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加藤陽子「それでも、日本人は戦争を選んだ」を読む(その2)

2023年08月22日 | 読書

(承前)

本書は、2007年の年末から翌年の正月にかけて、神奈川県の私立栄光学園高等学校(男子校)の生徒に5日間にわたって加藤教授が日本の近現代史を講義したものである。

本書を読んで参考になった所や教えられたことが少なくなかった、その一部を述べてみよう。

  • 満州事変前後に、満州事変と東大生の感覚、ということが書いてある。満州事変の2ヶ月前に東大生に「満蒙の武力行使は正当なりや」を問うと何と88%が「然り」と答えた、また、事変後のアンケートでは「満蒙を日本の生命線とみなすか」と「満蒙問題は軍事行動をもって解決すべきか」と聞いているが、854名の学生の9割が「はい」と答えている、と紹介している。
  • そして、少なくとも国家がやる行為について批判精神があると思われる集団の中でさえ、ちょっとでも針で突けば暴発する空気はあったとしている。これに関する加藤教授の考えがハッキリ書いていないのが残念だ。

  • 本書で引用されている文献には自分が今まで知らなかったり関心を持たなかったものも少なくない。例えば、陸奥宗光の「蹇蹇録(けんけんろく)」は読んだことがなかった。早速購入して引用箇所を確認してみた。時間を見つけて全部読了してみたい。
  • 「満蒙は日本の生命線だ」と軍部が国民に訴えていたが、加藤教授は本当の意図は違うと指摘している。石原莞爾が木曜会の1928年1月の会合で「我が国防方針」を説明し、対露戦争のためには全シナを根拠として遺憾なくこれを利用すれば20年でも30年でも戦争継続できる、と述べていることを紹介している。対露戦や米国との持久戦争のため満蒙の資源を利用するというのが真の目的だと主張されている。満州事変や石原莞爾については今後更に勉強して、知識を深めて行きたい。
  • 盧溝橋事件について、その前年、1936年6月に日本側だけがこれまで1771人だった兵士の数を中国側と事前協議せずに5774人の増派してしまった、その場所も事件にかかる豊台の兵営で、そこで演習をしていた、この影響が大きいとしている。これでは事件が起こらない方が不思議とさえ書いている。これは知らなかったが、事件の1年前の話だから事件にどれだけの影響を与えたかはわからないが、今後勉強して確認してみたい。

(その3)に続く



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