阿部卓馬ブログ

北海道新ひだか町サポート大使のシンガーソングライターです。ライブ告知、活動情報などを中心に更新しております。

創作小説 「ワクチンを巡る人々」第2部

2013年12月31日 | 思索
本記事は創作小説 「ワクチンを巡る人々」第1部の続きです。

(この小説はフィクションで登場する人物・団体等の名称は全て実在と関係ありません。)



- 都内住宅 -

「ただいま」

「あ、あなた…お帰りなさい。ちょっと…B子が話があるって…」

「ん?そうか。何だ?おねだりか?ハハッ」

「…。茶の間にいるから…」



「お父さん、お帰りなさい。お疲れさま」

「おぉ、ただいま。で、話って何だ?何か欲しいのか?」

「いや…今日C子に会ってきたんだ」

「そうか。楽しくやってるか?」

「C子…もう1週間も学校来てなくて…おうちにお見舞いに行ってきたの」

「ふーん…体調悪いのか…で?」

「何だか原因がわからないって…体が痺れてけいれんするとか…」

「それまたひどいな。病院とか行ってるのか?」

「うん。行ってるみたいだけど、やっぱりまだ原因がわからないみたいでおうちで安静なんだって」

「そうか…それは大変だな。たまに顔出してやりなさい」

「うん…」

「で、それがどうかしたのか?」

「それが…もしかしたらこの間、C子が受けたX-ワクチンの副作用のせいじゃないかって…」

「…!」

「まだわからないのだけど…いろいろ調べたらしいんだけど、症状がとてもよく似てるって…」

「…そうか…でもまだわからないんだろう?」

「うん…」

「…まぁ、とりあえず安静にってお医者さんも言っているんだろう?もうしばらく様子を見てみるしかないだろうな」

「…」

「…どうした?言いたいことあるならしっかり言いなさい」

「お父さん…確かお仕事はワクチンに関することだったよね?」

「…あぁ、そうだ」

「どうしてC子がこんな目に遭わなきゃいけないの?」

「…まだワクチンの副作用と決まったわけではないだろう?何でも決め付けて物事を考えるのはいけないぞ」

「でも…じゃあ、もしそうだったら、C子はどうしたらいいの?お父さんなら知ってるでしょう?」

「…うーん。まぁ、国がワクチン被害を認定するまでは、補償は難しいだろうな。担当の医師の判断を待つしかないだろう」

「どれだけ待てばいいの?卒業旅行は絶対C子と行くって、とても楽しみにしてたの…それまでには治る?」

「…そんなことお父さんに聞いたってわからないよ。お医者さんの意見が一番だ」

「…そう」

「なーに、仮に副作用だったとしても現代医学は進歩しているからな。きっと良くなる」

「…うん…。それで…話は変るんだけど…」

「うん」

「私、お母さんの言ったようにX-ワクチン受けなかった。お母さんは、理由はお父さんに聞きなさい、って言ってたから…どうして?」

「…!」

「ねぇ、どうしてなの?ワクチンって病気を予防するのにはとても大切なものなんでしょう?お父さんはその仕事してるからよく分かってるはずなのに、なんで私に接種させてくれないの?」

「…あぁ、ワクチンはとても大事だよ」

「だったらどうして?」

「…お前は注射に弱い体をしてるんだ。お母さんもそう言ってたろう?注射針の刺激に弱い体の人も結構多いんだ。たまたまお前がそうだった、というだけだ」

「じゃあ、何で献血とか血液検査も止めないの?この間献血したけど何ともなかったわ?」

「ん!あー、えー…」

「…私、知ってるんだから…ワクチンってほんとは体に良くないものなんでしょう?お父さん、それを知ってたから私に打たせなかったんだわ…」

「!」

「ネットでいろいろ調べたの。賛成の意見も反対の意見もいっぱいあったけど、私なりにまとめて判断したら、ワクチンはあんまり効かないことと副作用がとても重い、ということはわかった。これだけ知ってたら、私だって自主的に打たないもの…」

「…うーん、そうか…」

「私、もっと事前に知っていれば、C子に打たないように言ったのに…」

「…!」

「でも…もうこうなってしまったのだから仕方ない。お父さんだって、いくらそのお仕事に携わっていてもどうにも出来ないことだってあるよね…」

「…」

「とにかく、C子をサポートしていくね。お父さんも協力してくれるとうれしい」

「…」

「うん、お話はこれだけ。聞いてくれてありがとう。それと…私を想ってワクチンを打たないようにしてくれたこと、ありがとう」

「…」



「…あなた…」

「…」

「…私…何と言ったらいいか…」

「…仕方のないことだ」

「…」

「…」



- 某病院 -

「やや、遅くなりまして」

「いえいえ、こちらこそお忙しい中お時間を割いていただきまして…フリージャーナリストのEと申します」

「はいどうも。今日はどういったご用向きで?」

「はい、先生は現在接種されている各種のワクチンについて、非常に造詣が深いと伺っておりまして、そのあたりについて、二三お伺いしたいと考えております」

「はいそうですか」

「ではさっそく…。先生はワクチンに関しての予防医療についてどのようなお考えをお持ちでしょうか?」

「はい。昨今目覚しく発展している予防医療ですが、その中の最たるものがワクチンであると認識しております。人類が抱える様々な病気に対して、予防効果の可能性があるワクチンは非常に画期的な発見であったと思いますし、これからも更なる発展が期待される分野と言っても良いでしょう」

「はい、なるほど…」

「とは言え、まだまだ途上の分野ですから、それぞれの病気に対する新しいワクチンの開発は世界各国で取り組まれております。私どもはこれらの情報をいち早く取り入れ、国や各自治体に提案していき、国民の病気の予防を進めていくことが私たちの使命であります」

「それは心強いお言葉ですね」

「いえいえ。ありがとうございます」

「ではもうひとつお願いしたいのですが、今回X-ワクチンについて全国的な接種が行われておりますが、重度の副作用報告が多数ありまして厚労省は積極的接種を中止したとのことですが、このことに関してはいかがお考えでしょうか?」

「確かに、ワクチンの副作用の可能性は製薬会社からもリスクとして報告されておりますね。しかし、私どもとしましては、これらのリスクとワクチン接種のメリットを一概に比較することは出来ないという立場でございまして、また副作用の発現と発病を抑える効果において、絶対数としては圧倒的に副作用のほうが少ないと聞いております」

「なるほど…では、これらの副作用が発生した場合の治療についてはいかがでしょうか?」

「実際に症状を診てみませんとわかりませんが、その前にその症例がワクチンの接種と因果関係があるのかどうか?がわかりませんから、治療にあたるそれぞれの医師の判断によるところとなると思います」

「はい…私もあちこち聞き取りましたが、どうやらそのようですね。現場の医師の判断は医師それぞれによってマチマチのようです。このことに関してはどうでしょうか?」

「うーん、そこまでは私どもでは判断しかねますね。国や自治体、企業などを含めて総合的に判断していくことになると思います」

「そうですか…なるほど。今日はお忙しいところありがとうございました。最後に一点だけ…私個人的にワクチンについて調べたのですが、ワクチンは天然痘ワクチンが最初と言われておりまして、ある統計によりますと、19世紀後半の欧州での天然痘の大流行の際、天然痘で死亡した人々は12万人にも上ると言われておりますが、その死亡者のうち実に96%はこの天然痘ワクチンを接種していたとのことです。このことはご存知でしたでしょうか?」

「…いえ、聞いたことないですね。で、それが?」

「そうですか…私もまだ勉強不足なのですが、どうもワクチンという方法は歴史的にみてもあまり効果がないのではないか?と最近考えておりまして…そして重い副作用があるならリスクが大き過ぎるのではないか?とも思っているのです」

「その考えには同意しかねますね。というより、何で私にそんな質問するんですか。にわかの知識でジャーナリストなんて務まらんよまったく!」

「あ、いや失礼いたしました。では貴重なお時間をありがとうございましたー!」

「…不愉快だ!もう来なくていい!!!」



「(あちゃー…失敗したな…。フリーになってからは確かに自由に行動できるけど、核心に迫るインタビューって難しいんだな…。新聞社時代のように通り一遍の取材なら楽なんだが
。しかし、医師の方々はほとんど完全にワクチンの効果を認めている、あるいは信じている?のかもしれないな…特に専門職だからなかなか異なる意見は取り入れないのかも?医者は覚えることがたくさんあるから医学の歴史も近代の西洋医学、しかも改ざんされた歴史しか信じていないのだろうか…特に今の資本主義社会での医療というものは、『患者が治る』ということがすなわち『病院の経営不振』という、重い矛盾を抱えているし…医療の基本から逸れれば、儲けるためには病気を増やし患者を増やさなければいけない、という観点に突入するだろう…そういう視点から観れば現在の医療の問題はとても分かりやすくなる…しかし現在の医療が最善であると信じきっている人々にとっては、医療者も患者もそこから抜け出すのは並大抵のことではないだろう…。本当はこのあたりのことまで突っ込んで本音を聞きたかったのだけれど、まだまだ力量不足だな。精進、精進、と…)」



- 都内高校 -

「おーい!B子!」

「あ!G君!」

「今日はきっと部活がないからこのあたりにB子いるかなー?なんて思ってたらやっぱりいた、ってわけだ!」

「いきなり何なのその予測。まぁ、当たってたけどね」

「すげーだろオレ?ってそれより、C子、どうだった?」

「あ、うん…元気なそぶりを見せていたけど、時々しんどそうだったなぁ…」

「そうか…そうだよな。じゃなきゃあ、学校来てるもんな」

「まだ体調が安定してなくて、もうしばらくかかりそうだって…」

「うん…ここはしっかり安静にして治してもらわないとなぁ。C子がいないとパッとしないぜまったく」

「そうよねぇ…」

「オレもC子の件があってからいろいろと調べたんだ。そしたら、何かみるみるうちにいろんなところに拡がってなぁ…現代医学の歴史から日本史・世界史、政治経済、その他もろもろ、すごいことになってしまったんだ」

「すごいって、何が?」

「何と言ったらいいか…オレたちが今教科書で習っていることとはぜんぜん違う歴史像みたいなものにぶち当たってしまった、というか…オレもちょっと混乱しているんだ。でも、改めて俯瞰してみると、そのほうがずっと分かりやすかったりするんだよなぁ」

「例えば?」

「どこから話していいか分からないけど、一番分かりやすいのは明治維新かな?教科書では『日本の夜明け』とか書いてるけど、本当はどうだったのか?とかいうところだね」

「そうなの?もっと詳しく話してよ」

「オレもうまく説明できるかどうかわからないけど。坂本龍馬っているだろ?今でも日本の幕末の英雄として取り上げられているけど、実際彼がしたことを考えてみると、これが面白いんだ」

「ふーん。でも日本のために頑張った人でしょう?」

「オレもずっとそう思っていたんだけど、結果的にはそうでもないかもしれないことに気づいたんだ。というのは、教科書では彼は薩摩藩と長州藩を繋いで倒幕という夜明けに向けて活躍した功労者となっているんだけど、これがどうもおかしいんだ」

「何よ、それはそれですごいことでしょう?何をもったいつけているの!」

「まぁまぁ聞いてくれよ。長州藩が外国の船に攻撃したのが1863年と1864年の下関戦争と言われているんだけど、実はその同年の1863年に伊藤博文をはじめとした長州五傑と言われる5人の長州藩の若手が、イギリスのマセソン商会という会社の支援で留学しているんだ」

「日本だってその頃から国際化し始めたってことでしょう?」

「長州藩という自分の国が攘夷のために外国と戦争している間に、その国の若者が戦争相手国に留学しているのって何か変じゃないか?今でも仮にそういうことがあったらおかしいな?と思うんだけど」

「うーん。。。それで?」

「このマセソン商会の日本の長崎の代理店は誰がやっていたかというと、トーマス・グラバーという人がやっていたんだ」

「この人は有名ね。長崎で日本の近代化に大きく貢献した人だわ」

「そうそう。で、坂本龍馬が亀山社中という商社を作って薩摩藩から長州藩に武器などを調達した相手が、このグラバーという人なんだ」

「ふーん。だから?」

「まとめると、長州藩は下関戦争で攘夷に失敗して多額の賠償金を払うことになり、結局攘夷をやめて倒幕の方向に流れることになったんだ。しかし、外国との取引が制限されていて、武器が輸入できない。そこで、坂本龍馬の亀山社中が仲介役となって、長州藩は薩摩藩名義でグラバーから武器を手に入れて倒幕の準備をすることができた、ってわけだ。薩長同盟もその流れで理解できる」

「でも倒幕は時代の流れからいって自然なんじゃないの?」

「確かに教科書では日本国内から倒幕の風潮が現れて自然と倒幕に向かったように見えるけど、先の話の1863年の長州五傑の留学がどうも引っかかるんだよな。何か、準備されていたというか。倒幕に使った武器はやはりグラバーを通して使われたわけだし」

「うーん。じゃあ、江戸幕府は外国に仕組まれて倒幕されたわけ?」

「とも言えるかもしれないんだよなぁ。まだまだ詳しく調べてみないといけないけど、そういう歴史の流れがあるのかもしれない」

「外国はそんなに幕府を倒したかったのかしら…でも海外より遅れている政治をしているんだったら当然よね?」

「…それが、そうでもないんだ」



(続く)

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