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フィンランド映画「浮き雲」を再び観る

2023年09月25日 | 映画

フィンランド映画の「浮き雲」を再び観たくなった。1996年、フィンランド、監督アキ・カウリスマキ、原題:Kauas pilvet karkaavat。原題をGoogle翻訳で「遠くに雲が逃げる」とでた。日本の成瀬巳喜男の映画に同じような題名の「浮雲」があり、大好きな映画だが、カウリスマキの「浮き雲」もなかなか良い映画だったとの印象がある。

JALが発行している雑誌に「アゴラ」がある。以前は毎月送ってきていたが、最近はオンラインで見るようになった。だいぶ前のアゴラに作家の村上春樹が書いた紀行文「シベリウスとカウリスマキを訪ねて、フィンランド」というのがあった。

その中で、村上氏がフィンランドの映画監督アキ・カウリスマキが好きで、彼の作った映画は全部見ていると書いていたので興味を持った。フィンランドと聞いて何を思い浮かべるかと自問し、1にアキ・カウリスマキ、2にシベリウスと書いてあった。

それでアキ・カウリスマキの映画を片っ端から見たことがあったが、結構良い映画が多かった。カウリスマキは1957年生まれの今年66才、兄のミカ・カウリスマキと一緒に映画製作をしている。監督だけでなく、脚本・俳優もこなす。彼の作る映画はフィンランドを舞台にした、社会の底辺にいるフィンランド人の生活を描いたものが多い印象がある。

「浮き雲」はカウリスマキの敗者三部作の第一作目、第二作は「過去の無い男」、第三作は「街のあかり」。

中年夫婦の亭主ラウリ(カリ・ヴァーナネン)は路面電車の運転手をし、奥さんのイロナ(カティ・オウティネン)はレストラン“ドゥブロヴニク”の給仕長をしている。亭主はリストラされ、奥さんもレストランのオーナーがチェーン店に経営権を譲渡し、社員は全員クビになってしまう。夫婦そろって失業し、職探しをするがなかなか見つからない。イロナが元同僚からレストラン経営をやらないかと持ちかけられ、プランを立てるが銀行が資金を貸してくれない、自動車を売ったりするがとても足りない。その時、イロナがパート先の美容院で偶然に“ドゥブロヴニク”の元オーナーと再開し、身の上を話すと、金を出してくれることになり計画は一気に進む。

この映画を見直した感想を述べてみよう。

  • 結末に希望があるのは救いだ。ただ、うまくいきすぎ、という感じもする。これがフィンランド人にうけるのだろうか。最後の場面まで出演者は皆、寡黙で、議論したり抵抗する感じではない暗いイメージで描かれてるが、これがフィンランド人気質なのだろうか。
  • 夫婦の生活は苦しいはずだが、家の中はカラフルに装飾されている、壁紙やソファーがカラフルだ、イロナのコートも赤の派手なものである。部屋の壁には絵がいっぱい掛けてある。犬も飼っている。大型アメ車に乗っているのが違和感ある。これだけ見ると結構豊かな生活に見える。ただ、ソファーや本箱、カラーテレビは全部ローン返済中である。
  • イロナが勤めていたレストラン“ドゥブロヴニク”もカラフルな内装の店だったのでこれがフィンランド人の好みなのかなと考えたが、最後にイロナ達が経営することになったレストランは全然カラフルではなく普通の内装であった。
  • 冒頭にイロナが働くレストランで黒人がピアノでジャズのナンバーを歌っている場面があるが、英語で歌っていた。これもちょっと違和感ありだ。また、最初の30分くらいのところではチャイコフスキーの交響曲悲愴が流れていたのはこの映画の主人公の悲惨な状況に合う曲として選んだのか。
  • イロナが失業して生活に困窮したとき、ふと棚にあった小さな子供の写真の前で悲しい顔でたたずむ場面があった、夫婦には子供がいたが亡くなったのだろう。これがこの夫婦になんとなく暗い影を投げかけているのだろう。
  • カティ・オウティネンは1961年生まれのフィンランド人、カウリスマキ映画の常連女優である。美人ではないし、役柄上、暗い感じのする役が多いが、なんとも言えない味がある女優であり、私は好きだ。
  • 通貨の呼称がマルクになっていたが、ネットで調べると旧通貨はマルッカ(markka)なのでこれがマルクと聞え、そのまま字幕翻訳したのかもしれない。

他のカウリスマキ映画ももう一度観てみたい。



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