野に撃沈

多摩地区在住の中年日帰り放浪者。ペンタックスK10Dをバッグに野山と路地を彷徨中。現在 野に撃沈2 に引越しました。

廃村倉沢集落を訪ねる

2008-09-19 | 旅行
 東京奥多摩にあるという廃村倉沢集落を訪ねた。家屋がまだ残されていると思っていたのだが、残念ながらH17年に全て解体された後だった。

 倉沢谷に架かる鉄橋。


 苔むした岩肌


 タマアジサイがこの時期でも咲いていた。




 日原街道の倉沢バス停から100mほど先を急な山道に入る。暫く登っていった所に都指定天然記念物の倉沢のヒノキがある。


 大ヒノキの脇を下っていった先が元倉沢集落だ。空気が一変した。


 数十戸あったという家屋はほとんど解体されていて、立ち入り禁止のロープの向こうに古材が積み重ねられている。






 集落全体は急な階段で結ばれている。


 ここは共同炊事場だったようだ。


うち捨てられたビン。何か寄り集まって、ひそひそと昔語りを交わしているかのようだ。






 建物が解体された後には剥きだしの暮らしの跡が残されている。家屋がないせいか、生活臭はあるもののそれほどの生々しさは感じない。がそれも、やがては時の経過とともに自然に飲み込まれていくのだろう。





積み上げられた石垣を破って木が生えている。



 斜面の一番上に唯一残されていた廃屋。太い水道管が引かれていたところを見ると浄水場だったのか、それとも共同浴場だったのだろうか。



 今は殆ど使われることのなくなった金属製の湯たんぽ。どんな人の懐に抱かれ、冬の厳しい寒さを凌いだのだろうか。






 子供のビニール製の玩具があった。他の物達が時の流れに任せて朽ちて行くのに気づかず、取り残されてしまったようだ。色のない世界の中で、原色の断片が切なく胸を締めつける。




 僅か数十分の滞在にもかかわらず、妙に体がけだるい。次第に辺りの空気が濃く重くなってきた。このままでは座り込んで暫く動けなくなってしまいそうだ。呪縛に耐え切れなくなくなる前に、集落から離れ倉沢谷に降りた。


 谷はここ数日の雨で、山の随所から小滝のように水が噴き出していた。ちっぽけな人の営みや盛衰など、ましてや安っぽい感傷など一気に押し流すかのような清清しい水の勢いだった。

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