黒猫のつぶやき

法科大学院問題やその他の法律問題,資格,時事問題などについて日々つぶやいています。かなりの辛口ブログです。

「シンポジウム 法科大学院教育の現状と今後の課題」(記事紹介)

2006-03-06 12:34:48 | 司法一般
 3月4日に,弁護士会館2階クレオで第二東京弁護士会主催の「シンポジウム 法科大学院教育の現状と今後の課題」が開催されました。
 ブログで既に法科大学院についていろいろ書いている黒猫としては,できれば参加したいなとは思っていましたが,先週事務所の所長が入院して仕事が忙しかったのでブログの更新も滞りがちな状況であったため,今回は休息の欲求に勝てませんでした。
 ただ,このシンポジウムについては,Yuichiroさんのブログで概要とかなり詳細な感想が書かれていますので,紹介とともに黒猫の感想を若干述べさせて頂きたいと思います。

http://waseda.livedoor.biz/archives/50481078.html

 このブログでの感想を読む限り,どうやらシンポジウムの内容は法科大学院の推進者たちの議論を中心にした,意地悪く表現すれば「大政翼賛会」ならぬ「法科大学院翼賛会」と言うべきものであったようです。黒猫はむしろ行かなくてよかったですね。行ったら激昂したかもしれません。
 パネリストたちの発言要旨では,いずれも理想論としては一見まともなことが言われているようなのですが,そもそも法科大学院制度がまだ一期生も法曹にならないうちから批判的な物議を醸すようになったのは,
(1)法科大学院構想は,外見は「新しい形の法曹教育」などといった美辞麗句で固められていますが,目指すべき具体的な方向性は論者によって言うことが違っており,あまり一貫していない。
(2)法科大学院構想は,質の高い法曹を数多く養成するという,考えてみればかなり難易度の高い目的を実現する必要があるのに,その目的を実現するための具体的な制度設計がかなり杜撰で,実際の教育内容は各法科大学院の野放しに近い。
 もっとも,(1)がそもそも一貫していない以上,(2)も作りようがないが。
(3)実際における各法科大学院の教育体制もばらばらで,噂によると大学法学部と大して変わらないような授業をしているだけの教授もいるようであり,法曹に必要な「質」を確保できるような教育がなされているのか大いに疑問である。
 なお,出席者のうち那須先生が
  「弁護士はプロフェッションでなければならない。」
  「教え子には受かってほしいが急激な増員は質の低下を招く。」
  「対応策としては、法科大学院自らの選抜意識だ。」
  「不適格者には1年目で引導を渡すべきだ。」
  「ときに退学させる強い態度が各法科大学院に必要だ。」
といった発言をされているようですが,これは裏を返せば,現実にはそういうふるい落としが全く出来ていないということでしょう。
 (2)と(3)については,(2)が建物の構造設計の問題,(3)を施工の問題になぞらえれば,ヒューザーが起こした耐震強度偽装事件の問題とも一脈通じるところがあると思います。
 質の低下という問題については,那須先生のほか横井先生もそれを危惧する趣旨の発言をしているようですが,それに対する四ノ宮先生の反論は「その議論はすでにおわったと考えている」だそうです。
 穿った見方をすれば,このシンポジウムは,杜撰な法科大学院制度が社会問題化する直前期における,狼狽した関係者の悲鳴に近いものであり,一般参加者はそうとも知らずに素直に聞いて拍手していたという,非常に滑稽なものだったのかもしれません。もちろん,感想を書いた人が批判的視点を持った人なのでそのように読めるのかも知れませんが。

40 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
黒猫様 (情報提供)
2006-03-06 14:59:37
このシンポジウムに、シンポジスト

として参加された大宮法科大学院の

現役の学生の方のブログの、

3月4日の記事に、

シンポジウムの詳細な報告がなされて

います。

http://blog.livedoor.jp/t_yonetani/

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Unknown (記事のアドレスは)
2006-03-06 15:01:31
http://blog.livedoor.jp/t_yonetani/archives/50610725.html

と、



http://blog.livedoor.jp/t_yonetani/archives/50610734.htmlになります。
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法科大学院いいんじゃない? (Unknown)
2006-03-06 18:42:07
現在の弁護士がどれほどの質をもっているというのでしょう?単に六法の記述式試験に合格しただけではないでしょうか。それがそれほど価値のあることですか?



普通に民間会社で働いている人々の中にも(というか中にこそ)ほんとうにたくさんの有能が人がいます。



そもそも法律サービスなど一定の能力があれば大方は用が足りるでしょう。また特に何度が高い仕事はそもそも現行の司法試験にうかったくらいではできないでしょう。



法科大学院はそんなに駄目でしょうか?
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Unknown (Unknown)
2006-03-06 19:09:56


法科大学院いいんじゃない? (Unknown へ



横から意見言わせてもらいます。



民法の危険負担の処理や刑法の故意論についてあいまいな知識しかない法科大学院卒未修生が弁護士になったら、司法制度自体にたいする国民の信頼が失われます。



社会経験という優秀さと、法律家として十分ということは次元が違います。これは、公認会計士の場合も当てはまりますが、我々が目指しているのは専門分野でのエキスパートです。上司にゴマすりがうまいだけでは法律家として仕事はできません。

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まあまあ (Unknown)
2006-03-06 19:54:25
危険負担や故意論の処理ができないようでは,さすがにロースクールを進級して新司法試験に合格できないでしょう?

それは論理飛躍ですよ。



それから社会経験があれば法律家の適正があるなんてことは誰もいっていませんよ。ただ,ロースクールに進学するたくさんの社会人入学生が法律家として生きていく適性をもっているとは思いますが。



上司にゴマすりがうまいだけって。なんともステレオタイプな(笑)
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どう評価するかは難しいですが (新司法試験プレテストの結果)
2006-03-06 20:12:58
新司プレテスト・九大教授いわく、「惨憺たる結果」「目を覆わんばかりの惨状」





【公法系科目】

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

優秀・・・・・・・・  0  ( 0.0%)

           

良好・・・・・・・・ 14  ( 2.8%)

           

一応の水準・・・・・ 239  (47.8%)



不良・・・・・・・・247  (49.4%)

【民事系科目】

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

優秀・・・・・・・  0  ( 0.0%)

良好・・・・・・・ 19  ( 3.8%)



一応の水準・・・・・ 224  (44.8%)

不良・・・・・・・・・257  (44.4%)

【刑事系科目】

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

優秀・・・・・・・  0  ( 0.0%)



良好・・・・・・・ 20  ( 4.0%)



一応の水準・・・・ 218  (43.6%)



不良・・・・・・・262  (52.4%)

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 どの科目においても



「優秀」評価は、0(!)、

「良好」評価も、5%以下しかおらず(!)

「不良」評価が、およそ半数を占める



 という状況である。



この結果について、九州大学大学院法学研究院・七戸克彦教授は、受験新報2006年1月号の特集記事において「惨憺たる結果」 「目を覆わんばかりの惨状」

と表現している。

http://lswatch.blog32.fc2.com/blog-entry-41.html
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がんばれロー生 (新司法試験プレテスト短答)
2006-03-06 20:16:46
全受験者1874名中、最低ライン(40%点)通過者





    公法系科目 1507名(80.4%)

    民事系科目 1645名(87.8%)

    刑事系科目 1053名(56.2%)

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄



刑事系科目だけで約半数が「足切り」される。



http://lswatch.blog32.fc2.com/blog-entry-44.html

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前向きな議論を (Unknown)
2006-03-06 20:48:12
しかし現在の弁護士制度の問題点については多くの国民が感じているところでしょうね。少なくても制度改善が必要だと。



政府が決めたんですよ。少なくとも国民のある一定程度の一般意思がはいった政府が。弁護士増員を望むか?って一般の人に聞いてみるとそりゃ望むっていうでしょう。



だから法科大学院をいかによりよい制度にしていくかを議論してけばいいんじゃないですか?頭から駄目だ駄目だって決め付けたい力が働いているような気がしてとても気になります。



司法試験の一点選抜より法科大学院の教育のほうがそりゃいいでしょう。普通に。制度の過渡期に混乱なしってことはないですよ。ありえない。趣旨としてはいいんだからじっくりよいものにかえていく議論をしませんか?
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Unknown (ぼやき弁護士)
2006-03-06 21:17:17
政府が決めたら問題ないのか?法律事情、法曹事情、司法の問題点はやはり法律家の意見を尊重すべきであろう。一般の人が「弁護士増員を望む」というのは、これまでに築かれた弁護士に対する信頼からそう言っている。法的知識、リーガルマインド、法律家としての倫理など一定レベルを備えたこれまでの法律家に対する信頼が基礎にあるのだ。もし、これが欠けた法律家が輩出されれば、国民からは一度にソッポを向かれるだろうし、国民に実害が及ぶのでは?司法試験について「一点選抜」だと攻撃されてきたが、果たしてそうか?全科目について網羅的に勉強し、議論を積み重ねて全般的な力量をつけて司法試験に挑戦し、合格してきた法律家が殆どではないのか。法曹人口(弁護士人口)の大幅増員→司法修習の容量不足→法科大学院へと話が進められ、その過程で司法試験=一発試験、法科大学院=プロセス重視という図式で現行司法試験が攻撃されただけの話ではないのか?新司プレテストの結果を見た教授が「惨憺たる」「目を覆わんばかりの」実情を指摘しているとすれば、ことは深刻なのでは?
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前向きに (きゃんた)
2006-03-06 21:19:48
学部教育ですでに負の実績があるのに、ほぼ同じメンバーが行う法科大学院の教育がいいと思うのはおめでたいことです。



本気でロースクールを法曹養成の中核に据えたいのなら、

1 学習指導要領の策定

2 少なくとも必修科目の単位認定は全国共通試験で行う

など、卒業生の粒をそろえる措置を採って、学部とは違うところを示す必要があると思われます。
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