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映画「関心領域」を観た

2024年05月27日 | 映画

近くのシネコンで映画「関心領域」を封切初日に観てきた、今日は6回見れば1回無料の権利を得ていたので無料であった。結構観客が入っていた。2023年、アメリカ・イギリス・ポーランド、105分、監督ジョナサン・グレイザー、原題:The Zone of Interest

ジョナサン・グレイザー監督がイギリスの作家マーティン・エイミスの同名小説を原案に手がけた作品で、2023年の第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門でグランプリ、第96回アカデミー賞で国際長編映画賞を受賞

タイトルの「The Zone of Interest」は、第2次世界大戦中、ナチス親衛隊がポーランドの郊外にあるアウシュビッツ強制収容所群を取り囲む40㎡の地域を表現するために使った言葉で、映画では強制収容所と壁一枚隔てた屋敷に住む収容所の所長ルドルフ・ヘスとその家族の平和な暮らしを描き、観る人に何かを考えさせる映画

空は青く、誰もが笑顔で、子どもたちの楽しげな声が聞こえてくる。1945年、アウシュビッツ収容所の隣で幸せに暮らす収容所長の家族、しかし、隣接するアウシュビッツ収容所からは銃声などの音、建物からあがる煙、その他の気配から、不気味な雰囲気が伝わってくる、そのコントラストから観ている人は何を考えるべきか

ジョナサン・グレイザー監督は「この作品では加害者側の視点で見えるものを描ければと思いました。この作品で訴えたいことは『我々は何も学んでこなかったのか?』、『なぜ同じ過ちを繰り返すのか?』ということです。現代とは関係のない80年前を描いた歴史映画を見せるつもりは一切なく、いまの時代に訴えかける作品にすべくフレーミングした結果、こういう作品ができました」と語っている。

映画を観た感想などを書いてみたい

  • 従来にない「ナチもの」であり、非常にユニークなアプローチを考えたと感心した
  • 音と暗闇を効果的に使っていると思った、映画の冒頭、タイトルの文字と不気味な音が観客を圧倒し、その文字がだんだん音とともに深海に沈んでいくように消えていく、そして小鳥のさえずりが聞こえてきて、収容所の隣家の平和な暮らしが描かれ始める、うまい演出だ
  • 収容所所長の家族にとっては、この家は贅沢で住み心地がよく、隣の収容所で何が行われているが薄々わかっているが、そんなことはどうでもよい、現実の生活を前にして人間とは弱い生き物だ、ただ、同居していた妻の母はある日、手紙を書き残し出て行ってしまう、その手紙を見て焼いてしまう娘である所長の妻、母のほうが歴史の批判に耐えられる行いをした
  • 所長の妻の役を演じていたのは、あの「落下の解剖学」で観たザンドラ・ヒュラー(1978年、独)だ、今回もなかなかいい役を演じていた
  • 所長のルドルフは成績優秀で効率的に仕事を行い、上層部から評価される、それで他の場所に栄転が決定するが、妻は隣家を離れたくないと言う、仕方なく上層部に単身赴任を申し出て認められる、家族の強い要望に弱い小人物が重大犯罪を実行する滑稽
  • 夜、暗闇の中でルドルフの娘がカゴにリンゴを入れて収容所に入り込み、土塁のようなところに一個ずつ埋め込む、それが何を意味しているのか分からなかった
  • また、最後のほうでルドルフが病院のベッドに横たわり、先生からの問診に答え、医者から腹部の触診をされる、その後、軍の建物の中で一人階段を下りているときに吐き気を催す、これが何を意味しているのかも分からなかった
  • 最後の終わり方が何となく拍子抜けするような感じがした、突然、テレビのスイッチを切られたような感じがした

国家の命令、組織の命令であればどんな犯罪でもやってしまう人間の弱さ、いい暮らしのためには本当は問題ある行為をしていても、正当化してしまう、程度の差こそあれ、現代でも十分起こりうることでしょう

同じ状況になったら自分はどうするか、あまりにも重い問題だから簡単には言えない、命令に反すれば自分や家族の命にかかわる

もう少し身近な問題でなら考えられるかもしれない、最近、NHKで不正等の内部通報制度の問題点を取り上げた番組をやっていた、組織内の不正を目にして内部告発をした正義感ある通報者がバカを見て、被害を被る事例だ

超一流会社でも不正が起こっている、有名電気メーカー、自動車メーカー、損害保険会社などなど、社員たちが不正を正当化する理由はいっぱいある、ジャニーズ問題も同じだ、不都合な事実は黙認する、同じことが他にもあるだろうと容易に想像できる

いずれにしても問題が大きすぎる、重大な危険を察知したら逃げる、クラシック音楽の世界でもナチの迫害を恐れて欧州から逃げ出した指揮者、作曲家などはいっぱいいた、しかし、現実問題、そんなことができるか

監督はこれから本作に触れる日本の観客に向けて「我々は、黙認や共犯関係を拒絶する力を持っているということをお伝えしたいと思います」と訴えたそうだが、それは場合によっては命がけだということでしょう、考えさせる映画だけど、もやもや感は残った

 

 



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