東京文化会館小ホールで開催された「第32回 和波たかよし アフタヌーンコンサート」を聴きに行ってきた、B席4,000円、14時開演、16時15分終演、座席は半分以上は埋まっていた
「アフタヌーンコンサート」は、コンサート演奏の合間にトークを交え、リラックスした雰囲気でクラシックの名曲に耳を傾けようとする公演で40年前から続けているもの
出演
ヴァイオリン:和波たかよし
ピアノ:土屋美寧子
曲目
モーツァルト:ピアノとヴァイオリンのためのソナタ 変ロ長調 KV454
ブラームス:ヴァイオリンとピアノのためのソナタ第2番イ長調op.100
グリーグ:ソルヴェイグの歌
グリーグ:ピアノとヴァイオリンのためのソナタ第2番ト長調op.13
(アンコール)
ブーランク:間奏曲(インテルメット)第2番(だと思う、曲名をよく聞き取れなかった)
ポルディーニ:踊る人形
鑑賞した感想などを述べたい
先ずは、出演者について
- 和波(わなみ)たかよし氏は、1945年生まれ、4歳よりヴァイオリンを始め、1962年第31回日本音楽コンクール第1位、パリのロン=ティボーなどの国際コンクールでも入賞。さらに「点字毎日文化賞」「文化庁芸術祭優秀賞」などを受賞し、2005年には紫綬褒章、2015年には旭日小綬章
- 土屋美寧子氏は、和波たかよしのパートナー、40年余り一緒に演奏してきた、5才よりピアノを始め、東京芸術大学、およびドイツ・フライブルク音楽大学卒業。1976年から国内各地で定期的にソロリサイタルを続けている。国内、国外で数多くの演奏、放送、CD録音を行っている
- プログラムノートなどで調べてみると、和波氏は生まれつきの全盲という障害をお持ちで、それでもなおプロの演奏家になり80才近い現在までご活躍なのはすごいと思った、パートナーの土屋美寧子氏の協力も大きいだろうが大したものだ
- 身体的ハンデを負って演奏をしている人としては片手のピアニスト舘野泉氏は知っていたが、他にも調べてみると少なくないのは驚いた、和波氏を含め社会はもっともっと注目して称賛しなければいけないと思った
- 今日の観客には目に障害のある方が目立った、和波氏はその世界では生涯を乗り越えて活躍する芸術家として希望を与える存在なのでしょう、今日もかくしゃくとして、背筋をピンと伸ばして演奏されていた
- 今日のコンサートは従来から、演奏するだけではなく、トークを交えることでクラシック音楽に気軽に接することを重視したやり方だそうで、これは時代の先を行っているともいえると思う、トークでは二人とも若々しくお元気なのがよくわかった
- この日のトークでは、今年も多くの著名人が亡くなったが一番ショックだったのは小沢征爾氏だとして、小沢さんから呼ばれてサイトウキネンオーケストラに参加した思い出などを語ってくれたのは良かった
次に曲目について
- モーツァルトのピアノとヴァイオリンのためのソナタは、彼の創作意欲が最も高まった時期の作品で、明るく優雅なたたずまいの中に、二つの楽器の生き生きとした対話が新鮮な生命力を感じさせる曲、今日聞いた曲の中では一番親しみが湧いた曲だった
- ブラームス(1833-1897)のヴァイオリンとピアノのためのソナタは、1886年の夏にスイスのトウーン湖畔の別荘で作曲された、全曲を通じて抒情的な温かさに満ちている曲
- グリーク(1843-1907)のソルヴェイグの歌は、同郷のイプセンから依頼され、彼の戯曲「ペールギュント」上演のために付随音楽を書いた中の1曲、放蕩者のペールを愛し続けたソルヴェイグが切々と歌う美しいメロディー
- グリーグのピアノとヴァイオリンのためのソナタは、彼が24才の1867年に作曲された、飾り気のない若々しさと素朴な民族音楽の響きが、新鮮な空気のように心にしみる作品
- 当初演目にはブーランクのヴァイオリンとピアノのためのソナタ「ガルシア・ロルカの思い出に」が含まれていたが、当日来てみるとブラームスの「ピアノとヴァイオリンのためのソナタ2番」に入れ替わっていた、公演冒頭で和波氏から、最近、ピアノの土屋氏の肩の調子が悪く、この曲を弾くには腕を左右にクロスするなど難しい部分があり、正確に所定の鍵盤にタッチできる自信が持てないので公演5日前に急遽、弾きなれているブラームスの曲に変更したとのことであった
- ブラームスはグリークより10才年長であったが、今日演奏された彼の曲はグリークの曲より20年近く後の作品であるのが面白い、ブラームスの曲は彼が50代の円熟期の作品である一方、グリーグの曲は若さが目立つ24才の時の作品だと説明してくれた
- 本日の曲目は初めて聴く曲ばかりであったが、お二人の演奏をじっくりと聴けて良かった
すごい芸術家の演奏を聴けて感動しました、お二人の息はぴったりと合って、素晴らしい演奏でした、いつまでもお元気でご活躍ください