この、おかしな国、日本!どうやって生きていくのが楽しいか?

あ~あ~こんな国に生まれちゃったよ・・・・

公開中の映画「ナディアの誓い」の主人公ナディア・ムラドの話から中東情勢について語ります・・・

2019-02-28 16:51:18 | 日記

今回はナディア・ムラドの話の続きです。

 しかしナディアは3ヶ月後にイスラム国から脱出しています。脱出する前に一回捕まって、ひどく殴られたりしながら罰を受けると言って、あちこち連れ回されて下級の IS の戦闘員達にも強姦された。モスルの郊外のチェックポイントと言うけど、たくさんの検問所が道路端にある。そこの若いIS の戦闘員が、「薬を買ってきてやる」とか何か言って、気のいい奴だったんでしょう、ドアを開けたまま行ってしまったところを、スキを狙って、夜のモスルの中に飛び出して、逃げた。

 そして、そこでモスルのイスラム教徒なんでイラク人ですけど、シーア派の家族に、ドアを叩いて鉄の扉を叩いて入れてもらって、そこの長男坊さんがずーっと車で案内して、モスルからキルクークに車で連れて行ってあげた。その時は、アバーヤと、ニカブと、ヒジャブを、そろそろ日本人も覚えなきゃいけない。アバーヤとは、イスラム教徒の厳しい戒律を守る女の人達が来ている黒い黒服です。ヒジャブは、その頭に被る布です。さらに顔の前を隠す黒の布をニカブと言う。その3つで、できています。


女性イスラム教徒の服装の種類

 男性イスラム教徒で、エジプトでもドバイでもイスラム教徒で、日本で言えば和服の紋付袴みたいなものです。男はディスダーシャと言います。このディスダーシャは白い。それにいわゆる布を被ります。


ディスダーシャとアバーヤ

 だからこのイスラム国は、敬虔な祈りの深い祈りのイスラム教徒ということになっている。だからIS は、このナディアをクルディスタン、すなわちクルド人支配地区に逃がしてあげるという親切なこのイラク人の家族は、ヒジャブを着ているんです。黒いヒジャブが、非常に役に立った。ヒジャブでアバーヤを着ている限りは、区別がつかない。その顔を覗き込むことはできない。ナディアは、写真を撮られて、指名手配みたいになっていたが、この黒ずくめのイスラムの正式の女の格好である限り、バレないことが良かったと書いています。

 それでその偽の証明書を作るところがあって、それでこの親切な家族の息子と夫婦ということにして、キルクークにタクシーで向かった。ということはこの2014年段階で、どこがどっちの支配地域かよくわからないのです。キルクークは、その時にはもうすでにクルド勢力に奪還されていたようだ。


イラク北部の地図

 最前線のところで兵士たちはいるから、後ろの方はよくわからないんです。どっちが支配しているのか。その時、行ってみなければ、どっちの旗が立っているかが大事なんです。その後で、2016年です。2年後にモスルを奪還した。解放した。それで一番突撃して、勇敢に戦ったのはクルド人の兵隊です。それとイランのその革命防衛隊です。そして有志連合という言葉で、日本語では言う。日本のテレビで時々出てくる。これは英米仏の西側諸国の軍隊で、爆撃するんです。実際、ほとんど米軍です。米軍の爆撃部隊が支援する。


クルド民兵組織の司令官と握手する米軍将校

 まず ISの部隊を爆撃で叩いておいてから、クルド人やイラン人の部隊が突撃する。ということは、米軍の兵士はそこにはあまりいない。米軍は、あくまで兵隊を訓練する係で後方にいる。死なないようにできている。しかし、先述したように女性部隊まで作って、訓練を与えて武器・弾薬、資金まで与えているのが有志連合です。だからこの米軍の行動は正しい。

<アメリカがISをつくった>

 しかし、ここになんで米軍がもう20年もクルディスタンにいるかというと、イラクのサダム・フセインと戦う、クルド人を応援するという形でずっといた。それが複雑な形になっている。ところが私、副島隆彦が絶対に許せないのは、この ISを7万人の兵隊を育てて作って、恐ろしい人殺し部隊で、クルド人やイラク人のシーア派に対しても残虐なことをして、それからヤジディ教徒達に残虐なことをしたのが、このヒラリーたちが育てたムーニーの、アメリカ国内の勢力のマケインとか、こいつらが戦乱戦争を中東イスラム教徒の世界にまで持ち込む形で本気でやった。

 それで2011年に日本では大地震大津波があった年の10月にリビアでカダフィをぶっ殺した。殺す直前に、ヒラリーがリビア・トリポリに飛行機で入った。直接、カダフィを殺したのはアフガニスタン人の人殺し部隊です。彼らも後で、口封じで殺されます。ヒラリーは、そういう残虐な女です。


ピースサインをするヒラリー

 そしてそれの一年後の2012年の9月に、今度はヒラリーのいちの子分で、ヒラリーが大統領になったら首席補佐官になると言われていた、駐リビア米大使のクリストファー・ スティーブンスが、逆に自分の手下のリビア人達から殺された。これがベンガジ事件だ。オバマは、「ほらみろ、お前がろくでもないことするからだ」と言った。ところがもうその時、すでにヒラリーは国務長官です。2008年2009年から。そのリビア政府から奪い取って、カダフィを殺して、400億ドル(4兆円)ぐらいの資金を手に入れて、それをクリントン・ファウンデーションに送った。


殺害されたクリストファー・ スティーブンス

 そしてさっき言ったヨルダンの北や、サウジアラビアの北の砂漠地帯の秘密基地で、その元イラク兵だったサダム・フセインのイラク兵、スンニ派のイラク兵だった若者たちを ISという凶暴な狂信的なイスラム教の思想を彼らが持っているのを、増幅、増長、拡大させた。そしてイスラム国というのが中東全体を支配するんだ、という恐ろしい作戦を練った。このことを日本人で言う人は誰もいない。理解できない。

 アメリカが、イスラム国というものを作り、そして中東全体に激しい戦乱状態を引き起こして、たくさんの人を死なせた。シリアだけでも2000万人、国民の半分が外国に逃げて、今もかなりの人がトルコやヨルダンに逃げている。そのうちの100万人がヨーロッパにまで押しかけたので、ヨーロッパがてんやわんやの大騒ぎになった。ギリシャの海や、イタリアの海を渡って、100万人以上が押し寄せた。それで大騒ぎになった。これが移民問題です。このことを見なきゃいけないのに、本当のことを語ろうとしない。ナディアの本を読んでいると、ヒラリーという名前は一回も出てきませんが、アメリカが好きなんです。だけど自分たちを助けてくれるアメリカが好きなのであって 、ISを 育てたヒラリーたちのことまで知らないと思う。


シリア難民

 だからアメリカ軍自身が二つに割れて、クルド人を応援している正しいアメリカの兵隊と、ムーニーの恐ろしい日本で言えば安倍晋三一派の繋がりです。そのムーニーのヒラリー一派の恐ろしい戦乱状況を中東全体で、引き起こすことを実行した危ない恐ろしい連中の区別、対立のことを日本人は知らなければいけない。

 まずに知らなきゃいけないのは、モスルとラッカを制圧した時、1000台、2000台ではすまないトヨタのピックアップ・トラックのハイラックスに乗って、砂漠の道を、銃を構えながら行進している ISの部隊がいる。あの真っ白い新車のピックアップ・トラックは、砂漠の道にちょうど適して良かった。


イスラム国が使うピックアップ・トラック

 それらの車をあんなにたくさん何千台ものトヨタの車を、誰が、どこから買って、ISが手に入れたのか。トヨタ自動車自身は、「うちは関係ありません」と発表した。それは明らかにテキサス州のサンアントニオという大きな町で作っている、トヨタのピックアップ・トラックです。それを、どのように輸出したのか。はっきりしていることは、イスラエルのハイファという港がある。そこから陸揚げしている。あとは、サウジアラビアの紅海の方の港から陸揚げしている。こういう真実を日本人も知っているくせに、一言も言わない。車の代金は誰が払ったんだとかいう話も、一切しない。これこそ、ヒラリーたちが、どんなに極悪人かという証拠だ。

 それで、このナディアは、親切なイラク人の男と夫婦だということにして、偽の身分証を持って、検問所を通り越して行った。それから、キルクークからスライマーニアというところに、これはクルディスタンです、に移った。そこからアルビル(Erbil)というところに移ります。そのエルヴィスが、PDKクルド民主党、すなわちバルザーニ議長がいる首都です。


クルディスタンの地図

 このアルビルが、首都だと日本人は、そろそろ分かるべきだ。モスルから、ほんの60キロぐらいのところです。これが驚くべきことです。だから、その戦乱の中にあると、どっちがどっちかよくわからないのです。モスルと、このナディアが生まれ育ったコウチョは、やっぱり60 km ぐらいのところです。たった60キロです。本当に歩いてでも、一晩、二晩、歩けば着くような距離です。そういうところでの激しい争い、戦いだ。だから最前線のところで、戦車隊同士でぶつかり合って銃撃戦をやって、どっちかが負けてということが起きても、そこには普通の人はほとんどいない。それが戦場というものです。道路だけは通さなきゃいけないので、道路脇にいっぱいその焼けただれた戦車とか自動車とか置いてある。それが見える。

 そこから2014年11月中には、ナディアは救出されて、自分のお兄さんたちがいる、その北の方のドホークで、自分の助かったお兄さんたちが入院している、病院で会った。お兄さんたちは機関銃で銃殺されたけど、死体の下にいて生き延びた兄が2人いた。

 腹違いの兄さんと、もう一人のお兄さんです。その兄たちが入院している病院で再会して、みんなで泣いた。さらにそこから北のザーホーという町に、前述した自分のお兄さんのヘズニーがいて、彼が米軍と一緒に救援活動をずっとやっていたようだ。そして、この本のかなり後ろに、自分のナディアの、姪が性奴隷にされている家の主人であるISの幹部の奥さんも怒っちゃって、電話で連絡を取り合って、「あなたのご主人には死んでもらうしかない」ということになった。ISの幹部だから。

 「あなたが家を出る時間を教えて。出かけたら連絡してくれ」と言って、その奥さんはそれ以上のことは何も分からないのだけど、その日のうちに米軍によって、ISの幹部は爆殺されている。有志連合の無人機のプレデターという、無人殺人機で爆殺された。だから普通の人がたくさんいるところの爆撃では、プレデター、無人爆撃機を使わない。正確に殺す。それはアメリカのサウスカロライナ州か、どこかに基地がある。そこからの指令で、画面に映って、それでポンと爆撃して殺す。だからIS の司令部とか、軍事基地だけを正確に狙って殺す。時々それが間違って、結婚式をして集まっているイラク人たちのところに、プレデターの爆撃が起きたと、何十人か亡くなる事件もいくつもありました。病院まで爆撃したこともあった。病院にもISたちが隠れていたからです。そういう事件もいっぱいあります。

 このお兄さんのヘズニーが重要だ。彼のその周りにいる人たちが、米軍と一緒に動いている。その流れの中で、ナディアは2016年にはスイスとドイツに送られて、自分がどういう目に遭ったかを、あちこちで話して回るという活動を始めた。それからベルリンに行って、やがてそれが2018年のノーベル平和賞に繋がった。

 だから裏側には、自分たち家族の動き全部がある。この本の『 THE LAST GIRL』の前の方に、兄弟たちの写真が全部あります。でも、山の自分の家から逃げる時には、全部写真を焼いたり、持ち物を全部捨てたりして、もう着の身、着のままで逃げた。とても大変なことだったと思う。しかし、元が遊牧民だから、日本人なんかよりずっと彼女らは頑丈だと思う。羊も連れて行って、山の方に逃げた。羊たちを順番に殺して食べながら、山の中でも生き延びた。そこまでは、追いかけてこられない、というようなところまで行った。自分たちの宗教のヤジディ教の聖地も、シンジャール山の山の中にある。ここが大事なところだ。

<真実を見抜く>

 モスルは、チグリス川の川沿いにある。シリアのラッカは、ユーフラテス川の川沿いにある。このことを日本人は知るべきです。チグリス、ユーフラテス川は知っているが、そのずっとアラビア海に注ぎ込む、この2つの大きな川です。この流れ沿いに大きな都市が出来ている。このことを私たちはそろそろ知るべきだ。

 このヤジディ教徒は、クルド人だけど、クルド人ではない、という扱いです。自分達は、クルド人ではない、と言った。しかし大きく言えばクルド人でしょう。ただクルド人の宗教とはまた違う。クルド人は、一応、イスラム教徒だけど、シーア派かスンニ派にかかわらず、クルド人であることが優先するという言い方をしています。

 もうクルディスタンは、実質的に出来ています。何と、モスルとキルクーク、この両方も自分たちでは、クルディスタンだと主張しています。ということは、混ざって暮らしているということです。キリスト教徒がいる町とかもある。混ざって暮らしているから、どっちがどっちと、はっきり言えないところが国境問題、領土問題、民族問題の厳しいところです。日本人は、それについてあまり苦しまなくていいから、その意味では大陸性民族ではないから楽なんです。

 まだISの残党がシリアとイラクの国境の辺りにまだいるようです。では、どこから、武器・弾薬・食料の補給をしているか、が分からない。あくまで、サウジアラビア、ヨルダン国境からのヒラリー派のアメリカの軍隊及び、CIAとかの悪辣な恐ろしいやつらの支援ルートがまだあるのだろう。そして、それはシリアの中にも、まだほとんどほんのわずかだけど、残っている。イスラエル側と繋がっている狂暴な奴らがいる。彼らをアルヌスラ戦線と言います。これは、イスラエルが育てているシリア人たちの反政府部隊です。このシリア人たちの反政府部隊が、イスラエルやヒラリー派アメリカ軍の支援で生き延びている。それも、ほとんど撤退しました。

 「白いヘルメット」という組織があって、これがノーベル平和賞をもらおうと、頑張っていた。しかし、彼らは本当に悪辣な者たちで、かわいそうなシリア政府軍によって、爆撃されて死んでいる子供たちを抱えたりして逃げる、という白いヘルメットの連中です。これは、さっさと脱出しました。私は、本当に悪い奴らだと思う。


「白いヘルメット」

 あとはシリア民主軍というのがいる。これは、シリア人でありながらバシャール・アサド政権に反対して、戦ってきた連中です。これは今、シリア北部に逃げ込んで、まだ生き延びている。そこと、トルコが繋がっている。だから、彼らはそれほど悪質ではないと思う。ISほど、悪質ではない。それでもバシャール・アサド(Bashar al-Assad、1965年-)政権と気が合わない。憎しみ合っているシリア人どうしです。


アサド大統領夫妻

 このアサド大統領と、奥さんのアスマ(Asma al-Assad、1975年-)夫人と、この家族は、悪いことを何もしていない。自分の国の国民が、おそらく200万人ぐらいも死んでしまって、大変な目に遭って、自分たちも激しい戦いの中で生きている。家族たちは、特別待遇で防空壕の中で生きているのだろう。アスマ夫人とは、イギリス・ロンドンに留学中に出会った。

 彼女は、英国で生まれ育ったスンニ派シリア人で、ロンドン大学キングス・カレッジを卒業後、JPモルガンの投資銀行部門でM&Aを手がけるキャリアウーマンで立派な女性です。半分イギリス人です。シリアの今の政権は、悪いことをするような人たちではない。それに対して、2回、3回行った 毒ガス兵器を撒き散らしたとか、爆弾を落としたとか、シリア政府が行ったというのは嘘八百です。それは全部、反政府勢力というより、それを動かしているイスラエルやサウジアラビア、それからアメリカの中のヒラリーの系統の悪質な軍人どもがやったことです。


カルラ・デル・ポンテ

 それを、スイス人だけどイタリアでも検察官をやっていた、カルラ・デル・ポンテ(Carla Del Ponte 、1947年-)という勇敢な女性が暴露した。彼女は有力な人で、国際刑事司法裁判所の主任検察官です。ヘリコプターとか、防弾ガラスでできた特別の車とか持っている。強力な人で、2016年にアメリカにまで来て、ヒラリーを捜査するまで言った。「出てこい」とか言って。それぐらい勇敢な女性です。彼女の仕事の業績は、1993年に起きた、旧ユーゴスラビアのボスニア・ヘルツゴビナで、1万人ぐらい殺して埋めた、戦争犯罪者(ウォークリミナルズ)を摘発して裁判にかける仕事をした。その後、国連の人権委員会の委員になって、真実をこのカルラ・デル・ポンテは言い続けている。でも抑え込まれていて、その声は、なかなか日本には届かない。

 ただ『カルラのリスト』という映画が、日本政府協賛で公開された。この映画を私は見た。だからカルラのことを知っている。カルラは偉い。毒ガス兵器を使ったのは、シリア政府ではない、イスラエルが支援する勢力だ、反政府勢力だと言った。だから日本のテレビの論調も、ぐちゃぐちゃにおかしくなっちゃった。シリア政府は悪人の巣だ、みたいな主張が通らなくなった。このシリア政府をプーチンのロシア政府が徹底的に応援し続けて負けなかった。

 シリアの海沿いにあるラタキアと、タルトスというところに、ロシアの軍港と軍事空港がある。そこから、例えばミサイルが27発、飛んできても、イスラエルが発射したと言っても本当はアメリカが発射した21発は迎撃して落とすとか、そういうこともするぐらい高性能の S 300とか S 400という地対空ミサイルを持っている。それはプーチンが、シリア政府だけではなくて、もしかしたらイラン軍にまで渡しているのではないかと、アメリカは怖がっている。

 すると、イスラエルは悪いことばかりしてきたのに、アメリカがあまりあてにならないからということで、ロシアのプーチンにもくっついて行こうとしている。なぜなら840万人いるイスラエル国民のうちの100万人で、この20年間ぐらいで、最近来たイスラエル人たちで、入植地活動で右翼活動する人たちの多くはロシア人なんです。ロシア系のユダヤ人たちです。

 だから第二外国語はロシア語だ、とイスラエルでは言われている。それぐらいの動きがある。複雑な話だから、日本人は、なかなかわからない。私が分かりやすく説明する努力を、私の運命と任務としてやらなければいけない。後でこの The Last Girl にたった1枚載っている地図帳に、私がたくさん書き込みをしています。これも見えるように貼りつけて、基本・基礎知識として、地図と一緒に見てください。自分でも世界地図を開いて確認してもらいたいということです。


公開中の映画「ナディアの誓い」の主人公ナディア・ムラドから中東情勢について語ります・・・

2019-02-14 18:01:01 | 日記

 

 今日のテーマはイラクの北の方のシンジャール山脈というところがあって、そこに暮らすヤジディ教徒(Yazidi)という少数派民族の話です。


ヤジディ教徒の居住地域


ヤジディ教徒

 『ナディアの誓い』という映画が現在公開中です。私は昨年12月に試写会で見ました。また、『バハールの涙』という映画も公開中ですが、こちらは昨年11月の試写会で見ました。どちらの映画もイスラム国によるヤジディ教徒襲撃がテーマになっています。是非見に行ってください。


『ナディアの誓い』


『バハールの涙』

<The Last Girl ナディア・ムラド>

 2014年6月12日から急激に沸き起こって始まった IS「イスラム国」というイスラムの中のジハーディスト(Jihadists)と呼ばれる過激派の連中がいて、それが2ヶ月後にこのシンジャール山脈のあたりに主に住んでいるヤジディ教徒たちが襲撃を受けたという事件から始まります。先の6月12日は北イラクの一番中心の都市であるモスルに ISが出現した。

 この IS イスラム国というのが凶暴な人殺し集団で、2014年から北イラクとシリアで大変な戦争動乱状況に陥った。今、日本人はあまり興味ないんだけど、でも私は今日はこの人のヤジディ教徒の中で、女性たちがひどい目にあってその中から生き延びて現在は、このヤジディ教徒達と北イラクのクルド人たちのための戦いで、言論活動やっているナディア・ムラド(Nadia Murad、1993年―)という女性(現在26歳)についての話をします。


ナディア・ムラド

 このナディア・ムラドは2018年のノーベル平和賞を受賞した。受賞発表は、11月5日でした。ノーベル賞の授賞式は12月10日でした。これはインターネット上の動画配信で見ることができます。

(引用はじめ)

●「強姦被害者支援の活動家2人にノーベル平和賞」
2018年10月5日 BBC
https://www.bbc.com/japanese/45760596

ノルウェーのノーベル委員会は5日、強姦被害者を支援する活動家、ナディア・ムラド氏とデニ・ムクウェゲ医師にノーベル平和賞を授与すると発表した。

ムラド氏はイラクの少数派ヤジディ教徒で、過激派「イスラム国」(IS)に拷問、強姦された後、脱出し、ISに捕らわれたヤジディ教徒解放に奔走した活動家。現在は国連親善大使として人身売買被害者の救済のため活動し、強姦など性暴力が戦争の武器として使われる現状に対して国際社会として取り組むよう訴えてきた。

婦人科医のムクウェゲ医師は、紛争の続くコンゴ民主共和国東部で強姦被害者の治療に取り組み、戦争の武器として使われる性暴力による重傷の治療法を確立してきた。

オスロで受賞者を発表したノルウェー・ノーベル賞委員会のベリト・レイス=アンデルセン委員長は授賞理由について、両氏は「戦争の武器として性暴力が使われるのを終わらせようと努力してきた」ことを挙げ、両氏が「そのような戦争犯罪について社会が認識し、戦っていくよう、重要な貢献」を果たしたと称えた。

「私たちの被害を世界に見てもらいたい」

ムラド氏は3カ月にわたりISに性奴隷として扱われ、繰り返し売買され、性暴力を含め様々形で虐待された。

2014年11月に脱出した後、ヤジディ教徒の人身売買を終わらせるために活動家となり、戦闘手段としての強姦に厳罰を適用するよう国際社会に呼びかけるようになった。

(以下、略)

(引用おわり)

 私は彼女が書いた『THE LAST GIRL ―イスラム国に囚われ、闘い続ける女性の物語』の日本語訳の本を読んだ。それが今年1月11日からです。だからこの本は、このノーベル平和賞をもらうことが決まった後に、急いで翻訳された本ですがしっかりとした翻訳です。東洋館出版社というあまり聞いたことのない出版社から出ています。大変勉強になりました。


THE LAST GIRLーイスラム国に囚われ、闘い続ける女性の物語―

 このナディア・ムラドがなぜ重要かと言うと、彼女一人だけが、そのISの襲撃を受けて性奴隷(セックス・スレイブ)にされて、イラクの北のモスルの方に連れてかれて、それでイスラム・ISイスラム国の幹部たちのところで、無理矢理強姦されて、何人もの男の ISの兵士たちに犯された、という事実から始まっています。

 この女性のノーベル平和賞の受賞の時の演説の様子を見たら分かりますけど、ニコリとも笑わないで、ずっと厳しい表情のまま、自分の言葉であるクルド語で、ずっと演説をしていました。これをスピーチと言わないでレクチャーと英語ではなっています。

<ISの出現>

 それでISイスラム国という 狂暴な連中が、どこから出現したかが本当は大事だけど、世界中、どのメディアもテレビ新聞もこのことをはっきり言いません。ただこのナディアの本を読んでいても、突如出現したという漢字で書かれています。しかし正確にはその2、3年前から、いたようです。


ISの活動地域

 だからもうこれは、ナディアの主張ではないんだけど、北イラクの中心のモスルに、なんで ISが出現したか。

 もう一つは、このちょうどその西側のそうですね、700 km ぐらい離れたところにあるラッカという町があって、ここがシリアのちょうど真ん中のところです。このラッカにも同時に IS が出現した。

 この彼らは7万人ぐらいですが、これはサウジアラビアの北のほうの秘密基地があって、米軍の秘密基地で育てられた人です。もう一つはその西側にあるヨルダンという国の北の方の差別地帯にも米軍の秘密基地があります。そこで育てられた。

 IS の最高指導者のバグダディ(Abu Bakr al-Baghdadi、1971年―)という男は有名になりました。2003年3月20日にブッシュ息子の方の政権の時、そのときからバグダッド爆撃が始まった。これがイラク戦争の始まりです。2003年3月からで、もう2、3ヶ月も、かからずにイラクは制圧されました。そしてサダム・フセインは、2006年に絞首刑になった。


バグダディ

 だから2003年の「イラク戦争」と言うけれども、これは正確にはアメリカによるイラク侵略戦争です。ただアメリカではそうは言わなくて、「ウォー・イン・イラキ(War in Iraq)」と言います。イラクにおける戦争で、テロリストと戦う、アゲインスト・テロリスト(Against Terrorists)と言います。だからシリアにいる、その当時はサダム・フセインの軍隊、および勢力に対する戦いということになっています。

 それでこのナディアの本を読んでわかることは、2003年に、すなわち今から16年前に、米軍がこのナディアたちが住んでいるコウチョというこのシンジャール山地の山裾の、わりと山岳地帯の草原の、チロル山地みたいな牧草があるところで、山羊や羊や牛や馬とかを飼っている。ここで小麦の栽培とかもできたようです。トマトとか。ここにも米軍が来ています。それをナディアたちが歓迎しています。

 その時にイラクは米軍によって制圧された。当時16万人の米軍がいました。それは2007年ぐらいに2万人が、増派されているから、それの数だと思います。16万人が限度だったと思う。それで、そのヤジディ教徒であるナディア達は、米軍に慣れ親しみ、好感を持っている。なぜなら、この北イラクのこのシンジャール山脈を中心にして、シリアの方にも住んでいて、全部合わせても100万人と言われています。このシリアとイラクの真ん中あたりの北の方です。

<クルド人の国、クルディスタン>

 このヤジディ教徒は少数民族ですから、イラク人からも長年、差別されてきています。そして、複雑なのは、このトルコの国境線の南側をずっと2000km以上あるのですが、ここにクルド人たちが逃げてきて、亡命政府を作ってトルコ国内のクルド人達と団結して、トルコからの分離独立運動をやっている。このクルド人は、もうなんとシリアとの国境線で、ずーっと地中海の方の、かなりもう地中海に近いところまでいます。そこに国境線の南側にシリアの方に重要な町があって、ここになんとトルコのエルドアン首相のトルコの軍隊(戦車隊)が襲撃してきて、2年ぐらい前に戦争になりました。


クルド人居住地域(クルディスタン)

 このずーっと国境線沿いにいるクルド人達の勢力のことも クルド女性防衛隊(YPJ、Yekineyen Parastina Jin‎、Women's Protection Units)と言います。これは軍事組織の女性部隊がいることで有名です。それがずっと繋がって、トルコ国境、南側国境のずーっと東側で何とイランとの国境線のところまでずっと続いている。このイランとの国境線全体にもクルド人の勢力がいます。もっともっと言うと、クルディスタンと言って、クルド人の国というのが実質、出来上がっています。クルド人は、全部で2000万人ぐらいいます。


YPJの兵士

 そしてイラクのずっと南の方にバグダッド(首都)がある。それよりは500キロぐらい北の方です。このイラク人、イラク国民ではあるわけですが、イスラム教徒のイラク人ではない。ところにイラク人も2つに分かれていて、大きくはスンニ派イラク人とシーア派イラクです。シーア派は、簡単に言うとイランに近いイスラム教の宗派です。イランに近い。わりと差別されている。差別されている人たちです。

 主流派はスンニ派と言って、イスラム教の戒律を守る人達という意味です。スンニー、スンナーとも言います。これがサウジアラビアとか他のイスラム諸国では多数派です。しかしシーア派もなかなか負けていなくて、実はイラク国全体の6、7割ぐらいは何とシーア派です。すなわちイランに近い。シーア派は教祖さま、イスラム教の創業者のムハンマドの娘の、アリーをもらった。アリーという人がいて、それが第3代カリフです。その人たちがスンニ派に殺された。正確にはいろいろあります。ムハンマドの家系を大事にする。しかし家系は残っていません。そのスンニ派とシーアの争いはもう説明しません。


クルディスタン内の勢力

 イランの方に近いということは、このクルド人のクルディスタンの一番大きな勢力は 、KDP (Kurdistan Democratic Party)と言って、クルド民主党と訳します。クルディスタン・デモクラティック・パーティーです。英語で名乗ります。このクルド民主党は、マッスード・バルザニ(Masoud Barzani、1946年―)議長が指導者です。彼らは、この KDP は、イランと親しい。そしてここにはイランの革命防衛隊(民兵組織)という軍隊が、第2軍隊みたいなのが入り込んできている。なんとイラクからずっとシリアを通り越して、さらに地中海にまで到達している勢力です。

 地中海には首都がベイルートであるレバノンという国があって、ここでイスラエルと向かい合って対峙、対決している。このレバノンに2万人ぐらいのヒズボラという軍事組織がある。軍隊、兵隊がいます。このヒズボラの資金源とする宗教シーア派は、イランに非常に忠実です。イランからの補給と資金援助がある。これがずっと北イラクとシリアから繋がっているということです。

 ところが、トルコを小アジア半島と言います、トルコの東側半分の山岳地帯には1000万人のクルド人がいます。この1000万人のクルド人は PKK(Partiya Karkeren Kurdisteane、Kurdistan Workers' Party)という政党を支持しています。これはクルド労働者党と訳します。ここから今、実力のある若い指導者が出てきて、これはトルコの首都アンカラの国会、国民議会の中でも、おそらく20、30人の議員を持っていて、1000万人の勢力なんですね。

 このPKKの軍事部門がさっき言ったYPGなんです。この YPGをトルコのエルドアン政権は目の敵にしていて、絶対、攻め滅ぼしてやる、とか言っている。しかし現実には、その1000万人がトルコ国内にいる。クルド人がトルコ国内にいる。すると、この PKKから出ている合法的に活動している政治家たちがいる。ここが複雑だ。

 それで、つい最近、去年の12月にトランプが、シリアにいる米軍の部隊を撤収させると、発表した。それでゴタゴタして、マティス国防長官が怒って辞めるという事態になった。この米軍のシリアの北の方にいる部隊は、何をしているかと言うと、なんとこのYPG というクルド人の部隊を援助支援している。米軍の武器弾薬を与えて資金援助もしている。ここYPGには女性部隊がいます 。このYPGの女性部隊が強い。

(引用はじめ)

●「IS支配地域の「100%奪還」、1週間内に発表へ トランプ氏表明」
2019年2月7日 AFP
http://www.afpbb.com/articles/-/3210003

ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領は6日、ワシントンでの国際会議で演説し、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」は1週間以内にシリア国内の全支配地域を失うとの見通しを示した。同大統領はまた、ISとの闘いに引き続き重点的に取り組むことを確約した。

会議はISとの今後の闘いを主題に米国務省で開かれたもので、70か国余りの政府高官が出席した。

大統領は昨年12月、ISに対する勝利を宣言し、シリア駐留米兵2000人全員の撤退を命じることを突然決定していた。

大統領は会議で「米軍、有志連合参加国、シリア民主軍(SDF、クルド人主体の民兵組織)は、シリアとイラクでISIS(ISの別称)の支配下にあった地域を事実上すべて解放した」と発言。「支配地域の100%を奪還したことが、来週のうちに正式発表されるはずだ」と述べた。

さらに大統領は、米国は「とても、とても厳しい」態度を維持すると述べ、各国に資金協力などの取り組みを呼び掛けた。

大統領は「彼らはただの残党だ。だが、その残党が非常に危険な可能性がある」とし、「ISISの狂気の残りひとかけら、最後の1人を打ち破り、イスラム過激派のテロリズムから国民を守るため、あらゆることをする」と確約した。

(引用おわり)

 それよりもっと東側のイランに近い方の KDP の軍事組織のことを、ペシュメルガと言います。そのペシュメルガが最大軍事組織です。これがおそらく勢力で5万人ぐらいいると思います。この中にも女性部隊がいます。この女性部隊も実は、そのペシュメルガも米軍からの資金援助と軍事援助、だから戦車や戦闘機や機関銃とかも米アメリカ製です。と同時にイランからも支援を受けている。この KDP クルド民主党が一番大きい。



 でもその北の国境線を北に抜けると、そこはトルコで、そこには PKKがいて YPGの勢力がいる。同じクルド人なのに、この複雑さがあります。もう一つ、このもうちょっと南の方に行くと PUK という、このクルド人の政党があって、タラバニ議長がいます。これはクルド愛国者党と名乗ります。この PUK の話はもうしません。複雑になりすぎるから。大した大きな組織ではないと思います。ただこのPUKがいるイラクの真ん中辺りの、このイラン側の方はキルクークが近くにあります。

 キルクークという町は、石油がたくさん出るところです。キルクークより、もうちょっと南のとこにチクリートというところがあって、ここも石油が出る。ここが首を吊られて殺された処刑されたサダム・フセインの生まれた、生地です。このキルクークの油田の奪い合い、というところがイラク戦争の時の一つの目標でした。


イラク北部の地図

<残忍なISからの脱出>

 それで最初のこのナディア・ムラドは、8月20日ぐらいに村が襲撃された。このコウチョ村が襲撃されて、シンジャール山の方にたくさんの人が逃げたみたいです。それは何万人、逃げたかわかりません。書いてない。ところが、ナディアたちは村に残っていた。

 そしてISが現れて、小学校に連れてかれて、もうその時にはもう殺されるという段階に来ていた。それでも村の長老達は、まだ話し合いでなんとかなると思っていた。そしたら300人ぐらいの男たちが、その小学校の中でさらに分離されて、引き剥がされて、女たちだけ残された。男は脇毛が生えているか、生えていないかで、生えていなかったら少年として扱われて13歳以下ぐらいで、女たち、親たちと一緒にいる。それ以上は、成人の男たちということでトラックで何台かで連れてかれて、遠くの方からタン、タンと音が聞こえた。男たちが殺されたと言って、女たちは泣き叫んだ。それが2014年8月20日ぐらいに起きた。

 それでナディア達は、そのお姉さん二人もいるんだけど、11人兄弟で女3人なんです。5人の自分のお兄さんたちが殺されています。この残った3人の兄貴が実は非常に重要な働きをしている。兄の名はロジャーと、ハイリーと、もう一人、ヘズニーです。このヘズニーが、何と後々、北イラクの YDPペシュメルガの勢力圏の街のザーホウという所にいて、もうトルコ国境と近いところです。ここでなんと自分の友人が、アメリカのヒューストンにいて、携帯電話でずっと連絡を取り合って、それで自分のヤジディ教徒を救援する仕事をするんです。

 それでまず自分の妹のナディアを助け出さなきゃいけない。どうもこの時にそのアメリカ軍と一緒に動いている。自分の友達がヒューストンにいて、それでこのヤジディ教徒は語学ができる。英語を勉強して身につけている。この兄のヘズニーは、ヤジディ教徒の救援組織を作った。


ヤジディ教徒の脱出経路

 ヤジディ教徒も、その山に逃げた人たちはシンジャール山を北に超えて、 YPJ のクルド人の支配下に逃げ延びるルートを米軍とかが開発、開拓した。そっちの方に逃げた人たちも何万人もいるようです。その北の方の山岳地帯は、ずっと繋がっていますからそのヤジディ教徒たちもその逃げ延びたら助け合いを始める。ここで言っておかなければいけないことは、ヤジディ教徒はクルド人の一種だと思う。しかし本人たちは認めていない。しかしクルド語を喋っています。そして宗教が違います。イスラム教ではない。

 しかしナディアたち頭のいい子は、アラビア語を喋れるようになります。アラビア語を喋れるようになって、イスラム教のお祈りの言葉とか覚えるんです。それで自分たちの身を守るんです。この複雑なところで生きている。

 ナディアたち女たちは、歳をとった女と、さらに二つに分けられて、後でわかったけど、お母さんたちもやっぱり男たちが殺された後、山の方で集団銃殺されて、溝みたいなところに埋められて、上からブルドーザーで土を被せてある。集団墓地といいますか、それがずっと後で、2016年になって発見されます。

 だからナディアは、家族が相当、殺されていますから怒り心頭です。そして自分達はまずモスルにつれていかれて、性奴隷にされた。イスラム国の幹部たちのところにいくらで売られたか知りませんが配分されていった。そして処女を奪われた。そこは立派なお屋敷みたいなところで、高級住宅街がある。それも、その前はイラク人の偉い人たち、裁判官とか金持ちたちが住んでいるところを接収して、占領して ISの幹部たちが住んでいる。そこに連れて行かれて裸にされて、強姦された。それが繰り返される。