ゆっくり行きましょう

気ままに生活してるシニアの残日録

Jonathan Haidt著「The Anxious Generation」を読む(1/2)

2024年07月31日 | 読書

Jonathan Haidt著「The Anxious Generation: How the Great Rewiring of Childhood Is Causing an Epidemic of Mental Illness」をKindleで読んだ、日本語翻訳版はまだ出てないようだ。著者はアメリカの社会心理学者。

英語の勉強のためにアマゾン洋書のところを探していたら、この本のレビュー数が2000と多く、内容的にも面白そうなので、読んでみようと思った。

著者の主張しているコアな部分は非常にシンプルだが、それだけをリストアップしても今一つ、問題点に対する印象が薄いので、ここではもう少し詳しい要約を試みた、時間と興味がある人はじっくりと読んで事態の深刻さを感じてほしい

序章 

  • この本はジェネレーションZの深刻な問題を記述した本である、この世代は1995年以降に生まれた世代で、ミレニアル世代(1981から1995年生まれ)の次の世代である、そしてその特徴は「不安世代」である、時代背景としてSNSが急速に発展した時代である、スマホがZ世代を不安世代にしている
  • 1980年代後半は、子供の過ごし方が、「外で遊ぶ時代」から「スマホで遊ぶ時代」に変わり始めた時代であったが、2010年代半ばまではその移行が完成されていなかった
  • スマホ世代は、現実世界とのやり取りの経験不足、仮想空間でのやり取りへの無警戒により、不安が増大した
  • スマホ世代の問題は、メンタル的な不健康、社会的な孤立、深刻な不幸せだ。
  • 大人は現実世界のリスクから子供を過度に守りすぎた一方、バーチャル世界には無警戒すぎた
  • それを改革する手段として提案したのは、高校生まではネットアクセスを限定的な利用にとどめる、16歳までのSNS禁止、高校生までは学校でスマホ使用を禁止、監視されない状況での子供の自立心の養成である

パート1 被害の大波

  • 2010年以降、ティーンエイジャーが何らかの不安を感じている割合が著しく増えた、あらゆる人種、所得層で。そして女子のほうが著しい、不安の内容は、心配、恐怖、悲しみ、希望のなさ、など内面的な秩序崩壊だ、一方、対外的な不安として、他人に対する怒り、暴力、過大なリスクをとる行動がある
  • これらの状況はZ世代に最も顕著にみられる、ミレニアル世代の最後のほうの若者も含まれる、ほかの年代の人には見られない
  • 2010年代の最初のほうで青少年に影響を与える大きな変化があった、それは2007年にスマホが普及し始めたことだ、そして2012年か2013年にはスマホとSNSが急速に普及しだした、その時がまさに10代のメンタルヘルスが悪化した時だ、ガラケーと違い、スマホは常時、家の外にいるときでも、多数の人とやり取りできることだ、これは破壊的な進歩である。
  • アメリカの2010年から2015年に起こった青少年の不安心理の急増は「スマホベースの幼年時代」の始まりと、「遊びベースの幼年時代」の終焉の始まりであった、それを“Great Rewiring of Childhood”と呼ぼう、スマホを通じて自分と他の人の比較が容易になった
  • 論者によっては、この時期は世界が劇的に変わった時代であったとも指摘する、9.11、アフガン戦争とイラク戦争、金融危機、学校での銃撃事件、不平等、かつてない学生ローン残高などだが、これはZ世代の不安急増、特に女子の不安増大の原因としては説明できない
  • 孤独感が急増した2012年から2015年は他の西洋諸国でも同様であったが、アジアなどは顕著な変化はなかった
  • 2010年以降、アメリカの少年、少女のメンタル病は増加した、不安、憂鬱、疎外感、自傷行為が急激に、特に女子で増加した

パート2 この事態に至る歴史(Play-Based Childhoodの衰退)

第2章 子供が幼年期にすべきこと

  • 幼年期の少年少女が外で遊びたい3つの動機は、子供どうしの遊び(free play)、協調(attunement)、社会勉強だ
  • スマホの使用により子供が親や周りの人たちと一緒に行動をしなくなった、協調、儀式、顔を突き合わせての会話などをしなくなり、またはスマホで妨げられるようになった、これらの共同行動は子供の健全な成長に欠かせないため、その欠落は疎外感につながっている
  • SNSインフルエンサーが若者世代に多大な影響を与え、彼らが学ぶべき現実世界の人との交流の機会をなくした、若者世代は特定の影響力の強いインフルエンサーに感化されたが、そのインフルエンサーの主張は現実世界には適用不可能な考えであった
  • 子供は適切な時期に、適切な順番で、適切な方法で、適切な者から、言葉などの基本的なサバイバルの知識を学ぶ
  • 日本人の研究者Yasuko Minouraの研究によればこの微妙な期間は14歳か15歳までだという、ということはそれ以前にスマホを与え、スマホ世界に入った若者の思考やフィーリングはどうなるか、大人の世界の情報も無秩序に子供に入ってしまう、これがZ世代のメンタルに悪影響を与えた

第3章 さらなる発見と危ない経験の必要性

  • 子供時代にはいろんな危険がある、暴力、ドラッグ、ポルノ、犯罪など、それらを遠ざけ、自然と危険を避ける能力を身に付けるのは子供どうしの遊びだ、これにより子供にはdiscover modeができるが、この遊びをしないとdefend modeになる
  • ディスカバー・モードは危険が少ない環境下の人間がなり、ディフェンド・モードはその反対である、前者は社交的で、新しいことに積極的である一方、後者は常に防衛的であり、いつも不安があり、新しいことや人に対していつも警戒的である。
  • ディスカバー・モードは学びと成長をもたらすため、子供の生活を豊かにしたいならディスカバー・モードに誘導すべきである、ディフェンド・モードはその逆である
  • 大学に入学した新人のモードを調べるとZ世代から明確にディフェンド・モードの生徒が増加した
  • 外で遊ばない子供は危険察知能力が育たず、友人ができず、大人になった時のより大きな危機に対する備えができなくなる
  • アメリカ人の子育ては1990年から変化した、親が忙しいにも関わらず、子供と一緒にいる時間が増え、子供にとっては外で遊ぶ時間が減った、これは外で遊ぶ子供が虐待の犠牲になる事件が多く発生して親が防御的になったからだ、イギリスも同様
  • このころ、安全の概念が拡大していった、物理的な安全だけでなく、感情的・精神的安全が叫ばれるようになった、すなわち精神的にも傷つかないこと、という考えを含むようになった、これを「safetyism」という
  • 遊び場でも、子供どうしの遊びは、除外される子供や、争いが起こると困るので、親の監視下でしか遊んではいけない、というルールを作るようになった
  • Attachment systemという言葉がある、生まれたばかりの時は親の庇護が必要だが、やがて子供は自分で動き出す、そして危険に遭遇すれば親のところに帰ってくるか叫んで親を呼ぶ、そしてだんだん賢くなり、安全に生きていくノウハウを身に着けていく、これをアタッチメント・システムというが、これがZ世代に欠落している

第4章 思春期と大人への移行の阻止

  • 青年期は大事な期間、脳が柔軟になる可能性がある時期だから、この時期にいろんなことを経験させないとダメだ
  • それを阻害するのが安全志向Safetyismとスマホだ
  • 子供は何事も恐れない逞しさがある、その時期にいろんなことを経験させることが大事
  • 米英、カナダは1980年代から、大人や学校が、子供を物理的、精神的リスクから遮断することを始めた、それが子供のメンタルヘルスにマイナスの影響を大きく与えたのがZ世代であった
  • そこにさらにスマホが出てきた
  • 子供から大人への通過儀礼がなくなりつつある、年齢に応じて車を運転する、たばこや酒を買う、選挙権を持つなどの儀式を通じて大人の仲間入りし、責任と自覚が芽生えるが、18歳の時のこれらの経験をしたことのある比率は年々下がってきている

(続く)



最新の画像もっと見る

コメントを投稿