人は弱いモノだ。
子どもにとってどんな父親であれ父親が必要だと信じた彼女を、やはり彼は裏切った。
…暴力、それでもなお、その弱さを赦してしまうことへの怒り。この頃感じたやりきれない哀しみを、きっと忘れることはない。
でも、「母は子どもを守るためならなんでもできる、あなたにはわからない」と彼女は言った。
人は強いモノだ。
彼女は、「なによりも子どもが一番大事だ」と言った。
「あなたは、大事ではない」と。
もちろん、何を思ってその言葉を吐いたのかは、アタマでは、わかる。
でも、心では、カラダでは、そんな言葉を理解できるわけがない。
そう、だから、これはもうお互いを理解し合うことなど不可能で、だとすれば、ふたりは徹底的に傷つけあうしかなかった。
「あなたは他の人を好きになるべきだ」と彼女は言った。
「あなたの重荷にはなりたくないのだ」と彼女は言った。
彼女のプライドがそうさせたし、そこで折れることが出来なかったのは、彼女がそういう生き方をする人間だったからだ。それはたぶん、どんなことがあっても変えることが出来ない彼女の根幹。
そして彼女は、自分の存在を、消そうとした。
僕の目の前から、姿を消すことを、彼女は、選んだ。
2004年、もうすぐ春を迎える、そんな時期の出来事。
…それ以来、ふたりが逢うことは、二度と、なかった。
*******
Good Night,Good Night.
あなたが望んだ僕の幸せを、僕が自分の手で掴みに行くまで、こんなに永い時間がかかったよ。
さよならっていう言葉を、きちんと伝えることが出来なかった僕を、どうか、赦して。