子のいい器に、笹の葉なんかしつらえて、いかにも「若々しく泳いでいます」なんて見える格好に盛り付けて、そしてそして・・・・
「蓼酢」の登場なのです。「蓼」の葉をすりつぶして酢と合わせた「蓼酢」。
深い緑色が鮮やかで、「鮎の塩焼き」と言ったら必ず添えられている「蓼酢」。
「蓼酢」は「鮎の塩焼き」以外ではほとんど使いません。
いや「蓼」自体、あの強烈な苦味が強すぎて「蓼酢」以外の使用方法を探すのが困難なほどなのです。
あの独特のほろ苦さが「鮎」の香りにこれまたぴったり合うのです。
いやむしろ「鮎」が「蓼」の添え物でもあるように、「蓼酢」に最も合う料理は「鮎の塩焼き」なのです。
別に「鮎の塩焼き」、大根おろしと醤油で食べてもいいじゃないですか。
おろしポン酢で食べてもいいじゃないですか。レモン汁だけだっていいじゃないですか。
しかし何も指定しないと「蓼酢」が登場するのです。
「うちの蓼酢は美味いですよー。蓼が違いますから。」などと言う板前さんもいます。
「おいおい鮎はどうなっているんだ?蓼酢ばかり自慢されてもねー。」
「いやいや一回食べてみてくださいよ。他の店の蓼酢とはぜんぜん違いますから。」
等と言い出す始末。
どうなっているのでしょうか?「鮎」はそれでいいんでしょうか?
なんだかハンサムで、家柄もよく、成績も優秀で、スポーツも万能、それでいて爽やかで、明るく、威張りもしない、そんなカッコいい奴が何かの間違いで、さえない、偏屈な、感じの悪い奴と親友になってしまった。
どこがいいのかわからないが、いつも一緒にいるので他の友人と会うことも無くなってしまった。皆は心配しているけれど、本人は特に気にしていない。満足している。
そんな感じではないでしょうか?
きっと「鮎」にとって「蓼」は何か話が合うのでしょう。きっと遠慮の無い「蓼」が言ってくれる言葉が「鮎」にはいいヒントになるのかもしれません。
当人同士しかわからないことがあるのです。
男女も、女同士も、男同士も・・・
「亡国のイージス」でもよくわからない二人組みが登場します。小生はこの二人のシーンがかなり好きなのですが・・・その二人とは
防衛庁ダイスの渥美本部長と瀬戸内閣情報官です。
二人とも超エリートですが、性格は全く違います。
何故この二人の会話は心地いいのでしょうか?
この二人がこんな会話をしていて大丈夫なのでしょうか?
渥美は佐藤浩市さんが、瀬戸は岸部一徳さんがそれぞれ演じているのですが、その取り合わせの妙はさすが千両役者。
「鮎」と「蓼」でもこうはいかないかもしれません。
二人がそれぞれ考えている「国家」というもの、「国家」のありかた。素直に「こういう考え方もあるのか。」と感じ入ってしまいます。
難しい政治の話ではなく、映画のストーリーとして考えさせられてしまいました。
さすが、両名優ですね。じっくり観ていただければここもまた見所の一つです。
「鮎の塩焼き」には美味い「蓼酢」と、いい映画。
この組み合わせで今年の夏、乗り切りましょう。
瀬にこがれ行く若鮎の 慕うがゆえに 慕うなり 藤村
慕ったところでまた来週。