Siamo tutti un po' pazzi.

~我々は皆少しおかしい(イタリアの慣用句)~

普段色々考えていることの日記です。

「オリエント急行殺人事件」(1974年)

2009年07月09日 | 映画・DVD
オリエント急行殺人事件 スペシャル・コレクターズ・エディショ [DVD]

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「オリエント急行殺人事件」(1974年)

出演者
ラチェット・ロバーツ(アメリカの老人)…………………………………リチャード・ウィドマーク
ヘクター・マックイーン(ラチェットの秘書)……………………………アンソニー・パーキンス
エドワード・ベドウズ(ラチェットの召使)………………………………ジョン・ギールグッド
アーバスノット大佐(英国軍大佐)……………………………………ショーン・コネリー
メアリー・デベナム(イギリス人女性)…………………………………ヴァネッサ・レッドグレイヴ
ナタリア・ドラゴミノフ公爵夫人(ロシア人の亡命貴族)………………ウェンディ・ヒラー
ヒルデガルド・シュミット(ドラゴミノフ公爵夫人のメイド)………………レイチェル・ロバーツ
ハリエット・ベリンダ・ハッバード夫人(中年のアメリカ人)……………ローレン・バコール
グレタ・オルソン(スウェーデン婦人)…………………………………イングリッド・バーグマン
ルドルフ・アンドレニイ伯爵(ハンガリーの外交官)……………………マイケル・ヨーク
エレナ・アンドレニイ伯爵夫人(アンドレニイ伯爵の夫人)……………ジャクリーン・ビセット
サイラス・“ディック”・ハードマン(アメリカ人のスカウトマン)…………コリン・ブレイクリー
ジーノ・フォスカレッリ(アメリカに帰化したイタリア人)…………………デニス・クイリー
ピエール・ミシェル車掌(オリエント急行の車掌)………………………ジャン=ピエール・カッセル
コンスタンティン医師(ギリシア人医師)………………………………ジョージ・クールリス
ビアンキ(国際寝台車会社の重役)……………………………………マーティン・バルサム
エルキュール・ポアロ(ベルギー人探偵)………………………………アルバート・フィニー
監督:シドニー・ルメット

 見よ! この綺羅星のごときスターたちを!!

 この作品をオールキャストで作ったというのは、本当に成功だったと思う。
 推理小説って予算をけちると、登場人物が出そろった段階で犯人がばれたりするのだ。
 例えばだ。
 上記の役者たちを眺めてみてほしい。
 この中で誰か一人だけしか出演しなかった場合(例えばショーン・コネリーとかイングリッド・バーグマンとか)、
 どう考えてもそいつが犯人だろう?
 だが、さすがにここま出そろうとどの面も犯人然としていて混乱してくる。

 例えば一番最初に怪しさ爆発なのがショーン・コネリーのアーバスノット大佐とヴァネッサ・レッドグレイヴのメアリー・デベナムだ。彼らは冒頭に登場して何とも気なるセリフを言う。
 いや、それよりも、二人ともイギリスでは有名な俳優でカンヌやアカデミーでたくさんの賞を取っている。
 ……怪しい。

 その次に、慣れたミステリーファンなら一番に目をつつけるのがイングリッド・バーグマン演じるグレタ・オルソンだ。「カサブランカ」や「誰が為に鐘は鳴る」で有名な女優がグレタ・オルソンという地味な役をしている。これは、どう考えても疑ってくれと言わんばかりである。
 ……怪しい。

 怪しいと言えばアンソニー・パーキンスのヘクター・マックイーン。彼はヒッチコックの「サイコ」で主役を務めた俳優だ。
 ……怪しい。

 アンソニーに負けていないのがジョン・ギールグッドのエドワード・ベドウズだ。もともとはシェイクスピア俳優だったらしいので、彼の古い作品は知らないが、私の中で一番印象に残っているのが「エリザベス」のローマ教皇役。神の使徒とは思えない冷酷な瞳を柔和な微笑みで包み込んだ、あの演技にはゾクゾク来た。
 ……怪しい。

 アンドレニイ伯爵役のマイケル・ヨークも伯爵夫人役のジャクリーン・ビセットも気になる存在だ。マイケルは「キャバレー」に出演していたし、ジャクリーンは「娼婦ベロニカ」に出ている。二人ともこういう役柄じゃないはずなのに、妙にかしこまっている。
 ……怪しい。
 
 ローレン・バコール。この人も古い映画は知らないが、日本のアニメ「ハウルの動く城」で荒地の魔女の英語吹き替えをした人だと言うと、「犯人はお前だ!」と指さしたくなる。
 ……怪しい。

 他にも、詳しくは知らないがドラゴミノフ公爵夫人役のウェンディ・ヒラーも、そのメイド役のレイチェル・ロバーツも怪しい演技と言えばぴか一である。
 レイチェルなんて私達が思い描くメイドとは真逆な風体をしているし。

 残念ながらチョイ役出演となってしまったコリン・ブレイクリーのハードマンとデニス・クイリーのフォスカレッリだが、実はそこにも仕掛けがあって…と言えば、どうだろう? スターでキャストを固めている時、あまり知られていないが名演技をする役者が犯人ということもよくある。
 ……怪しい。

 忘れてはならないのがジャン=ピエール・カッセルの車掌。「パリは燃えているか」の彼がただの車掌役なんてありえないだろう。
 怪しいと言えば、彼が一番怪しい。

 なんだか、探偵役のアルバート・フィニーすら怪しくなってくるのだからお見事としか言いようがない。
 何せ、映画嫌いのアガサが唯一OKを出した映画らしいのだから、
 その出来栄えや如何、
 だろう。
 日本語吹き替えは、どうも声優の声が気に入らないのだが出来れば字幕なしでスターたちの演技に見惚れてほしい。

 さて、そんな豪華キャストとは全く別の見どころと言えばかの有名な「オリエント急行」の再現だろう。
 とはいえ、当時は廃車になっていたらしいからすべてセットだそうだ。
 だが映画を見て、私は叫び声をあげそうになった。
 本で書かれているとおりだ!
 アガサの「オリエント急行」は私が大好きな作品の一つだが、それをまさに実写で見せてもらったという感じだ。
 いや、本で書かれている以上の描写もあり、一瞬で1930年代へとタイムスリップした気分だった。
 また汽車が発車する時の音楽がいい。
 「列車がワルツを踊っているように作曲した」と作曲家が言ったが、まさにその通りである。
 蒸気機関車のシュッ、シュッシュシュッという音が徐々に三拍子を刻み、少しづつ早くなる。
 やがて列車はレールの上をスムーズに走り始め、カタンカタンタタンとワルツを歌いだすとポーと汽笛が合の手を打つのである。

 今すぐにでもトランクに服を詰め込み、オリエント急行に飛び乗りたくなった瞬間でした。

 この映画を見てオリエント急行に乗りたくなった人はこちらへ→オリエント・エクスプレス公式サイト(日本語)


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