Siamo tutti un po' pazzi.

~我々は皆少しおかしい(イタリアの慣用句)~

普段色々考えていることの日記です。

独ソ戦映画

2008年03月30日 | 映画・DVD
「ベルリン陥落」(1949年)
「僕の村は戦場だった」(1962年)
「鬼戦車T-34」(1964年)
「大祖国戦争-巨大なる進撃の記録」(1965年)
「ヨーロッパの解放/第1部 クルスク大戦車戦・第2部 ドニエプル渡河大作戦」(1970年)
「ヨーロッパの解放/第3部・大包囲撃滅作戦」(1971年)
「ヨーロッパの解放<第4部 ベルリンの戦い/第5部 最後の突撃>」(1971年)
「白銀の戦場・スターリングラード大攻防戦」(1972年)
「レニングラード攻防戦」(1974年)
「レニングラード攻防戦 II/攻防900日」(1974年)
「対独爆撃部隊ナイトウィッチ」(1981年)
「モスクワ大攻防戦/第1部・侵略」(1985年)
「モスクワ大攻防戦/第2部・台風」(1985年)


 我が家にあるソ連が制作した独ソ戦映画です。
 この中で「大祖国戦争」は記録映画。「モスクワ大攻防戦」「レニングラード攻防戦」「ヨーロッパの解放」は戦争全体の流れを丁寧に追ったドキュメンタリー映画。「スターリングラード大攻防戦」「ベルリン陥落」は一局面だけしか扱っていないドキュメンタリーとヒューマンドラマの合いの子のような映画。「鬼戦車T-34」「僕の村は戦場だった」「対独爆撃部隊ナイトウィッチ」はすべてヒューマンドラマです。

 で、私が推奨する鑑賞の順番ですが、
「大祖国戦争」→「モスクワ大攻防戦」→「レニングラード攻防戦」→「スターリングラード大攻防戦」→「ヨーロッパの解放」→(「ベルリン陥落」)です。
 「ベルリン陥落」が()なのは、ぶっちゃけあまりオススメな映画ではないからです。
 と言うのも、スターリンがまるで『神』か何かのように扱われていて、そういうのに虫唾が走る人が多いと思うからです。
 ただ私は、ベルリンが陥落していく様が秀逸だなと思うので、「ヨーロッパの解放」を見るとこっちも見たくなります。
 同じく「大祖国戦争」もソ連のプロパガンダの匂いがぷんぷんとする映画ですが、「ベルリン陥落」よりはましですし、独ソ戦がざっと2時間でまとめられているので勉強になります。特に、これから独ソ戦のソ連制作映画を見ようという方には、ソ連側がこの戦争をどう捕らえているかが理解でき、色々と思想の面で躓かなくていいと思います。
 例えば、ソ連側は独ソ戦を『大祖国戦争』と呼ぶのを見て分かるとおり、この戦いをドイツの、そしてドイツに荷担した諸国の侵略戦争だと考えています。この中には同じ連盟側の英国やアメリカも含まれていることを遠回しに批判していたりします(第二戦線を英国とアメリカはなかなか開かなかった。連盟側はドイツにも武器を提供していたetc.)。
 また、ヒトラーのみに戦争の責任を押しつけず、ドイツ軍部・政府・企業すべてがこの戦争を後押ししたのだとも主張します。そしてソ連の労働者達はある時は兵士として、ある時は軍需工場の熟練夫として、ある時はパルチザンとして彼らと戦ったのだと主張されます。
 この資本家VS労働者という図式は共産主義の基本概念なので、飲み込めないとソ連制作独ソ戦映画は理解できないと思います。

 時間の流れとしては、「モスクワ大攻防戦」「レニングラード攻防戦」が開戦前~『バルバロッサ作戦』時を扱っています。1941年6月22日~1942年3月下旬まででしょうか。
 「レニングラード攻防戦」はもう少し長く、『イスクラ作戦』時までです。南方ではドイツとソ連がハリコフを巡る攻防を繰り広げている時辺りですね。1943年1月です。ちょうどこの後、スターリングラードでソヴィエト軍に包囲されていたドイツ軍は降伏します。
 「モスクワ大攻防戦」「レニングラード攻防戦」は『バルバロッサ作戦』の二局面を扱っているので、どちらも見ると独ソ戦開戦当初のソ連の様子がよく分かります。ジューコフの八面六臂の活躍とか、ドイツに攻め込まれて茫然自失のスターリンとか。
 「ベルリン陥落」も開戦時の様子が描かれていますが、「モスクワ大攻防戦」「レニングラード攻防戦」ほど取り上げられていません。

 で、次が「スターリングラード大攻防戦」
 とは言っても、『ネズミたちの戦い』で有名な市街戦や『天王星作戦』ではなく、マンシュタインの『冬の嵐作戦』時の話です。1942年の12月中旬の話です。しかも作戦そのものの話より、前線兵士と前線指揮官の葛藤が話のメインにおかれています。大スペクタル戦争シーンが盛り込まれたドキュメント映画を期待すると、肩すかしを食らうかもしれません。逆に前線兵士が群像劇的とはいえ、明確な主役として映し出されているので、ドキュメント映画が苦手な人にはちょうどいいでしょう。
 もうちょっとスターリングラードを巡る攻防が見たいという方には「バトル・フォー・スターリングラード」やドイツが制作した「スターリングラード(1993)」がオススメです。ちなみに私は2000年に公開された「スターリングラード」は微妙です。(登場人物が英語をしゃべっていることに激しく違和感が……。独ソ戦はやはりドイツ語とかロシア語の重厚な響きが似合います)

 最後の「ヨーロッパの解放」は副題にもあるとおりクルスク大戦車戦~ベルリン戦までを扱っています。1943年7月~1945年5月11日までです。全部で約8時間の長大な作品ですが、同じく長大なドキュメンタリー映画「モスクワ大攻防戦」「レニングラード攻防戦」と違い、砲兵中尉とその恋人であるゾーヤ衛生兵というフィクションの人物が主人公として設定されています。
 中尉がクルスクからはるばるベルリンへと行く様は「モスクワ大攻防戦」のまったく逆の行程で、ベルリン市街で中尉達が歌う『思えば遠くに来たよ』という歌はしみじみと胸にしみます。「モスクワ大攻防戦」から「レニングラード攻防戦」「スターリングラード大攻防戦」まで見ていると、映画の総時間は約21時間。見ている人間も中尉達と一緒にしみじみしちゃいます。
 ここまで見ると独ソ戦はほぼ完璧でしょう。
 で、最後「ベルリン陥落」を見るかどうかですが、見るとびみょ~に嫌な気分になるのでホントお勧めしません。

 ところで、「鬼戦車T-34」「僕の村は戦場だった」「対独爆撃部隊ナイトウィッチ」ですが、だいたい時期的にはスターリングラード戦辺りです。三作品とも良質なヒューマンドラマ映画ですので、「スターリングラード大攻防戦」の後に息抜きもかねて見るか、「ベルリン陥落」の後で気分転換に見るのがいいかと思います。
 息抜きにも気分転換にもならねぇよ! という方には、アレクサンドル・ソクーロフ監督の「モレク神(ヒトラー)」「太陽(昭和天皇)」をどうぞ。いい感じで鬱になれます。

「主たる指導者には責任はなく、人民の中にあることを私は確認します。しかし、この責任から人民は絶えず回避し、ヒトラーたちや、レーニンたちの背後に隠れるのです・・・(ソクーロフ)」

 まぁ、つまりは、戦争というモノは常に私たちに、その責任を突きつけてくるのです。

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